テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
めめだて
目黒side
「ごめんね?来てもらっちゃって
寝る間際だっただろうに…」
「全然!俺まじで寝れなくて逆に困ってたって
いうか
暖かくなったとはいえ夜中寒いし、今寒くな
い?」
「俺は大丈夫
ありがとう」
今から10分前
急いで準備をして、舘さんの元へ車を走らせた
窓から見えたその姿だけで口元が綻ぶ
春になり装いは薄手の黒いカーディガン
きっと彼のお気に入りのブランドのものだろう
きちんと手入れされている黒髪が夜風でふわりと揺れている
スマホも見ず、ぼーっと遠くを眺めている
綺麗だな…
舘さんは何を今考えているんだろう
——俺みたいに
…余計なことだ、何を俺は
「舘さん!おつかれさま!」
車内で会話をする
ここは2人だけ
俺と
俺の大好きな人
「目黒もう寝たかなと思って半ば諦めてたんだ
けれどね」
「いやーなんか、寝付けなくてさ
でも舘さんから通知きて舞い上がって今はす
げー元気笑」
「あはは笑笑 そんなに〜?
嬉しいけどね?」
「へへ笑」
「….目黒さ」
「ん?なんですか?」
助手席の舘さんが窓から見える景色を眺めながら言う
「何かあったら教えて?
…きっと言いづらいこともあると思うけれ
ど、それでも少しは力になれるかなって
…目黒は我慢しちゃうから、だめ」
俺は正面を向いているからチラリと視線だけ向けても舘さんの表情ははっきりとはわからない
なんとなく、こちらを心配しているような様子でいるのは雰囲気でわかる
「んー…うん…」
短い返事しかできなかった
嬉しいな…舘さんがそうやって声掛けてくれるの
でも
素直になれない
弱い部分は見せたくない
特に、舘さんには
なのに
甘えてみたくなってしまう
余裕があって包容力のあるあなたに
「舘さんには嘘つけないな笑」
「あ、やっぱり何かある?」
「うーん、まあ、うん」
「いいよ無理に言わなくたって」
「…..優しくされると俺泣いちゃうかも」
「泣いてもいいよ」
「…..っ、いや…うん…….
さっきも言ったけれど寝付けなくて
ここ2週間くらいずっと」
「ん、そっか」
「仕事はありがたいことにたくさんいただいて
いてそれは本当に幸せなんだよ
でもなんか、ちょっと俺の技術不足っていう
か
もっとできるはずなのにできない自分に腹が
立って…疲れる」
「うん」
「胸の辺りのさ、気持ち悪さがずっとあるんだ
よ
で…どんどん俺だけ取り残されてくみたい
な気持ちになる」
「寂しい感じ?」
「うん…寂しくて、ひとりぼっちな感じ」
「そっか…」
車内が静かになる
微かに聞こえるほどの音量にした音楽と対向車とすれ違う音が場を繋ぎ止めるように思えた
しばらくして舘さんが口を開く
「俺がその寂しさを、取り除くことができたら
いいのに」
もう
なんで
あなたはそうやって俺の気持ちを惑わすのだろう
また舘さんがぽつりと言う
「目黒、後で部屋でちゃんと話そうね」
信号が赤になる
助手席の方向へ顔を向ける
外の光が
舘さんの目元の潤んでいる様子をさらにキラキラとさせる
赤信号
止まれ
止まれ
止まれ
俺に向かっての何かの警告かのようだ
「舘さん、ありがとう」
舘さんは微笑んで頷く
俺はハンドルを握り直す
赤信号
止まれ
舘さんには
弱い部分、見せたくないよ……
93
タロ