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目を覚ますと目がぼやけている。
「?!?」
訳が分からず飛び起きる、ぼやけてハッキリと分かりはしないがどうやら自室のベッドに寝転がされていたようだ。
「め、眼鏡…。」
机らしき物から手探りで眼鏡を探す。
(ここに……置いてない…?もし自分で戻っていたらここに置いていたと思っていたけど…。)
やはり誰かが僕を自室に連れて行ったということだろうか?
ベッドから降り引き出しを一段一段開け、手探りで奥の方まで手を伸ばし探す。
(……!)
眼鏡のレンズらしき物が中指に当たる。レンズに指紋が付かぬように持ちゆっくり顔に近づけて眼鏡を掛ける。
瞬きを数回し、周りを見渡す。うん、この部屋は自室であろう。見覚えのある本とスマホは床に無造作に置かれていた。
そういえば今朝はその本をパラパラ捲っている時、急に悲鳴らしき声が聞こえて、驚きの余り本を落としたんだっけ…。
スマホをベッドに置き、本を棚に戻そうとしたその時だった。
(…ッッ?!?!)
両手両足を縛られ、壁に縛り付けられ、頸動脈を斬られ失血死している琴葉さんを見た。
その遺体と目が合った瞬間、反射的に叫んだ。
翔太くんの部屋に駆け付けると井上さんと同じように縛り付けられて血塗れになった琴葉さんの遺体が壁にあった。
「起きたら…こんな事に!!」
遺体を近くから確認すると、頸動脈を刃物のような物でぱっくり斬られているのが確認できた。
「ぼ、僕はやってないッ!本当だよッッ!」
そういう翔太くんの証言をかき消し川橋さんは、
「ちょっと、まだ決まった訳では…」
私の話を遮り、言い続ける。
「何の事ですか?僕はただ目を覚まして本を棚に片付けてたら…」
ヒステリック状態の彼女を引き剥がさなければと思い、私は間に割って入る。
「落ち着いて下さい!まだ翔太くんがやったという証拠もないじゃないですか。」
食い気味で彼女は答える。
「別に庇ってないです!ですが貴方はまず落ち着いて下さい。」
川橋さんは凄い剣幕で喚き散らし始めた。
「な、何の話ですか?」
「……?」
「その話…今関係ありますか?」
「違います、でもいい加減にして下さい!貴方度が過ぎてるんですよ…。」
私が宥めていると彼女は私を突き飛ばす。
と言い部屋を出ていった。
「…あっ。」
彼女のポッケからするりとスマホが落ちたが本人はその事に気付かず、逃げる事に意識が集中して居たらしい。
「あの、聞きたいことがあるんですが…」
「?なんですか?」
翔太くんは眉を顰め、真っ直ぐ私を見る。
「芽依さんは何の仕事をしていたんですか?」
「……。」
答えられなかった。口を噤見続けていると、部屋には沈黙が流れた。
「もしかして人に言えない事だったりします?それとも、職業の記憶も……。」
「…………ごめんね、それは答えられないわ。」
「…そうですか、…それは記憶がないって事では……無いんですよね?」
「……。」
「そうだ、スマホ、どうします?」
話が逸れていたことに気付き、ハッと我に返る。
「このゲームを終わらせる必要がある。彼女には悪いけど見ない訳にはいかないよ。」
スマホには奇跡的にロックは掛かっておらず直ぐに入る事が出来た。
(不用心なのね)
トーク画面を開きメールを見る。
天使からのメールはただ一言、
『井上健太郎を殺害せよ、これは命令である。』
返信は勿論の事されていた。
「……え?」
「やっぱりこの人が犯人だったんですね…。取り敢えず今回吊上げるのは川橋心さんでいいですか?」
…………。
「…?どうしたんですか?」
「このトーク画面…変だよ。」
「何がですか?」
背中に冷たいものが走る。鳥肌が立ち顔から血の気が引く。
「この文章以降、天使からの命令が下っていない。井上さんは川橋さんに殺されたとしても、琴葉さんを殺した証拠は何処にもない。」
「……!!」
「琴葉さんは私達どちらかの模倣犯によって殺害された…、という事。」
16話に続く