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翌日。
昨日はホントいろいろありすぎた。
美咲と修ちゃんのおかげで、随分気持ち的には楽になれた。
だけど、昨日はさすがに考えすぎて頭使いすぎたからか、家に帰ってから一気に眠気が来て、しばらくそのまま眠ってしまった。
少しでもこの状況で眠れたことを自分的に少しホッとした。
夜明けに近い時間に一度目が覚めて携帯を確認すると、眠りについて少し経った時間に樹から着信が入っていた。
全然気付かず熟睡してたらしく、よかったのか残念だったのか、その着信音ではまったく気が付かなかった。
このタイミングで深夜にかかってくるのも珍しいけど、まだこの時点で電話がかかってきたところで、正直まだ平気なフリして話す勇気もなかったと思う。
さすがにまだ数時間では気持ちの切り替えが出来ない。
しかも少しお酒が入った深夜。
もしその時電話に出ていたら、まだ整理が出来てなくて状況を把握出来てない樹に耐えられなくなって気持ちをぶつけてるか、それとも泣いて恋しがってたか・・・。
どちらを取っても樹もきっと困ってただろうし、自分的にも引いちゃうレベルだよな・・・。
そもそも深夜に、無駄に電話したり文章を書くモノじゃない。
必要以上にロマンチストになったりセンチメンタルになったり、かなり小っ恥ずかしいことを、しでかしてしまいがち。
うん。確実にきっと余計な事を言ってやらかしてたような、そんな気がする。
だけどあれだけグダグダしていたのに、美咲たちがお酒を控えてくれたおかげもあって、翌朝の今、二日酔いが残ってることもなく。
思ったより眠れたこともあって、それなりにスッキリとした気持ちになれている。
それは、お酒が少なかったからなのか、樹への気持ちを確信して、確かめる決意が出来たからスッキリ出来たのか、どちらなのかはわからないけど。
だけど。
まだなんとなく。
今すぐに樹に会って確認出来るかどうかは別の話で。
樹にちゃんと確認することは決めはしたけれど、実際は忙しい樹とすぐに会えも出来ないだろうし、いざそうなると自分も勇気出してちゃんと聞けるのか自分で少し不安にもなる。
とにかくどんな気持ちでいても、次の日はやって来て朝を迎える。
仕事だって変わらず頑張らなきゃいけないんだし、まだもう少し自分の気持ちも少し穏やかになれるまで、樹のことは考えず今は目の前のやるべきことをやっていこう。
実際樹もまだまだ忙しいだろうし、しばらく会社でも家でも会わないはず。
この間になんとかまた気持ちを入れ替えてしっかりしよう。
仕事もちゃんと今まで通りに。
そして樹に会った時、しっかりした自分でちゃんと話せるように。
なんか家にいてもまた考えてしまいそうだったので、今日は少し早めに会社に来た。
朝早く一人で仕事する方が集中してはかどるし、まだ仕事してる方が気が紛れて余計なことを考えなくて済む。
そして会社に着いて自分の部署に行くためにエレベーターを待っていたら。
「おはよう」
後ろから声をかけられて、そのまま隣に来た人物に目をやると。
「樹・・・」
あえて今は考えたくない人がそこに立っていた。
樹はエレベーターの前に同じように立って、前を真っ直ぐ見つめている。
「おはよう・・・」
そして自分もなんか気まずくて、静かに挨拶を返し俯きがちで前をそのまま見る。
また久々に偶然会えたのに、なぜか今はこの時間がどうしていいかわからなくて声もかけられない。
きっといつもなら樹から声をかけてくるはずなのに。
たった一言挨拶を交わしただけで、お互い沈黙が続く。
樹も何か感じているのだろうか。
婚約したという事実を、少しばかりでも後ろめたく思ったりしてるのだろうか。
一番最上階から降りてくるエレベーターがやけに長く感じる。
すると、言葉を交わせないうちに、後ろから他の社員の人が来たみたいで、余計に話せなくなってしまった。
なんかちょっとホッとしたような、でもちょっと寂しいような。
エレベーターが着いて、樹が奥に乗り込む。
すぐに乗り込むのは少し気が引けたけど、場所的に動かないのも不自然なので足を進める。
だけど、少し間を空けて樹と逆側の隅寄りに乗り込んだ。
そういえば前にエレベーターで二人になった時あったな・・・。
あの時とは今はまた違うドキドキだわ。
会いたい時に会えないくせに、よりにもよってこういうタイミングで会えたりするもんなんだよね、きっと。
私が降りるのは途中の階で、樹は社長室がある最上階。
今は同じフロアに降り立つこともほとんどないんだろな。
自分のフロアにエレベーターが着いて他の人の後に続いて降りようとドアの前に移動する。
最上階の樹だけは動かず奥に立ったままで、樹の前方にただ立つだけでなぜか一人緊張感を感じてしまう。
背中越しに樹がいると思うだけで、意識しずぎて落ち着かない。
そして皆と一緒に降りようとしたら・・・。