雪のふる学校の帰り道。
辺りは日が沈み、暗く、静みかえっていた。
冷めていく体温に思わず、首に巻いていたマフラーへと、深く顔を沈める。
吐く息一つ一つが白く濁り、空気に溶け込んでいく。
ザクリザクリと、足が雪を踏む音が響き渡る。
『ニャー』
何処から来たのか、いつの間に来たのか、目前の道には一匹の黒い猫がちょこんと座っていた。
長い尻尾をゆらゆらと揺らしながら、青目の綺麗な瞳を一直線に、こちらに向けている。
あ、僕と同じ色__
昔からのコンプレックスを、こんなところで真正面から突きつけられたのは初めての経験で、思わず目の前の猫に同情を向けてしまう。
「何処から来たの」
肩に掛けていた焦げ茶色のカバンを胸と膝の間に挟み、その場にしゃがみ込む。
手を伸ばせば、手の平に顔をこすりつけてくる白猫。
そのまま丸い背中を優しく撫でる。
柔らかく当たる毛がくすぐったい。
「…猫は自由、か」
今日の学校も、散々だった。
メガネを取られ、物を投げられ、トイレでは水をかけられ、その度少しでも泣いては馬鹿にされる。
「こんな目を持っているから」
そう言い聞かせなければ、その度に死にたくなった。
自分も猫みたく、自由に生きれないものだろうか。
人間関係という縛りは無さそうだが、猫の世界にも差別や同情、虐げられることはあるのだろうか。
「ニャー」
沈黙の中に響く鈴の音に、思考を遮られる。
「なんだ、飼い猫だったのか…、」
背中を撫でる手を離すと同時に、背を見せ、何処かへと歩いて行ってしまう白色。
「…僕には、」
僕にも、何か、帰る居場所があれば__
ガチャリと重い扉を開けると、真っ先に見えたのはお手伝いさんのすごい形相だった。
その姿は、眉間にしわを寄せ、お手伝いさんとは言い難く、偉そうに腕を組んでいる。
口をへの字にしたそれが開くと同時に飛んでくるのは、お説教。
「わかっているのですか!?」
もう、疲れたな__
「はい、わかりました、ごめんなさい」
「よろしい、部屋でお勉強してきなさい」
雇われの身だろうと口答えをすれば、また叱られ、遂にはご飯までを抜かれてしまう。
まぁ、どちらにしろ抜かれるのは日常茶飯事になっていた。
そんなのはどうでも良かった。
どうでも、無駄な時間さへ減らせられれば、何か報いがあるんじゃないかと、そう信じて過ごしてきたのだから。
そうでもしないと、ただただ今が「無駄」に感じてしまうから。
バタン__
「……お腹、空いたな」
コメント
2件
え、お手伝いぶっ56すか( '-' )我らのクロノアさん(多分)に何やってくれとんねん?は??本当になにやってんの?叱る立場ちゃうがな
おうおうおうお手伝いさんよぉ????雇い主に何をしている????殴るぞ???👊