ーskng sideー
愛。
それは私にとって遥か無縁な存在だった。
諜報員の一家に生まれ、諜報員として育てられ。
愛を知らずに生きてきた。
学校に通っていた頃、他のみんなが親との話をしている時に私は少し羨ましく感じていた。
私も普通の家庭で愛されて暮らせたら。
この生活がもし違っていれば。
毎日寝る前にベッドでそう思った。
誰かに、私を愛して欲しい。
でも、叶わない。
やがて私は大人になった。
組織を抜け事務所を開き、様々な仕事を請け負っている。
簡単に言えば何でも屋に似たような物だ。
今日は一日雨で外に出れなかった。
skng「今日は酷い雨ですね…」
srf「最近雨多いよね〜」
この男はセラフ・ダズルガーデン。
普段はセラ夫と呼んでいる。
事務所を開いて1ヶ月ほど経った頃、この男から依頼が入り、そこで出会った。
今では事務所に入り浸り、もはや家と化している。
srf「凪ちゃ〜ん」
skng「なんですか?」
srf「呼んだだけ〜」
skng「はぁ?」
「用件があるときだけ呼んでくださいよ」
srf「用件が無いと呼んだらダメなの?」
skng「当たり前でしょう。普通は用件があるとだけ呼ぶ物ですよ」
srf「ふーん」
「じゃあ俺たちってそんな用件が無いと話さないくらいの仲なんだ。え〜ショック〜。」
「もっと仲良いと思ってたんだけどな〜」
skng「はぁ…。じゃあもう用件無くても呼んでいいですよ。」
srf「ホントに!?やった〜。」
……本当に元暗殺者なのか疑うレベルの会話内容だ。
セラ夫は、暗殺が生業の家系に生まれ、幼い頃から暗殺者として技術を磨いてきたそうだ。
今は暗殺者を辞めており、フリーのエージェントとして活動しているらしい。
私と境遇が少し似ており、親近感を感じている。
そして、私がセラ夫とつるむ理由の一つでもある。
srf「凪ちゃん!これ見て!」
skng「なんですか?そんなに興奮して」
srf「某遊園地が40周年で、記念イベントやってるんだって!色々アトラクションとかあるっぽいよ!」
skng「あの遊園地、そんな長いことやってるんですね。結構驚きました。」
srf「楽しそうだし、一緒に行こうよ!」
skng「セラ夫から誘ってくるなんて珍しいですね。何かありました?」
いつもなら遊園地なんて誘わないはず。
突然どうしたのだろうか。
srf「ほら、最近忙しかったし、たまには息抜きも必要かな〜って。」
skng「まぁ…一理ありますね。」
srf「でしょ!だから行こ!」
skng「はいはい、わかりましたから。ちょうど明日が空いていますし、明日でもいいですか?」
srf「ホントに!?
予定確認するからちょっと待ってね〜。
……うん!大丈夫!じゃあ明日ね!」
そうしてセラ夫は自分の家に帰る準備を始めた。
skng「気を付けて帰ってくださいね。」
srf「うん!明日楽しみにしてる!」
そうして走り去っていくセラ夫の背中を見て、なんだが物悲しく感じている。
何故だろう。
胸がキュッとする。
行かないでほしい。心の隅でそう思っている。
今まで両親以外でそんなこと思ったことがなかった。
心臓の鼓動が少し早くなる。
一体どうして。
まさか−。
ーsrf sideー
愛。
昔から暗殺者として育てられてきた俺にとって無縁の存在。
愛して欲しい。そんなことも思わず生きてきた。
今思えば、少しおかしくも感じる。
友達の親の話を羨ましく思うことも無かった。
愛を羨ましく思わなかった。
それは、暗殺者にとって愛が要らないものだったから。
親から愛を教えられずに生きたから。
毎日思う。
普通の家庭なら、俺も愛を知れたのか。
そう思いながら生きた。
でも、叶わない。
skng「ソファで寝るな。寝るならベッドで寝とけ。
頭をベシッとファイルで叩かれる。
いつのまにか眠ってしまっていたようだ。
この男は四季凪アキラ。
普段は凪ちゃんと呼んでいる。
暗殺者を辞め、エージェントとして活動して約一年が経った頃に出会った。
今では凪ちゃんの事務所に入り浸り、ほぼ俺の家にしている。
skng「今日は酷い雨ですね…。」
srf「最近雨多いよね〜」
俺は、凪ちゃんに密かに好意を抱いている。
それに気付いたのは、最近のこと。
アキラの事務所にて、誕生日のお祝いをされた時のことだ。
仕事を終えて帰っていた俺は、凪ちゃんから連絡が来ていることに気付いた。
skng「今暇ですか?」
srf「仕事終えて帰ってるから、暇だよ〜」
skng「そしたら、私の家に来てくれませんか?」
srf「いいけど、なんで?」
skng「秘密です」
何をするのか分からなかったが、凪ちゃんの事務所行くことにした。
一時間後、事務所につき、事務所のリビングに向かう。
家を事務所にしているため、構造は家と同じだ。
そして、リビングのドアを開ける
その瞬間ーーーー
大きな音と共に、紙吹雪が俺に発射された。
俺が唖然としていると、凪ちゃんが口を開く。
skng「誕生日おめでとうございます。」
忘れていた俺の誕生日。
前に凪ちゃんに伝えたことすらも忘れていた。
srf「…覚えてたの?」
skng「当たり前じゃないですか。友達ですからね。私達。」
srf「…そっか。」
凄く、嬉しかった。
人生で誕生日を祝われたことなんて一度も無かった。
唯一、凪ちゃんだけが覚えて、そして祝ってくれたのだ。
しかも、部屋は豪華に飾り付けられ、料理が机に並べられている。
skng「ほら、早く座って。ご飯食べますよ。」
srf「…うん!」
その時から、俺は凪ちゃんに好意を寄せるようになった。
前から俺のことを心配したり、励ましたりしてくれる凪ちゃんに、少し心に違和感を感じていた。だが、まだ愛と呼べるまでは達していない。
一緒にどこかに行って遊びたい。俺たちが行ったことのない場所に行って、二人で遊びたい。
そんな時に、とある記事を見つける。
「某遊園地が40周年!スペシャルキャンペーン実施中!」
これだ、と思った。
凪ちゃんも俺と同じ生い立ちだ。遊園地に行かせてもらったことがないかも知れない。
それに遊園地は子供の頃から一度行ってみたい場所だった。
srf「凪ちゃん!これ見て!」
一緒に行ってくれるかドキドキしながら、凪ちゃんを誘う。
skng「はいはい、わかりましたから。ちょうど明日が空いていますし、明日でもいいですか?」
心の中で飛び跳ねた。
凪ちゃんと遊ぶ。
凪ちゃんと二人。
凪ちゃんと…。
これって、デートってことでもいいんだよな。
そう思いながら、明日に備えて家に帰る。
凪ちゃんと何をしようか。
一緒にフード巡り?
一緒にアトラクション巡り?
明日なのに待ちきれない。
楽しみだ。
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