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「お祖母ちゃんは八坂神社を『祇園さん』って呼んでるんです」
「あぁ、京都の人って神社仏閣を〝さん〟づけするよな。そういうの、いいなって思う」
「主な御利益は厄払い、縁結び、美容と言われていますね」
「縁結びは足りてるから、厄払いかな……」
「恋愛の意味だけじゃないので、私はいいお仕事運とか、いい人間関係とか願っちゃいますね。あと、勿論美容も!」
「それ以上綺麗になってどうするんだよ……」
「ミコトよミコト、世界で一番綺麗なのはだぁれ?」
「鏡じゃねっつの」
私たちは軽口を叩き合って笑う。
気持ちを込めてお参りしたあと、私は尊さんに言った。
「ちょっと寄り道していいですか? 『よーじや』の祇園本店に行って、あぶらとり紙を買いたいんです。恵や他の女子たちの分も買ってあげたくて」
「OK」
私たちはぐるっと境内を一回りして、また西楼門から出ると、とても渋いデザインの全国チェーンのドラッグストアを横目に、まっすぐ歩いて行く。
一区画歩いた角にお店はあり、私はテンションを上げながら入店した。
「尊さん、こういうお店いづらいでしょ。サッと済ませますから」
「別に平気だから、ゆっくり選べよ」
「ミトコにもあぶらとり紙買ってあげるからね」
「楽しみにしてるわ」
ノッてくれた尊さんの言葉を聞いてケラケラ笑ったあと、私は商品を見るために店の奥へ向かった。
『よーじや』は東京の北千住にあるけれど、関東エリアの他の店舗は空港ばかりだ。
オンラインショップで買い物できる物だけれど、送料はかからないほうがいいし、何せ本店で買ったというのが嬉しい。
ついついお財布の紐が緩んであれこれ買ってしまいそうになるのを堪え、私はお土産を買っていく人の顔を思い浮かべて商品を選んでいった。
「はー、豊作豊作」
ついつい調子に乗ってしまい、お土産にあぶらとり紙の五冊組を沢山買い、自分用に大箱を二つ買ってしまった。
「どうせ帰りも車だから、思う存分買い物しとけ」
「尊さんは大変だけど、車ってありがたいですよねぇ……」
「交通機関を使うと、どうしても荷物の重さや大きさに気を遣うからな」
そのあと私たちは花見小路通を上がり、祇園白川へ向かい、歴史的な街並みを見て京都らしさを味わう。
駐車場に戻ったあと、ブーンと移動して北野天満宮近くの駐車場に停め、混んでしまう前に『とようけ茶屋』で湯葉丼を食べる事にした。
本当はすぐ近くにあるうどん屋『たわらや』で、茹でるのに十五分近くかかる、ごん太の一本うどんを食べたい気持ちはあったけれど、初志貫徹だ。
お店はこぢんまりとしていて、二階の席に案内された。
私たちは生湯葉丼の他、一品料理で冷や奴とお刺身湯葉、葱揚げを注文した。
「はぁ~、ちあわせ」
私は丼をうまうまと食べ、味のある冷や奴にうなる。
「マジで美味い」
「ここに来たらですね、歩いてすぐの距離にある『澤屋』さんに行って、粟餅を食べるのがセットなんです。美味しくてぶっ飛びますから、胃を空けておいてください」
「必修科目か」
「テストに出ます」
「『朱里の歩き方 京都編』だな。食ばっかり」
「なんで核心を突くんですか」
私たちはそんな会話をしながらも、食事を平らげ、待っているお客さんのためにサッとお店を出る。
そのあと『澤屋』さんで粟餅をテイクアウトし、あとでどこか座れる所で食べる事にした。
そしてお待ちかねの北野天満宮へ行き、牛の像を数えつつなでなでし、本殿にもお参りする。
「梅の時期に来てみたいですね」
「だな。桜と紅葉の時期の京都も、混んでてエグそうだけど来てみたい」
「昨日、ちょっと話題に出ましたけど、お祖母ちゃんの家の近くの瑠璃光院。両親が秋にあそこに行って、朱里って名前が爆誕したんですよ」
「爆誕って」
私たちは境内をゆっくり歩きつつ、そんな会話をする。
「今年の秋にも京都に来る予定があるけど、その時は瑠璃光院マストだな」
「朱の里ですよ」
「急に相撲取りみたいになるな」
「どすこい」
「やめろ」
「どすこい」
私はピョンとジャンプして尊さんをどつく。
「やめろって」
尊さんはヒイヒイ笑う。この男、結構笑い上戸だ。