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#地雷系
尾津嘉寿夫 ーおづかずおー
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クラリス
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リリア💙🤍
207
#いじめ
名瀬口にぼし
279
. .。 .:・.。. .
「Hi! 竜馬!」
「Hi! ハイオリビア!」
竜馬と同じ授業を取っている赤毛のオリビアが、頬を染めてキャンバスを歩いている竜馬を呼び止めた
「経済学の(inducción)教授の論文もう仕上げた?」
首席で丸い眼鏡をかけた、赤毛のカーリーヘアのオリビアが息を弾ませて言った
「苦戦してるよ」
竜馬は肩をすくめて言った
「あのね!去年の卒業生の論文なんだけど 、hampir教授からトリプルAを貰った学生のコピーが手に入ったの!これに少し手を加えれば・・・余裕かなって思って・・・」
竜馬は目を見張って感心したように言った
「えー?そいつはすごいね!」
「見せてあげてもいいわよ」
「本当?」
そしてオリビアは蛇のようにはにかんで、体をクネクネしだした
「ねぇ・・・よかったら、こ・・・今夜・・一緒に・・・・」
オリビアが何か言いかけて竜馬を見て目を丸くした、なぜなら竜馬の後ろに背後霊のように突っ立った宗一郎がいたからだ、竜馬の後ろでこれでもかと宗一郎が妖気を発しながらオリビアを睨んでいる
「・・・どうしたの?オリビア?」
竜馬はオリビアの人相を見て、心配したように顔色をうかがった
「あ・・・うん・・・・また・・・時間がある時・・・・いつでも言って・・」
まるで宗一郎がオリビアをズタズタに引き裂いてやりたいと思っているように、宗一郎はオリビアを睨んでいる、本当にそうされるのではないかとオリビアが不安になるほどの目つきだ、そそくさとオリビアはワケのわからないことを、ごにょごにょ言って竜馬の前から退散した
「あのさ・・・宗一郎・・・」
「なんだ?」
背後からえも知れぬ妖気を醸し出している宗一郎に、竜馬は言った
「そんなに誰でも彼でもあんなに睨んだら、僕に女の子が寄ってこないじゃないか」
宗一郎は眉根に皺を寄せて言った
「睨んでいない!恐ろしく目つきが悪いだけだ!こればっかりは俺のせいじゃないっ!文句を言うなら母親に言ってくれっ!」
シカゴの大学生はなぜか男女みんなぽっちゃりとしてて小麦色に日焼けしている、いわゆる「オタク」が多い、服装もそんなにおしゃれではなく、いたって地味なビジュアルの学生だらけだ
その中でも引きしまって、色白の竜馬と、長身の宗一郎は「東洋ビジュアル」と女の子達の間で囁かれ、ひそかに人気があった
「それにまだ英語が聞き取れないんだよ、アイツら早口で何を言ってるかわからないんだ、だからこんな顔になるんだ」
「へーへー・・・」
この学校で唯一日本語が話せる竜馬に、今や宗一郎はぴったり張り付き、竜馬はすっかり宗一郎に懐かれていた
「なんだよ!お前オリビアが好きなのか?」
宗一郎が眉間にシワを寄せて言う、だからその顔やめろって・・・
「好きじゃないよ、でもせっかく論文を見せてくれるっていうのに、僕は留年なんかする余裕は全くないんだ」
それから間もなく毎日の習慣ができた、竜馬が授業に出ると宗一郎が必ず後ろの席を二人分取ってくれている、竜馬はそこに座るだけでよかった
大学の教授陣はそれはのんびりしていて、話す口調も眠くなる人ばかりだ・・・この頃になると竜馬はキャンパスや大学の教授達よりも、自分の方が遥に100倍忙しい事を悟り、教授といえど、尊敬できる所は無く、もはや彼らに何も期待しないようになっていた
. .。 .:・.。. .。
「・・・あんま・・・見るなよ・・・」
初めて竜馬の自宅に招待したのは、ジャスティンではなく宗一郎だった
「フローリング・・・」
「うん、そこで靴脱いで」
宗一郎は竜馬の家をまじまじと見渡した、竜馬はジャスティンの秘密基地を、二人でDIYをしていた経験から、今の住まいの倉庫を、丁寧に自分で住み心地が良い家に作り替えていた、そして何より靴を脱いで上がる床面のフローリングは、竜馬がホームセンターで木材をカットして、一枚一枚こだわって張り合わせてDIYをした作品だった
「うわぁ~・・・すげ~!これ・・・お前が一人でやったのか?」
「うん、退去する時に元に戻せば何してもいいって大家さんが言ってくれたんでね、ちゃんと断熱材も入ってるんだ」
木材はきちんとやすりがかけられ、ワックスが効いていて裸足にとても気持ちがよかった
