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地下には、美しい和室の広間があった。
掃除は行き届き、照明は明るく、空調も効いている。
装飾品は、有名芸術家の作品ばかりだ。
博物館の学芸員だった紗姫には、その価値が解かる。
(あの掛軸は……? あの彫刻はもしかして……?)
紗姫の実家にも無い、国宝級の美術品に目を奪われた。
正座して出迎えた櫻花は、三つ指をついて紗姫を迎えた。
「ここは錦藤家の潜窟です」
「せんくつ?」
「隠れ家のことです」
「戦国の時代、幕末の時代、昭和の時代、何度も戦争がありました。
錦藤家の御家族は、この場所で苦難と戦いました」
櫻花は、紗姫の目を見つめた。
「いま姫は、大きな苦難に見舞われておられます。
これは姫の戦です。負けるわけにはまいりません。
必ず勝ちましょう」
紗姫は、ストンとその場に座り込んだ。
「私が潔白だと知っているのね。信じてくれるのね」
「当然です。姫が秘書と不倫したなど、ありえません」
紗姫の後ろで正座している伊織が、スマホの画面を見た。
「いくつか不審な点があります。すでに調査を始めました」
「調査は僕に任してね。忍者の子孫だから。ニンニン」
珊瑚が、体操選手のような連続〈バック転〉をきめた。
「こら! ここではやるな!」
伊織が怒っても珊瑚は気にしない。舌をペロッと出すだけだ。
紗姫は疑問に思っていたことを尋ねた。
「御庭番の御先祖は忍者ですか?」
これには櫻花が答えた。
櫻花の先祖は錦藤家の『城代家老』で、伊織の先祖は『番頭の侍大将』だった。
珊瑚の先祖は、本物の『御庭番』だ。
もともと『御庭番』は徳川吉宗が設置した幕府の組織だ。
吉宗の玄孫(家斉の娘)が、錦藤家に輿入れした。
将軍家の姫を、藩主が正室に迎えたというわけだ。
そのとき姫の警護に付いた『御庭番』が、そのまま錦藤家に奉公した。
その子孫が珊瑚だ。
「僕の先祖は〈暴れん坊将軍〉の家来だよ。スゴイでしょ」
自慢する珊瑚の頭を、伊織がポカリと叩いた。
「姫は吉宗公の お血筋だ」
4人は広間の中央に移動して座った。
紗姫は「藩主の席」を勧められたが断った。
輪になって座る方がいい。
「さらに情報を集めます。対策はその後で」
伊織の言葉で解散しかけたが、紗姫には気になることがあった。
「父が入院している病院を調べて下さい」
実家が、義弟と後妻に乗っ取られている。
「畏まりました。ですが、御実家のことは御安心を」
「え?」
「ヨッチャンがいるもんね」
「???」
紗姫は『城址公園』の地下にある〈錦藤家の潜窟〉に潜伏した。
3日後、御庭番から驚愕の事実が伝えられた。