テラーノベル
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チェリル「…… 羽虫…?…私…一応… 純血の…王族の妖精なのですが……」
チェリルは買ってもらったばかりの羽ペンを指先でイジイジと弄びながら、蚊の鳴くような声でぽつりと呟いた。
(おう、王族ゥウウッ!?)
俺の脳内のサラリーマンオタクは、今日一番の衝撃でひっくり返った。
モブどころか、とんでもない超大物(VIP)じゃないか。
この『魔王様と聖女様』の世界において、妖精族、それも王族の持つ権力と魔力は凄まじい。国同士の同盟や、世界のパワーバランスを左右するほどの絶対的な存在として設定されている。たとえ一国の聖女や王子であっても、妖精王族に対して無礼を働くなど本来なら国家存亡の危機レベルのタブーだ。
リリス「なっ……、王族……!?」
さすがの聖女リリスも、その言葉にはっきりと顔を引きつらせた。
目の前の無口で小さな少女が、まさか自分と同等かそれ以上の身分を持つ存在だとは夢にも思わなかったのだろう。自慢の純白のドレスが、動揺で小さく揺れる。
チェリルはリリスの驚きなどどこ吹く風で、ただお気に入りの羽ペンが手に入った満足感に浸りながら、どこまでもマイペースに佇んでいる。
形勢は一気に逆転した。
ここで魔王(中身は元社畜)としての生存戦略、そして一目惚れした彼女を守るための次の一手が必要だ。
チェリル「……ほら、…あそこに……馬車が……今日のパレード……お父様達もお越しになっているようで………私は行きませんけど………」
彼女が小さな指でぽつりと指し示した先には、人間の王族のものよりも遥かに巨大で、神秘的な光を放つ豪華な馬車が静かに佇んでいた。
(……チリガナとリルナ、か!)
ゲームの隠し設定が、俺の脳内を駆け巡る。
あの馬車に乗っているのは、世界最高峰の魔力を誇る精霊王チリガナと、精霊女王リルナに違いない。
彼らは人間の国との親交のためにわざわざ足を運んだのだろうが、チェリル自身はパレードの主役たちに全く興味がないようで、どこまでもマイペースだった。
リリス「う、嘘……っ、本当に妖精族の……」
リリスの顔からみるみる血の気が引いていく。
男癖が悪く、気に入った男を独占しようとしただけの聖女にとって、国家間の大問題に発展しかねない妖精王族への暴言は、あまりにも致命的な大失態だった。
(よし、ここが引き際だな)
俺はチェリルをこれ以上の面倒ごとに巻き込まないため、そしてリリスの異常な執着から逃れるために、すぐに次の行動を起こすことにした。
コメント
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BOOK Onlyさん、第11話読みました。 「羽虫」呼ばわりした相手がまさか妖精の王族だったとは…リリスの動揺っぷりが凄まじくて、ここぞとばかりに形勢逆転した流れが気持ち良かったです。主人公の「脳内サラリーマンオタク」がひっくり返る描写もツボでした。チェリルのマイペースさにほっこりしつつ、次の一手がどうなるのか楽しみです。
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