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準備するのにしゃんぷー忘れてるわよ
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第10話:「告白予告!?ツムが“ある日”を決めてきた」
文化祭の熱も冷めやらぬ数日後——
私の机の上には、あるメモがポンと置かれていた。
《放課後、屋上来てな。ツム》
……は?なにこれ。何このシンプル爆弾。
ツム、口で言えよ!!!!LINEでもええやろ!!!
でも、わかる。
あいつ、あえてこういうやり方してくるタイプ。
告白の匂いがめちゃくちゃするけど、言い切らない。まわりをジワジワ沼らせる金髪系男子。
放課後、美術室に寄らずに、屋上へ向かった。
階段をのぼるたび、心臓がドクンドクンうるさい。
——そして、屋上のドアを開けたら、
「よっしゃ!来た!!いっちゃん来たーーー!!」
「叫ぶなバカァァ!!バレるぅぅぅぅ!!!」
……いた。全力で手振ってる金髪。
しかも、校舎から見えんようにしゃがんでた。可愛いかよ。
「な、なによ……なんでわざわざ屋上?」
「いやー……なんかドラマっぽいやん?告白するなら屋上みたいな」
「え?告白すんの?」
「いやそれは“まだ”やけど!!!」
お前なァ!!!!!!!
「俺な、ちょっと考えたんよ」って、侑は少し真面目な顔になる。
「いちかちゃん、すっごい絵に集中してるし、男子とワイワイしてるし、
俺なんかより全然先行ってる気がして」
「……でもそれでも、俺、お前の隣におりたいって思ってまうんよ」
……反則やん、その言い方。
心、完全にドリブル突破された。
「だから、決めた」って、ツムは指でスマホのカレンダーの日付を示した。
「その日、ちゃんと告白するから」
「えっ、日にち指定タイプなん!?」
「そう。“心の準備”ってやつ。なんか、ドラマチックやん?」
「これはドラマチックなのか?!」
でも、私、笑いながらも心の中では
「その日」を、もう数えてた。
あと何日でツムに“好き”って言われるんやろ。
……そんなん、意識するなって方が無理やんか。
「……じゃあ、その日まで、私のこともっと好きにさせてみてよ」
「お!?今なんて言った!?録音する!録音装置どこ!?」
「いや録音いらんわ!!恥ずかしいわ!!!」
でも、その言葉を言った瞬間——
ツムの顔がパァァァッて明るくなって。
今まで見た中でいちばん嬉しそうな笑顔になった。
その笑顔だけで、“好きになる準備”なんかもうできてた。