テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
aioue
445
27
僕は今、バスに揺られている。
最寄りの駅からそこそこの広さがある湖の脇を通り、その湖から離れるように山間部に入っていく。
手にした本を閉じ、窓の外を流れていく濃い青葉を見ていると憂鬱な気持ちも少しは軽くなる気がする。
お母さんから、あんたちょっと体を動かしたら、と言われ、この夏休みに2週間、お母さんの弟の畑仕事を手伝うことになった。
叔父さんは年に数回会うか会わないか、という間柄だが、いつも明るく気さくに話し掛けてくれる。
このうちには僕の従兄弟にあたる颯太がいる。
颯太は6歳下でたまに会うとちょこちょことついてくるのでいつも遊び相手になっていた。
颯太は今年…そうだ、6年生になる。
颯太も畑仕事を手伝い始めたというから、少しは逞しくなっているかもしれない。
僕より大きくなってたら嫌だな…
僕は小柄で、同級生からは弟のように見られていたのでそんな想像もしていた。
駅からバスに乗って30分。
聞いていた停留所がアナウンスされた。
ボタンを押してバスが止まるのを待つ。
バス停から歩いて15分くらいだって言ってたっけ。
まだ7月だというのに暑い。年々暑くなるのが早くなり、暑さが過ぎるのが遅くなってる気がする…そのうち1年の1/3くらいは夏になるんじゃないかな?
バスから降りると颯太がいた。
よかった。最後に会った時からそう変わっていない。
「兄ちゃん、いらっしゃい!」
「颯太、少し大きくなったかな?」
「へへ!育ちざかりだからね!」
実際にはちょっと大きくなったくらいだと思うけど喜んでもらえた。
「こっちだよ、行こう!」
颯太と並んで歩く。
「最近は颯太も畑仕事を手伝ってるんだって?えらいね」
「へへっ!午前中だけだけどね。午後は毎日学校のみんなと遊んでる」
「友達か」
「友達っていうか…うちの学校、小中合わせて5人しかいないから、そのみんな」
「え?全部で5人?小中合わせて?」
「ん?そうだよ。春に3人卒業して、もう何年も新入生がいないから」
それは…結構田舎なんだな。
「そうなんだ。みんな仲良しなんだね」
「仲良しっていうか…5人しかいないからね。いつも一緒だよ!」
「ふぅん。みんな男子?」
「ううん、男二人、女三人」
颯太は拾った棒を振り回している。
「後で兄ちゃんも紹介するよ!」
小中学生だよな。でも颯太の友達なら村にいる間は関わることもあるだろうし、仲良くなっておいた方がいいかもな。
「うん、楽しみにしてる」
「ほら見えてきた!」大きなカーブを曲がると民家が見えてくる。
「おぉ、すごい…」
山影を完全に抜けるとかなり広い範囲に家が点在している。見えるだけで30軒くらいはあるかな?
「あれがうち!」
指差す先にあるあの家がそうか。
大きく何度もうねる道路に沿うように家が建っている。が、颯太はその道路から外れて真っ直ぐ進む。
「え、そっち?」
「ん?なにが?」
「道、無視して…」
「あぁそれは車の。歩きは自由だから」
そうなんだ。確かにバスを降りてから車を見なかった。
道なりだと時間が掛かりそうだけど、家々の敷地っぽい所だけを避けて真っ直ぐ進むのでかなり短縮出来てる。
「到着!お母さん!兄ちゃん来たよ!」
玄関から大きな声で呼び掛ける。
「はいはい、よく来たね!いらっしゃい」
「こんにちは。しばらくお世話になります」
「畑、手伝ってくれるんですって?自分ちだと思って気楽にしてね」
ありがたいお言葉。
「はい、ありがとうございます」
コメント
5件
いやー、田舎の夏の空気感がじわじわ沁みる第1話やったわ。都会の高校生がバスで山奥に連れてかれて、颯太との距離感とか「道無視して歩く」って展開に「あるある!」ってなった(笑)それにしても小中合わせて5人しかおらん学校ってなかなかガチの田舎やな…これからどんな出会いや事件が待ってるんか気になるわ!次の展開が楽しみで仕方ない🔥