テラーノベル
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朝。
シェアハウスのキッチン。
すちがフライパンを振っている。
「朝メシできたぞー」
みことがリビングから言う。
「早っ」
こさめはテーブルに座っていた。
でも少しぼーっとしている。
いるまがそれに気づく。
「こさめ」
「ん?」
「寝てないだろ」
こさめが苦笑する。
「ちょっとだけ」
いるまが椅子に座る。
「顔に出てる」
そのとき。
なつが部屋から出てくる。
「おはよ」
普通の声。
でも。
ゆうが一瞬だけ目を細める。
(……なんか)
違う。
なつは席に座る。
「腹減った」
すちが皿を置く。
「昨日あんな目にあったのに元気だな」
なつが笑う。
「余裕」
でも。
その笑いは少しだけ硬い。
ゆうは黙って見ている。
そのとき。
こさめが立ち上がる。
「お茶取ってくる」
キッチンへ行く。
上の棚に手を伸ばす。
でも。
少し背が届かない。
そのとき。
後ろから手が伸びる。
カチャ
棚のコップを取る。
こさめが振り向く。
「いるま」
距離が近い。
思ったより。
こさめが少し赤くなる。
いるまは普通の顔。
「危ない」
コップを渡す。
そのとき。
こさめの足が少し滑る。
「あ」
グラッ
体が傾く。
でも。
すぐに。
いるまが腕を掴む。
ぐいっ
そのまま。
こさめの体を引き寄せる形になる。
一瞬。
すごく近い。
二人とも止まる。
こさめの心臓がドクンと鳴る。
「……」
いるまも少し驚いている。
「大丈夫?」
こさめが慌てて離れる。
「だ、大丈夫!」
でも耳が赤い。
その様子を。
ソファかららんが見ていた。
「青春してんなぁ」
ぼそっと言う。
みことが笑う。
「ほんと」
こさめが真っ赤になる。
「ちがっ!」
でも。
その空気の中で。
一人だけ。
なつが静かに見ていた。
みんな笑ってる。
普通の朝。
助けられて。
戻ってきて。
よかった。
よかったはずなのに。
胸の奥がざわつく。
(俺は)
助けられた。
その事実。
頭から離れない。
ゆうがふと見る。
なつ。
笑っている。
でも。
拳が少し強く握られていた。
ゆうの胸が少しざわつく。
(やっぱり)
何かが。
おかしい。
そして。
この小さなヒビが。
あとで。
大きく割れることになる。
コメント
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