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はぁ……と、女の子のため息ひとつ。
ここでの買い物は諦めよう。どのみち通用しない武器を持ってもダメならこれまでのナマクラでも手ぶらでも同じじゃないか。
そうと決めたら行こう。みんなには悪いけど、家族もいない俺なんかはお前らを見殺しにしたまま生きることなんて出来ないんだよ。
「お兄さん、ちょっと待って。この店でダリルが人に武器を作るなんて滅多にないんだよっ」
「そりゃ、腕が悪いから作らせてもらえないってヤツだろ?」
さっきの話からしてそうでしかない。何が言いたいんだか全くわからん。
「ダリルはオーダーメイド専門なんだよっ。数打ちなんて作らないし、自分の趣味以外で自発的に作らないしっ」
「だから、なにを──」
「あなたが倒したい相手を倒せる武器を作ってくれる。それがダリルの仕事ってことっ。それも格安、あなたの有り金で十分なくらいにっ」
一体どういうことなのか。普通の武器と魔獣用のでは桁がひとつふたつ違うのに、足りるとかわけがわからない。
「何にでも通用する武器は高いけどオオカミ頭だけに特化してれば十分にコストダウンできるのっ」
なるほど? っていうかなんでオオカミ頭って。
「そりゃあなた有名人だものっ。あんなに錯乱してたんだからもう街中うわさになってるよっ」
顔が真っ赤になるのがわかる。当然怒りではなく羞恥心。そんなに……いや、だからこそこの子はここまで気にかけてくれているのか?
「それは……なんとも恥ずかしいことを聞いたが。だとして本当にそんな物が作れるのか?」
「ダリル、できるよねっ?」
有無を言わせない何かが感じられるけど気のせいだろう。こんな小さな子があのガタイのいい中年に。
「はあ……とりあえず有り金がいくらでも作ってやる。金額次第で内容は変わるが、それでもそのオオカミ頭、お前に仕留めさせてやる」
ドクンッと、心臓が鳴った。知らない男に、女の子に、ここまで現実的に否定されてきた事が、今度はそれをひっくり返した言葉で、肯定された。
そんななんの根拠も示されてない言葉ですら縋ってしまうほどに弱っていることを思い知らされて……それでもかまわない。
「この金で、俺に剣を一振り。みんなの仇をとりたいっ。あいつを殺せる剣を頼むっ!」
気づけば俺は有り金全てをダリルに預けていた。