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そして、セラピストの堀内に、もう店に行くことはないと訣別をした数日後、
前のマンションにいた時、娘同士を通して仲良くしていた福井夏子から電話が
掛かってきた。
圭子は引っ越し直前に彼女にだけは引っ越しの理由を話していた。
ただし、深い話はしておらず、学生時代の先輩である淳子から自宅サロンで
施術しているマッサージに頻繁に誘われて夫婦共々辟易しており、ストレスが
半端ないので引っ越しをすると伝えていたのである。
勿論、夫との間にあった具体的なことは伏せていた。
「お久しぶり、福井です。
加納さん、今のマンションの住み心地はどう?
私も娘も加納さんたちが越して行っちゃって寂しいわ~」
「わぁ~、電話ありがとう。
今のところね、引っ越す前は心配してたけど案ずるより産むがやすしじゃ
ないけど、ここも住めば《慣れれば》都で暮らしやすいわ」
「へぇ~、じゃあお引越しは成功ってことね。
良かったじゃない。ふふっ。
ところで今日電話したのは、小泉さんのことなのよ。
ほらっ、あなたから引っ越し理由聞いてたじゃない?
それにまつわる話なんだけど彼女ここでとんでもないこと
やらかしちゃってるのよ。
被害に遭った人のうちのひとりが私の知り合いでね、酷い目に遭ってるの」
「やはり、私たち以外にも強引にマッサージの施術を勧められていた人たちが
いたってことね」
「本当にマッサージだけならまだ良かったのだけど……。
その施術部屋で旦那さんたちを、まぁ客として引っ張るために自分の身体を
使ってたってわけ。
具体的には言わないけど加納さん、私の言ってること分かるよね?」
「うん、淳子さんの身体を使って大人の行為をしてたってことよね?」
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