コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「……やっぱり疑っているんですか?」
「え?」
自分で容れた珈琲を啜り、机に置いた。
「僕だって珈琲位入れられますよ、なのに断ったじゃないですか。」
「あ…いや……。」
言葉に詰まり、沈黙が流れる。
「僕が毒を混入させるかもって思っていたんですか?」
そう言うと翔太くんは椅子に掛け、机に突っ伏す。
『そんな事ないよ』
そう言わなければならないと思っていたが全然言葉が出てこなかった。喉の近くまででていた言葉も、濁らせてしまう。
実際の所事実だ。
私が翔太くんでは無いかと疑っているのは事実だし、模倣犯では無いかと言う疑問も実際のところ本当か分かりもしない。ルールの中に、<独断で人を殺してはいけない。>と書いていなかった。つまりは独断で人を殺害しようが、ARIA達は関係ない。どうでもいいという事なのだろうか…。
もしそうであるならば、事態が悪化している事には変わりないのだから…。
「…僕ってやっぱり信用無いんですかね……。」
「え?」
再びの沈黙を翔太くんは破る。
「まあそうですよね…いきなりこんな所に連れてこられて、人を信用する方がおかしいですもんね。」
では私はおかしいのか。少しでも翔太くんの事を信じたいと思う私は…どうかしているのだろうか?
「まだ翔太くんと決まった訳では無いでしょう?どうしてさっきからネガティブになっているの?」
「ホントのことだから……かな?」
「本当の事?」
僕には双子の姉がいた。いつも明るい子だった。
僕が怒られた時も僕を庇い、僕が勉強出来ないからといつも勉強を教えてくれた。
とても偉い人だった。
テストは毎度の如く100点を取り、運動神経も僕と比べれば桁外れ。
オマケに料理が上手でお裁縫もお手の物。
何でも出来て出来ないことなんて無かった。
と、思っていた。
ある日の学校の午前中の事だった。
硝子の割れる鈍い音が聞こえて、姉のクラスに走った。
まだ姉のクラスには姉しか体育で戻っておらず、長休みが始まったばかりの時間だった。
姉がボランティアとして掃除をしていた。
姉が、皆で大切に育てていた金魚の鉢を割ってしまった事だった。
幸い金魚は死にはしなかった。
ただ駆け付けた時、僕は鉢を割ってしまったショックで呆然と立ち尽くす姉を見て駆け寄った。
先生とグラウンドから帰ってきた数名の生徒に運悪く見つかってしまい、僕が弁解しようとした時だった。
姉は僕に指を指し、大声でこう言った。
声が出なかった。
涙目で嘘を付く姉を見て僕はぐうの音も出なかった。
その日から姉は僕の事を退く様になった。
何か伝えようとも、文句を言おうとしても無視。
僕には姉の心理が毛頭分からなかった。
『木下廃病院にお化けが出るから皆で行かない?』
そんな話をある男子生徒が話し出した。
興味津々な言い出しっぺの友人は、周りの友人らから文句を言われる。
『幽霊なんている訳ないだろ?』
『それがまじなんだって!』
『うっそだ〜!』
『本当だって!噂によるとその幽霊は霊安室に居るらしいんだ』
『噂じゃないか!なんで霊安室なんだよ!』
『分かんないけど、グループで行って霊安室を通ったら必ず1人居なくなんだってよ。』
『マジかよ〜』
『こわぁい!』
『どうせ作り話なんだろ?』
『じゃあ本当に行ったら信じてくれんの?』
『そりゃあな』
と、2人で話していた。
その友人はその日以降学校に来ることは無かった。
友人の家に行っても、帰ってこないと言うので被害届を届けていた。
もしかしたらまだあそこに……という話をしたら、
『翔太のせいだろ。』
『そーそー!あの日行ってこいって言ったの翔太だもん。』
『でも見に行ってみない?』
姉が初めて話に入り、それなら僕もと言う人が続出する。
結果、僕と姉と姉の友人と僕の友人4人で行くと決めた。
病院内は暗く、懐中電灯無しでは心細いほどだ。荒れ爛れた廃病院の奥まで歩き友人を探した。
霊安室の近くまで来ると、姉の友人が怯えだしたので僕と友人、姉で霊安室の中を探す事に。
居ないと確認し、出ようとした時だった。
姉の靴紐が解けているのを見つけ、僕が指摘する。
姉は無言でしゃがみこんで結び目を硬く結っていた。
『おい〜早くしろよ〜』
僕は急かす友人の方を向き、返事をする。
『え?』
後ろを振り向くと姉は居なかった。姉の姿はどこにもなく、一滴の血を見つけた。
『翔子…?』
姉は一滴の血を残して消えた。まるで霧が晴れ、そこには元々姉など居なかったかのように…。
幻覚を見たという自覚は無かった。
実際その日から姉は姿を消したのだから。
『翔子?!翔子どこ行ったの?!』
『何?どうした、翔太。』
『翔子が居ないんだ…。』
『翔子…?』
友人はキョトンとした顔でこう言い放った。
『翔子って今日居た?』
17話に続く