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どうしよう、みんなが起きてくれない。誰か、マジで助けてください……。
ミノリたちは昼ごはんも食べずに昼寝中……。
はぁ……いい加減、起きてくれないかな……。
俺はそう願いながら、みんなの顔を見てみたが、みんなは気持ちよさそうに眠っている。
そんな中、ミサキ(巨大な亀型モンスターの外装)が急に止まった。
そのせいで、アパートにいる全員が天井に頭をぶつけるぐらい飛び上がった。
だが、そのおかげで全員、目を覚ました。まさに不幸中の幸いであった。
俺も含めた全員が何事かと思い、外に出ると、現状を確認し始めた。
「ねえ、ナオト。あれは誰なの? こっちに……というか、あんたに手を振ってるみたいだけど……」
「ん? どこだ? 何も見えないぞ」
「十二時の方向にいるじゃない」
「ミノリ、そういう時はまっすぐって言った方がいいぞ?」
「……アホ吸血鬼」
「今、なんか言った?」
「いいえ、空耳だと思います」
「……そう、ならいいわ」
こんな時でもミノリ(吸血鬼)とコユリ(本物の天使)はブレないな……。
えーっと、ここからまっすぐとなると……あれか? 確かに誰かがこっちに手を振っているような気がするな。うーん、誰か、双眼鏡持ってないかな。
その時、シオリ(白髪ロングの獣人)が「はい、双眼鏡」と言って俺に差し出してきたので、「ありがとう、シオリ」と言いながら頭を撫でると、シオリは「やったー! ほめられたー!」と言いながら部屋の中に入っていった。
シオリは気が利くな……。
さてと、それじゃあ、双眼鏡で見てみますか。えーっと、手を振っている人はどこに行ったかな……っと。おっ! いた! いた!
えーっと、黒髪ショートヘアに少しサイズが合っていない白いパーカーに、青いジーンズ。
身長は百五十センチくらいで、黒い瞳とパンダのヘアピンが特徴的な男性というより女性だな……って、ん? あのヘアピン、どっかで見たことあるような。
俺は小首を傾げながら顎付近に右手の人差し指と親指を置いた。(コ〇ンくんがよくやるやつ)
ん? まさか……。一人だけ、それに該当する者がいたため、俺はすぐにコユリ(本物の天使)を呼んだ。
「コユリ、一つ頼みがある! 聞いてくれないか?」
コユリは俺に疑問の眼差しを向けながら、こう言った。
「そんなに慌てるなんてマスターらしくありませんね。あそこで手を振っている人物に心当たりでもあるのですか?」
「ああ、もしかしたら……いや、確実にあいつだと思うから、あそこまで俺を運んでくれ!」
コユリは少し興奮気味の俺の顔を見ながら、こう言った。
「分かりました。マスターがそこまで仰られるのでしたら、私は必ず目的の場所まで安全第一で運ぶことを約束します」
俺は差し出されたコユリの手を取り、目を見ると、繋いだ手をブンブンと上下に動かしながら、こう言った。
「ありがとう、コユリ! よろしく頼むぞ!」
「い、いえ、これくらいは当然です」
なぜかコユリはそっぽを向いてしまった。俺、何かおかしなこと言ったかな? うーん、まあいいか。
マスターの手、温かいです。それにそんなに見つめられたら……よりいっそう、貴方を独り占めしたくなるじゃないですか……。
こうして、コユリにその人物がいるところまで運んでもらうことになった。
ミノリ(吸血鬼)は、「あんたたちが行っている間に少し遅めの昼ごはんを作って待ってるわよ!」と言って、残りのメンバーと一緒に部屋に戻っていった。
「よし、それじゃあ、行くか!」
「はい、マスター。私も努力しますが、しっかり掴まっていてくださいね」
「ああ、分かった。それじゃあ、よろしく頼む」
「はい。では、行きます」
コユリは俺を後ろから抱きしめると、翼を一気に広げて、大空へと飛び立った。
コユリにこうして運んでもらうのは三回目になるが、空を飛ぶというのは気持ちの良いものだ。(一回目はミサキの時。二回目は『はじまりのまち』に行った時)
人類が初めて作った乗り物は『船』だというが、きっとその時の人類は空よりも海に行きたかったのであろう。
もし、魚類、両生類、ハチュウ類、鳥類、哺乳類という順番通りに進化をしていなかったら今頃、人は空を飛んでいたかもしれない……。
だが、そうはならなかった。その結果、他の動物の身体能力に敵わない最も臆病で残酷な生き物になってしまった。
しかし、それはそれでよかったのかもしれない。
もし、自分たちの背中に翼が生えていたら、今頃何をしていたんだろうな……おっ! 見えてきたぞ!
