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あの子に勝ちたかった。
昔から。
でも何をしてもあの子の魅力には勝てないとわかった。
勉強で1番になっても。
運動で強くなっても。
皆私の上辺しか見ていなかった。
私と友達になったら。
恋人になったら皆に自慢出来るから?
馬鹿みたい。
やっぱりあの子は眩しいな。
学校の廊下を歩いている。
皆がチラチラと見てくる視線がわかる。
教室のドアの隙間からそっと『あの子』を見てみた。
「…やっぱり」
思ったとおり、『あの子』は4人くらいの女の子グループで話している。
「いいなぁ」
羨ましい。
あんな風に友達と話してみたい。
愚痴や恋バナで盛り上がってみたい。
やっぱり『あの子』の笑顔は眩しかった。
そのまま廊下を進むと少しだけ見覚えのある人と目があった。
「…あ。」
確か昨日『杏』と一緒に居た子。
名前は…優くんだっけ。
「…あ。」
廊下を歩いていると見覚えのある顔と目が合う。
白金先輩だった。
昨日は散々だったから余り関わりたくないし、そこまで仲良くも無いので無視しよう…と思っていた矢先向こうから駆け寄ってきた。
「あれ、優くん…だよね?」
「…白金先輩」
「ふふ、先輩だからってそんなに怯えなくてもいいのよ。昨日杏と一緒に居たよね?お友達?」
「違います」
あいつとは最近知り合ったばかりだ。
ましてや友達なんて。
そもそも俺は仲の良い奴を作るつもりはない。
「なんだ、そうなの?じゃあ彼氏さんとか?」
「はぁ?」
もっとあり得ないものが来たな。
白金先輩はにこにこ笑っている。
…本気で言っているのだろう。
「ありえません。というか最近知り合ったばかりです」
「あら、そうなの」
「白金先輩は赤花と親友なんですよね?」
「ええ、杏とは小学生の頃からの親友よ」
「仲は…良いんですよね?」
「…?まあ、そうね」
…赤花は白金先輩に勝ちたいと言っていたが、白金先輩は赤花の事をどう思っているんだろう。
というか白金先輩に勝つってやっぱり無理があるよな…
…もう本人に直接聞くか?
「白金先輩は赤花に思うところって無いんですか?」
「…え?…なぁに?いきなりどうしたの?」
「あ、いや、何となく…?」
流石に聞き方が悪かっただろうか。
いや唐突過ぎたか。
白金先輩は困ったように苦笑いを浮かべている。
「…私と杏は親友よ?あるわけ無いじゃない。」
「そう、ですよね」
まずい。
これ以上はちょっと、いや大分気まずいぞ。
「じゃ…その、俺は失礼します…」
「ええ。またね?」
できる限り早足でこの場を去る。
振り返ると白金先輩はにこやかに手を振ってくれていた。