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そあふぃー
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「お母様のご様子を見ていると、物忘れや日常のサポートが必要な場面が増えていますよね。自治体に申請を出せば『要介護度』がついて、デイサービスで日中お母様を預かってもらったり、ショートステイを利用して柊吾さん自身のまとまった休息時間を確保することもできるんです」
「え……? 休息……?」
「はい。今のままだと、柊吾さんが一人で全部を背負い込むことになってしまいますから。介護保険制度を使えば、もっと楽になれるんですよ」
「……っ」
瑞樹の柔らかくも明確な説明を聞くうちに、柊吾の頭から「無視する」という決意も、「夢の恥ずかしさ」も吹き飛んでいた。
この四年間。
日増しに物忘れが激しくなる母を、いつ暴れ出すか分からない恐怖と隣り合わせで、たった一人で看てきた。自分が目を離したら母がどこかへ行ってしまうかもしれない。自分が耐えるしかない。ずっとそう思って背負い込んできた重荷。
それが――『もっと楽にできた可能性があった』。
自分が知らなかっただけで、助けてくれる仕組みが、最初から存在していたのだ。
「……なんで、今まで自分で調べなかったんだろう……」
ポツリとこぼした瞬間、4年前のあの白い診察室の光景が脳裏に蘇る。
『正直申し上げにくいのですが、お母様は、初期のアルツハイマー型認知症です』
医者のその一言を聞いた瞬間、頭が真っ白になった。
(あの時、医者が何か将来の話をしていた気がする。制度とか、介護の手続きとか……。でも、母さんが認知症になったっていう現実がショックすぎて、受け入れられなくて、耳なんて傾けられなかった……)
パニックのまま逃げるように病院を飛び出し、それっきり病院にも行けなくなっていた。
現実を直視するのが怖くて、ネットで検索することすら拒絶して、気づけば4年。
自分はただ、目の前の恐怖から逃げていただけだったのだ。
茫然自失する柊吾に、瑞樹は咎める風でもなく、不思議そうに首をかしげて尋ねた。
「今はスマホ一つで何でも調べられる時代ですからね。ネットで検索すれば、自治体の介護福祉課のページや解説サイトがいくらでも出てきますよ。……今まで、一度も調べなかったんですか?」
「っ……」
瑞樹の純粋な疑問。それが、柊吾の胸の奥に押し込めていた、一番痛くて固い部分を容赦なく抉った。
柊吾は喉を詰まらせ、言葉を失う。
瑞樹の視線を避けるように俯き、ぎゅっとスウェットの裾を握りしめた。
コメント
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読了しました。このエピソード、柊吾の胸の奥にずっと押し込めてきた「見て見ぬふり」の痛みが瑞樹さんの何気ない一言で抉られていく流れ、本当に苦しくて、でも読む手が止められませんでした……。 4年間逃げ続けてきた現実と向き合うって、想像を絶する勇気ですよね。あの「今まで一度も調べなかったんですか?」という純粋な疑問が、責めるでもなく、逆に一番深く刺さる。かんなさんの描く心理描写、細やかで引き込まれます。柊吾がどう変わっていくのか、続きもすごく気になります。