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私たちはそのあと車で龍安寺へ行き、駐車場でさっきの粟餅を食べた。んまい。
さすが有名なお寺だけあり、外国人観光客でいっぱいだ。
枯山水を望む場所では、胡座をかいて瞑想している人もいた。
そこが終わったあとは、また車でブーンと移動し、混み混みのメッカ嵐山へ。
なんとか駐車場に車を停めたあと、駅前を歩いて竹林を通り、常寂光寺、二尊院、ラストは苔で覆われた静謐な雰囲気が素敵な、祇王寺へ行った。
そのあとは夕食の予約があるので、急いで車に戻り、河原町に向かった。
「ふぁー……、一日で濃密に回った感じですね」
私たちは『月彩 』というお店に入り、鴨川を見下ろす川床のテーブル席につき、ソフトドリンクを飲んでした。
本当はビールや日本酒をいきたいけど、私だけ飲むのは申し訳ないのでやめておく。
お店はモダンな割烹で、今晩は鱧のコースをいただけるみたいだ。
ちなみに『川床』は、貴船、高雄エリアでのものを『かわどこ』、街中の鴨川沿いのお店を『かわゆか』と言うそうだ。
「京都は魅力的な街だから、一日で回るっていうのは無理だな」
「確かに。私もお祖母ちゃんちにいくたびに、ちょいちょいあちこち行ってるんですが、まだまだ『周り切れた』とは思ってません。飲食店も隠れ家的に沢山美味しそうなお店があるので、時間もお金も足りない……」
「世界中、あちこち行ったつもりでいるが、それでもまだまだだ。日本国内でも全然足りない。同じ場所でも、時間が経ったらまた魅力的な場所が増える」
テーブルの上には漆塗りのお盆があり、その上に小鉢に入ったもずく酢、ホタルイカの酢味噌和え、鴨の燻製、とうもろこしの天ぷら、鯛のお寿司、万願寺とうがらしの焼き物に桜えびをのせたものが載っている。
私たちはそれをちみちみと食べ、川床の雰囲気を楽しんでいた。
「明日、朝食をとったらすぐ下鴨神社に行って、それから帰るか」
「はい! みたらし団子」
「……そういう返事をするなよ……。だんだん人間に見えなくなってくる……」
「胃に手足生えてますか? ストマックアカリ」
「ぶふっ」
尊さんはホタルイカの酢味噌和えに噎せる。
口からちゅっぽんと、ホタルイカが出たら面白いのに。
「もう数日遅かったら、五山の送り火を見られたんですけどね」
「あぁ……、そうだな。今度見に来たいな。……今年はその頃にはケアンズだな」
「うわぁ~……! 楽しみ! オーストラリアって今、冬ですけど、ケアンズって暖かいんですよね?」
「ああ、年間の平均気温は二十九度。冬だと気温が低めだが、それでも二十度前後から二十五度くらいかな。朝晩は冷えるから、羽織るもん必須。水着で海は多分無理」
「マジですか。とっておきのビキニを披露しようと思ったのに」
「次の機会に楽しみにしておくよ。……確かに海の綺麗な所だが、長いロープウェイで空中散歩とか、山間を通る列車とか、動物園、ロックワラビー見学とか、コアラの抱っことか、色々目白押しだぞ?」
「コアラの抱っこ!」
私は目を輝かせ、鱧のお造りを口に入れる。
「涼さんと計画立てたんですか?」
「まぁー……、軽く打ち合わせはした。ケアンズはどこに行っても楽しめるから、きっちりと予定を立てた訳じゃないが」
「旅のしおりないんですか?」
「ははっ、懐かしいな」
修学旅行ネタを出すと、尊さんは横を向いて笑う。
「おやつ、何百円まで?」
ニヤリと笑って尋ねると、尊さんは肩を震わせる。
けれど不意に真顔になると、しみじみと言った。
「俺が小学生の時は、上限は千円だったな」
「私は五百円でした。セレブめ。母が子供の頃は三百円だったんですって。物価高ですよねぇ……」
「おま……、サラッと毒づくのやめろよ……」
「修学旅行に海外に行った人はセレブです」
「どうにもならない事を、根に持つなよ……」
ちょいちょい、尊さんをいじめると面白い。
「そのセレブがケアンズ連れて行くんだから、溜飲を下げてくれ」
「感謝してますよ。……ふふっ、ごめんなさい。いじめすぎた」
「全然? いつもの朱里だと思ってるから、謝る事はない。……むしろ、色々おふざけしてくれると、俺に慣れてくれたんだと思って嬉しいよ」
「尊さんは大人だなぁ……」
私はクスッと笑って鱧の焼き物を写真に撮り、お箸を手にする。
そのあと、私たちはケアンズや速水家との温泉旅行を話題に、鱧のフルコースを平らげていった。
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