俺はコユリの手を軽く二回叩いて降ろすよう指示を出した。
「了解しました。それでは、これより着陸します」
「……おいおい、飛行機かよ」
「なんとなく言ってみただけです」
「そうか。まあ、よろしく頼むぞ」
「……了解しました。風速、風向、天候、気温、全て良好……着陸を開始します」
「了解。着陸を許可する。着陸目標は前方に見える性別不明生命体の三歩手前。繰り返す三歩手前」
「了解。エンジェル号、着陸します」
パラシュートで降下する人よりもゆっくりと着陸したコユリは「着陸成功、またのご利用をお待ちしております」と言った。どうやら、すっかり飛行機になりきっていたらしい。
俺もつい合わせてしまったが、なかなか面白かった。できれば、またやりたい。
さて、久々の再会だな。
俺はコユリにその場で待つように伝えるとゆっくりと歩き始めた。
____そして、お互いほんの少し笑みを浮かべながら、話し始めた。
「久しぶりだな、黒沢。元気そうでよかった」
「そっちも元気そうでよかったよ。僕がいない間、寂しくて泣いてたりしてないよね? ナオト」
「バーカ。そんなわけないだろ?」
「うん、そうだね」
「……あれから何年経ったんだっけ?」
「うーんと、十年くらいかな?」
「もうそんなに経つのか? 時間の流れは早いなー」
「ほんとだよ。ナオトがすっかりおじさんになっちゃってるんだもん」
「ぐっ! そ、そういうお前はほとんど変わらないな。正直、うらやましいぞ」
「そんなことないよ。これでもかなり苦労してるんだよ? 色々と」
「……そうなのか?」
「うん、そうだよ」
そんな俺たちのやりとりが気になったのか、コユリが俺の袖を引っ張った。
俺はコユリの方を向くと、こう言った。
「ん? なんだ? コユリ。今さっき待ってろって言っただろ?」
「いえ、その……お二人とも、仲が良さそうだったので、つい」
「あー、そうだな。そうだよな。気になるよな……。えーっとだな、こいつは『黒沢 昴』。俺の高校時代の同級生だ」
「はじめまして! 僕は『黒沢式植物召喚術』の使い手であり、ナオトの高校時代のクラスメイトでもある『黒沢 昴』だよ! よろしくね! コユリちゃん!」
黒沢は右手を差し出すと、コユリに握手を求めた。少し困惑しながらも、コユリはそれに応じた。
「こ、こちらこそ、よろしくお願いします」
コユリは意外に人見知りだということが分かった。俺は咳払いをして会話を再開した。
「それにしても、どうしてお前がこんなところにいるんだ? コユリを見て驚かないってことは、お前もモンスターチルドレンと一緒に旅をしている最中か?」
俺はコユリの頭を軽く撫でながら、彼女にそう言った。
「うん、まあ、いるのはいるんだけど、とっても恥ずかしがり屋さんなのか、僕と話してくれないし、今も僕の影にずっと隠れてるんだよ」
「そ、そうなのか?」
「うん、そうなんだよ」
彼女の足元に目をやると、確かに本人のものとは違う影が動いていた。
ふむ、影に隠れるとは、なかなか考えたな。
しかし、それではひきこもりと同じだ。(うちのオオカミもだが)とりあえず、どんなモンスターチルドレンなのかを訊くとしよう。
「なあ、ぱっと見どんな感じだったんだ?」
「え? あー、えーっとね、背はコユリちゃんより少し低くて」
「……うんうん」
「目は紫で、髪は黒に漆を塗った感じで、後ろ髪は膝のあたりまであって」
「……ふむふむ」
「白いワンピースを着ていて、下着も白だった」
「……そうか、そうか……って、下着の色までは言わなくていいんだぞ?」
「え? いや、ナオトが喜ぶと思って」
「お前、俺をなんだと思ってるんだ?」
「え? 今はロリコンじゃないの?」
「違う! 断じて違う! というか、高校時代もロリコンじゃないぞ!」
「えー? 本当にー?」
「本当だ! 信じてくれよ!」
彼女は少し疑っている様子だったが、話を続けた。
「あっ! そういえば、左目に黒い眼帯をしてたよ! というか、他の人に変身できるって言ってた! 筆談でだけど!」
「……変身?」
「そうそう! で、試しにやってもらったんだけど、もう一人の僕が目の前にいるみたいだったよ!」
「……ふむふむ。つまり、そいつはメ○モンみたいな能力を使えるんだな?」
「うーん、ちょっと違うかな。なんか、黒い影が僕の形になった感じだったよ」
「……マスター、今までの情報から察するに恐らくその子は……」
「ああ、その子は多分『ドッペルゲンガー』だな」
「『ドッペルゲンガー』?」
「ああ、そうだ。世界には自分と同じ顔のやつが三人いるって聞いたことないか?」
「うーん、まあ聞いたことはあるけど……。でもなんでそれで『ドッペルゲンガー』だって分かるの?」
うーん、やはりこういう知識に疎いやつに説明するのは困難だな。もっと分かりやすく説明しなければ。
「えーっと、それはだな……」
『ドッペルゲンガー』について分かりやすく説明しようとするが、そもそもその存在自体が曖昧で分かっていないことの方が多いため、説明のしようがない。
すると、俺が困っているのに気づいたコユリが助けてくれた。
「ここからは、私が説明します」
俺たちは、ほぼ同時にコユリの方を向いた……。