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上野文
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#悲しい
シジミン
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kirisu
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畝澄ヒナ
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尊さんに優しく諭された私は、考えを改める事にした。
寂しいけれど尊さんの言う事にも一理あって、確かに小鳥遊さんが近づいてきたタイミングに違和感はある。
だからもう少し慎重に彼女の言動を見て、判断しようと思った。
(……あれ)
けれどお昼に社食に行った時、小鳥遊さんは姿を現さなかった。
ここ十日近くずっと顔を合わせていたから、急にいなくなると変な感じだ。
ソワソワしながら、いつものように大盛りパスタを食べていると、中華丼を食べている恵が尋ねてきた。
「そんなに小鳥遊さんがいないの不安?」
「いや、不安っていうか……、最近毎日いたから変だなーって」
「姿を見せない事が答えなんじゃないの? 〝本当に〟友達になりたいって思うなら来るはずだよ。……でも、何か別の感情を持っていたなら、そんな自分が恥ずかしくなって朱里の顔を見られなくなったんじゃない?」
「うん……」
私はパスタをフォークでクルクル巻きつつ、曖昧に頷く。
「正直さ」
恵はスプーンを置き、軽くテーブルを叩く。
「私がいるのに、他の女求められんのやだな」
「んっ」
久し振りの告白モードになり、私はピッと背筋を伸ばす。
恵は溜め息をつき、水を飲んでから言う。
「……この歳になって、友達に嫉妬するなんて子供じみてるって分かってるよ。でも、私ほど朱里を理解している人はいないって自負がある。ずっと一緒に過ごしてきたし、旅行に行っても喧嘩しなかったし、私ほど朱里と相性のいい人はいない」
「……はい」
私はまっすぐ見つめてくる恵の眼差しにドキドキし、頷く。
「子供じゃないし、『私以外の人を見ないで』とか、『新しい友達なんて作らないで』なんて言わないよ? そこまで朱里を束縛したくない。……でも私は最初に違和感があるって言ったし、〝彼〟も同じ事を言ったんでしょ? 朱里の事を一番に思う、アカリストの言葉をもっと信じてほしい」
「んふふっ、アカリスト」
私は思わず笑顔になる。
「朱里の場合さ、〝彼〟に近づきたがる人もいるだろうし、そんな〝彼〟に選ばれた朱里に嫉妬する女もいるだろうし、周りにいる奴らに簡単に気を許しちゃいけないんだよ。……朱里は学生時代、友達とキャッキャウフフできる精神状態になかったから、やっと心の平和が訪れた今、凄くのびのび生きられて、色んな事に意欲を持っていると思う。新しい事をしたいし、もっと色んな人と関わりたいと思っているでしょ」
確かに恵の言う通りで、私はパスタをモグモグしつつ頷いた。
「でも、もう少し自分の立場を自覚したほうがいいよ。私の知ってる人たちは、みんな朱里と〝彼〟が上手くいくよう願ってる。二人とも、一筋縄じゃいかない人生を送ってきたから、本当に幸せになってほしいんだよ。……なのに、変な奴に二人の邪魔をしてほしくない。今、朱里たちは長年の悩みから解放されて、本当の幸せを掴みつつある。……でもそういう、運気的なものが上昇してる時に限って、それにあやかろうっていう人が近づいてくる。全員がそうとは言わないけど、そういう人もいるから気をつけてほしいって話」
「……うん、分かった」
理解を示すと、恵は安心したようにまたスプーンを持つ。
「ぶっちゃけ、私はあの人の事好きじゃない。さも朱里の事を理解したい、好意を持ってるっていう態度をとりながら、微妙に引っ掛かる事を言ってる。本当に誰かに好意を持って仲良くなりたいなら、敬意を持って言葉には気をつけるもんだよ。……ワンチャン、つい要らない事を言ってしまう性格で、好意は本物だとする。……でも、要らん事をポロッと言う人は、トラブルしか生まないよ? 『つい』とか『思わず』って言い訳しても、〝そう〟思ったのは事実なんだから。大人は本音を隠して、他人と上手く合わせてなんぼ。それができない人とはあまり付き合わないほうがいい」
「……そうだね」
「綾子さんも、ちょっとクセのある人だけど、私たちそれなりに上手くやってたじゃん。そやって、思うところはあっても、上手くやれるのが大人なんだよ。本音を漏らして相手を不快にさせるのは、気持ち良く付き合える相手じゃない」
「確かに」
昨晩尊さんに言われ、恵にも改めて言われて、気持ちが固まった。
「あとね、涼子から伝言」
恵はあえて周囲に彼氏と悟られないように、〝涼子〟の名前を使ったけど、私はブハッと噴き出してしまった。
コメント
1件
うおー、恵の「私がいるのに他の女求められんのやだな」はマジでグッときたわ。ずっと一緒にいて理解してるからこその嫉妬と、でも束縛はしたくないっていうバランスがリアルで、朱里のこと本気で大事に思ってるのが伝わってくる。アカリスト呼びで朱里が笑顔になるところ、ほっこりした。