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さんちゃんく!の名前使い回し☆
ここは小中高大一貫の猫猫(びょうびょう)学園。俺は緑川米将軍。高二だ。
友達は陽谷雨栗と水月ルザク。このふたりと一緒に転校してきたのだが、この学年には
“女王様”と呼ばれる人がいるらしい……
転校したのは十一月。ちょうど学芸会の時期らしく、みんな忙しくしていた。俺のクラスは劇をやるらしく、同じクラスの親友、雨栗とルザクも役が割り当てられ、練習に勤しんでいた。
俺はなぜか主役(女)になり、女装して入れということだった。なんで俺なんだろう。女子は他にもいたのに。
役が割り振られた次の日、体育館に行くと、驚くような人物が立っていた。
“女王様”の、桃栁ぴの(ももやぎ ぴの)だった。後ろにはその彼氏、青栁ちろる(あおやぎ ちろる)もいる。
何?俺なんかした?
「あなた、緑川米将軍、さんだったよね?」
青栁が口を開く。
「え、あ、はい。そうですけど、俺なんかした?」
敬語とタメ語がぐちゃぐちゃだが、まあいいだろう。
「違う」
今度は桃栁が口を開く。
「あのね、米将軍さんの役を奪いに来たの」
桃栁がなんだか少し寂しそうな顔をしたような気がしたが、スルーした。
俺としては万々歳の案件。運がいい。そりゃあ女王様だもんな。主役が欲しいに決まってる。
「いいけど。この役、お前にくれてやるよ」
ちょっとからかってみようと思い、偉そうな口調で言う。
女王様の桃栁ではなく、青栁が怒った。
「ぴのさんにそんな口きいて!」
「なんだよ、役が欲しいっつうから、やっただけじゃん」
なんだかめんどくさい展開。やっちまった感出る。
「じゃあ、ちろるさんに口喧嘩で勝ったら、ぴのの秘密を話してあげる!」
桃栁が変なことを言いだし、俺は後悔の念に苛まれる。
「……やるしかないかぁ」
一分後。青栁が大泣きした。
「うわぁぁん、ぴのさん、あの人怖いぃっ」
青栁ちろる、喧嘩がめちゃくちゃ弱かった。俺はもともと喧嘩は力も口も強かったから勝てたんだろうと思ったが、向こうは俺が怖いらしい。
「ほら、約束の桃栁の秘密、話してよ」
やんわりと促すと、桃栁はなぜか晴れ晴れとした顔で話し始めた。
「あのね、ぴのね、この女王様の座、いらないの」
ぴのさんが彼氏の俺にしか明かさなかった秘密を同じクラスの転校生に話している。
「たまたまヤンキーから男の子を守ったら、叩いてもないのにヤンキーたちが怖がって、この学園でぴのの噂したから女王様っていうあだ名がついちゃったの」
守ったのは本当は俺なのだが、同じようなパーカーを着ていたので、間違われたのだろう。まあこのことは知らなくていいだろう。一ヶ月後、ぴのさんはとんでもなく有名人になっていた。いい意味でも悪い意味でも。
「悪いヤツっていうレッテル貼られちゃったから、もういっそ悪いヤツになってやる!ってヤケになって。その結果がこれなんだけど」
はは、と笑うぴのさんは、すっきりとした笑顔だった。
女王様もこんな事情があったのか。
「そっかぁ……。そんな事情があったのかぁ」
さっきの寂しそうな顔も、きっとそのせいだ。
「それでね、良ければなんだけど……この座を、米将軍さんにあげたいの」
「……は!?いや、そんな大役無理無理!」
「そっか」
速攻拒否すると、軽く言われた。代わりにアドバイスする。
「女王様、やめちゃえば?」
「え?」
「そんな忌々しい女王様の座なんて捨てちゃえば?」
そんな座り心地の悪い椅子は、捨ててしまえばいいのだ。無理して座っている必要はない。
「ヤンキーを黙らせた“女王様”なら、できるんじゃない?」
「そっか。……そうだね!」
自信に満ちた笑顔で殺る気を漲らせている。
「いや、さすがにぴのさんだけじゃ厳しいから……米将軍さん、着いてきてくれません?」
遠慮がちに頼んでくる青栁に、笑顔を返す。
「俺の親友も連れてこようか?」
あのふたりも、静かに見えてその辺のヤンキー100人本気出さずに伸すくらいの力はあるのだ。
「頼めるなら…お願いします!」
「喧嘩ぁ?しかもあの女王様が?」
雨栗が聞いてくる。
「僕はストレス溜まってたから、丁度いいけど」
ルザクは快く承諾してくれた。
「私もいいけど」
「んじゃ、決まり!明日の放課後、公園な!」
そして約束の放課後。さんちゃんく組(俺、雨栗、ルザクで)とちろぴの(二人の通称)が公園に集まった。
「みんな、ぴののためにありがとう」
「さっさと殺ろう。どこにいる?」
既に殺る気満々のルザクをなんとかなだめて、話を聞く。
「あっちの廃工場。あそこが彼奴らの集会所」
「……よし、行きますかぁ!」
「おーっ!」
俺のかけ声で、みんなの士気が上がった。