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さて、俺と湊人は晴れて恋人になったわけだが。あの翌日から湊人は、俺の前だと明らかに挙動不審だ。1日や2日なら照れているんだろうで済ませられるが、もう1週間だ。まともに会話すらしてくれない。冷静沈着なあいつが、と俺は驚いた。
周りにバレるのはまずいだろうということで、俺は普段通り湊人と接している。しかし湊人は、声をかければ大袈裟な反応をするし、少しでも触れれば逃げていく。
そして俺は今日も、湊人に避けられている。
あいつがそういうことに免疫がないのは知っていたが、ここまで避けられると俺としても傷つく。
キスまでした仲だというのに。
これは湊人に直談判するしかないと、湊人のクラスである、1年B組に突撃することにした。
「湊人!」
湊人はビクッと体を震わせると、恐る恐るこちらをみた。不安げな下がり眉と上目遣いが可愛らしいが、そんなことでデレデレしている場合ではない。俺は怒っているのだ。
「来い。大事な話がある」
湊人は申し訳なさそうに俺の後についていく。誰もいないことを確認して、湊人と数学準備室へ入った。湊人は俯いたまま、俺の目を見ようともしない。
「なんで避けるんだよ」
しばらく渋っていたが、湊人はやっと口を開いた。
「…恋人だって意識すると、普通のことも恥ずかしくて、バレないようにしようと思うとより意識しちゃって」
「そんなことなら、もう皆に言おう。俺たちは付き合ってるんだって」
湊人が驚いたように俺の顔を見る。目を合わせるのも、実に1週間ぶりだ。
「周りを気にするせいで湊人と距離ができるなら、俺はバレて、馬鹿にでも何でもされる方がいいと思ってる。俺にとっては、バレないことよりも、湊人と一緒にいる方が大切なんだよ。お前は違うのかよ」
湊人は目に涙を浮かべた。言いすぎてしまっただろうか。慌ててハンカチを取り出そうとする俺の手を、湊人の手がとめる。
「僕も敦彦と一緒がいいよ。でも、怖いよ!
僕は敦彦ほど強くないんだ」
「だってあの時お前、あんなに軽く」
「あの時は嬉しいの一心だったから、後のことなんて考えてなかったんだよ」
俺は衝撃を受けた。
湊人を冷静沈着だと俺は言ったが、その認識は間違いだったのだろうか。湊人はどんなときでも、誰よりも冷静に物事を判断するやつだった。後のことを考えていなかったなんて言葉が、湊人から出てくるとは。
「バレたらその時は、周りの言葉なんて跳ね返すくらい、自信満々に言ってやればいいんだ。そうだが、それがどうしたんだ?とな」
「それが出来ないから言って…」
「じゃあ、このままでいいのかよ」
湊人は黙ってしまった。俯いて、またこの教室に来たときに戻ったみたいに。緊迫した空気が数学準備室をつつんだ。
しばらくして、決意したように1回頷くと、真っ直ぐと俺の目を見た。
「…わかった。僕、もう覚悟できたよ。
これからは、ちゃんと真剣に敦彦と向き合う」
俺は安心して、ほっと息を吐く。もしかしたら今この場で、振られるかもしれないとも思っていたからだ。
「そうか、ありがとう!もう話すらできないかと思った。…じゃ、そろそろ教室に戻るか」
俺が扉に手をかけたその時、首もとを引っ張られ、バランスを崩す。直後、頬に柔らかいものが当たった。
「ほら、行くよ」
急に積極的になった恋人に動揺する俺を置いて、湊人は教室から出ていく。
すれ違いざまにあいつの耳が真っ赤になっていたのを思い出し、何が冷静沈着だと心の中でつっこむのだった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
あまりキャラクターの設定を固めていないので、矛盾もあるかと思います。
そこはお話を作っていく過程で固められたらと。
それと、TELLERを始めたばかりでわかっていないのですが、ルール等確認できる場所があれば教えていただきたいです。