“🌟「あ、近いうちにまたお店に行くね。」”
確かに彼はそう言った。
だけど、二週間経った今でも、彼は来ていなかった。
今日もおれはお店に出勤しているが、来る様子は全くしない。
あれから情報を集めるため、ここら辺の武器屋に彼が来ていないか聞いたり、今まで彼が倒してきた組織に話を聞きに行ったりした。
武器屋ではいろんなお店を回ったが、彼を見たというお店はどこにもなかった。
組織に聞くのはとても面倒で、おれが半殺しまでしないと奴らは情報を吐かなかった。
🌸「ねぇ。教えてよ。」
モブ「誰がお前なんかに教えるかよ。」
🌸「まだそんなことを言ってるの。」
「…死ぬか教える、どっちが良いかな。」
モブ「は、?」
🌸「さっさと情報吐いてくんない?」
「死体処理とかめんどいから。」
モブ「…チッ、。」
結果分かった情報は少しだけ。
彼はおれが使うような刀は使わないらしい。
その代わりに銃や自分の拳で戦ってきたとか。
銃の腕前は本物で、どんなに小さなものでも正確に当てられるらしい。
目が良いのかな。
おれはあの青く澄んだ瞳が気になった。
確か瞳の色はメラニン色素の量が関係していて、青や水色は太陽の光に弱かったはず。
もしかしたらだけど、彼の弱点はそこかもしれない。
目は怖いくらい良いけど、日光には弱い。
もし本当にそうなら、太陽が出ている時間に外で戦えば、勝てるかもしれない。
彼に倒された組織の人たちも、戦った場所は大体屋内って言っていたし、可能性は高い。
🌸「…よし、」
勝てる可能性があるのならとことんやる、それがおれだ。
あとは彼に出会い、外で戦いを持ちかけないといけないんだけれど…。
彼の居場所は未だに不明。
目撃情報すら無いとなると、どれだけ彼は隠れ上手なのだろう。
ここまでくると流石に怖い。
本当に同じ人間なのか?
そもそも、何十人といる組織をたった一人で、しかもそれを複数潰すとか何者?
そんな疑問が次々に湧いてくる。
いくら弱点があったとしても倒せるのか?
おれだって自分で言うのはあれだけど、それなりには強い方だ。
だけど、数十人の組織を一人で潰すことはあってもそれが何十人となると話は全くの別物。
🌸「…。」
それでもボスに言った以上、おれはやるという選択肢しかない。
心の中でまた、大丈夫と言い聞かせた。
そんな時、お店のドアが開いた。
🌟「…こんにちは。また来たよ。」
思いがけない人物の来店。
一瞬動揺したが、すぐにいつもの正常心を持った。
🌸「…いらっしゃいませ。あちらの席へどうぞ。」
🌟「ありがと。」
彼は少し不気味な笑顔を浮かべた。
何を考えているのか全く分からない。
🌟「今日はどれを頼もうかな。おすすめとかある?」
🌸「…そうですね、このお酒とかは人気ですよ。」
🌟「そっかー。じゃあそれで。」
彼は割と適当にお酒を決めた。
それはきっと、ここに来た理由が、お酒を飲む為じゃないからだろう。
おれがお酒を作って出すと、彼は一口飲んで口を開いた。
🌟「…見てないで、君も一緒に飲もうよ。」
🌸「それは結構です。」
おれはお酒に凄く弱い。
それは一口お酒を飲んだだけで顔が真っ赤になってしまうほどだ。
そんなことをマフィアに知られると、厄介なことが起こりゆる。
だからおれはあくまでも遠慮する形で断った。
🌟「へぇ。飲めない理由があるんだ。」
🌸「…飲めますよ、気が乗らないだけで。」
🌟「本当にそれだけ?僕にはそうは見えないな。見たところ、君はお酒に弱そうだし、笑」
彼はおれに向けて、挑発的な笑みを浮かべた。
彼の口はとても上手い。
相手を挑発することによって、相手に物事をさせることができる。
一度目をつけられた時点で、おれはもう避けようが無いのかもしれない。
🌸「…そうですか。そう思うのなら勝手にしてください。」
🌟「あれ、否定しないんだ。」
🌸「否定したところで貴方はまた何か言うでしょう。それならしない方がマシです。」
🌟「…その判断力、凄いね。やっぱ俺と組んでほしいわ。」
そう冗談っぽく言い、彼はまたお酒を口に含んだ。
🌸「…無理です。」
組むということは、それなりの信頼関係が無いとできない。
それは強い相手となると尚更。
もし裏切られたら厄介だし、最悪死ぬ。
それなら組まない方が身のためだ。
それに、おれがチームに所属している時点で敵とは組めない。
🌟「まぁ、それは良いとして。話は戻すけど、一緒に飲もうよ。」
🌸「まだそれを言うんですか。」
🌟「うん、だって今日ここに来た理由は君とお酒を飲みたいからだし。それに、気分が乗らないってだけなら、どうしても飲めないってわけじゃないんでしょ?」
🌸「…まぁ。」
🌟「だったらこれ、飲んでよ。」
彼がおれに差し出したものは、先ほどまで彼が飲んでいたお酒。
そこまで度数が高いというわけではないけど、おれにとっては充分酔う。
こんなのを飲んでしまったら、確実に顔が赤く染まるだろう。
でもこれで断ると、それはそれでお酒が弱いことがバレてしまう。
どっちにしてもそれはそうなんだけども。
🌟「飲まないの?笑
やっぱり君ってお酒に弱いんだ?笑」
楽しそうに笑う彼。
アルコールも加わり、多少普段よりもテンションが上がっているのだろう。
🌟「こんなのも飲めないとか、よっわー笑」
🌸「…飲めば良いんでしょう?」
おれは、らしくない選択をした。
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