「この卓球台、どうしたんだ?」
宗一郎が広いリビングにしている部屋のど真ん中に置いてある、卓球台に頬ズりした
「粗大ゴミで拾って来たんだ、広いし、飯を食うにもいいし勉強机にもなる」
「これ!このピンボールマシンは?」
宗一郎がはしゃいでいう
「それも粗大ゴミで拾ったんだ、中のバッテリーを取り替えたら遊べるようになった、聞くと思うから先に言うけど、ベッドとソファーはビームスさん所のオフィスにあったのを貰ったんだ、あと芝刈り機も・・・いらないけどね」
宗一郎はワクワクした様子で目を輝かせている、寝室の横にあるもう一つのドアを開けて中身を確かめる
「よしっこの部屋は余ってるんだな」
「うん・・・そこは物置に使ってる・・けどどうして?」
「俺!ここに越してくる!」
「ええ?」
竜馬は驚いた、パンッと竜馬に手を合わせて宗一郎が竜馬を拝む
「頼むよ!俺ん所のホストファミリー最悪なんだ、毎晩夫婦喧嘩するんだぜ!」
ドサリとソファーに座って宗一郎が言う
「ありゃ嫁が悪いな!ものすごくヒステリーだ、この前なんか旦那にテレビ投げつけてたぜ、こちとら試験前だってのによ!アイツらが喧嘩しだしたら気を使ってトイレにも行けやしない!」
親指を立てて自分の首を切る真似をした
「家賃半分払うからさっ!ルームシェアさせてくれ!!このとおり!」
また両手を合わせて竜馬を拝む、自分も経験があるのでホストファミリーと相性が合わないのがどれほどストレスかは知っていたので、竜馬は少し同情した
「う・・・まぁ・・・別にいいけど・・・」
竜馬はポリポリ頬を掻いた
そこから宗一郎との同居が始まった
. .。 .:・.。. .
「竜馬!食った皿はすぐに洗わなきゃ蟻がわくだろ!!アメリカの蟻を舐めんな!」
宗一郎は上半身裸でプリプり怒ってキッチンで皿を洗っている
「乾燥機を使ったらすぐに取り出して畳めよ!皺になるだろ!」
「だぁ~!!竜馬!お前!こっちの新しい方の石鹸開けたのか?まだ使いかけがあるだろう!嫌なんだよ!俺こーゆーの!」
やはり上半身裸で洗面台の前でシャカシャカ歯磨きをする竜馬の前に、宗一郎が両方の手に石鹼をもってやって来た
「いいか!この薄くなった石鹸と新しい石鹸を・・・こうっ!」
宗一郎はむぎゅ~っと二つの牛乳石鹸を引っ付けた
「ほら!こうしたらまだまだ使えるだろ!お前って生活力ね~よな!しょ~がね~な!本当に!」
そう言いながらバタバタ出かける準備をする宗一郎の背中をじっと眺める竜馬
ボソッ・・・「口うるせ~・・」
竜馬はボソッとつぶやいた
「何か言ったか?」
くるりと宗一郎が振り向いて竜馬を睨む、最も本人曰く、あれで睨んでいないらしい
「いいえ・・・」
「ほら!行くぞ!モタモタすんなよ!出かける前にシーツをはがしてランドリーに入れておけ!」
この頃の宗一郎は、竜馬と一緒にビームスの精粉工場でアルバイトをしていた、日本で免許を取得している宗一郎が、竜馬のダッドトラックを鼻歌を歌いながら運転する
ちらりと宗一郎を見る、宗一郎はハンドルを叩きながらカーステレオから流れてくるラップを聞き入っている
―ジャスティンは・・・僕が何をしても好きにさせてくれたよな―
竜馬は助手席の窓から顔だけを出し、爆進してくる向かい風の中で唇を尖らせ、改めて寛容なジャスティンの傍にいた時の、居心地の良さを懐かしく思っていた
宗一郎は仕事の覚えが早かった、そのコツは袋を抱えたらすぐに体を反転させてリフトのパレットに放りこんでしまうことだ、そして袋は荷崩れをしないように、常にコの字型にパレットに積む、宗一郎はその単調な動きを繰り返し調子が出てくると、袋詰めをする前の工程係の連中をせかしていた
その少し離れた所で、竜馬は額の汗を拭った、工場の中はムンムンしていたし、小麦粉のモヤは汗ばんだ体に引っ付いた
―このままじゃ夏になったら体力的にキツイかもな・・・何か別の稼ぎ口を―
と考えるが学生の今の竜馬に出来る事といえば・・・バーテンダーの仕事にありつこうかと思ったがバーテンダーにはあまりにも思い出がありすぎてなかなか踏み出せないでいた
「おい!てめぇ!何睨んでんだよ!」
ふと、宗一郎とこの工場に、時々日雇いで働きに来ている町のゴロつきが揉めている声がここまで聞こえた
すかさず竜馬が飛んで行って宗一郎とゴロつきの仲裁に入る
「ちょっと!やめろよ!宗一郎!」
「睨んでないって言ってるだろ!こんな目つきなんだよっっ!」
「糸目やろう!」
「なんだと!」
そう言って自分の目を一本に引っ張って宗一郎をからかうゴロつき、その仕草は東洋人をヘイト(侮辱)する仕草で、一種の人種差別の意味もあった、そしてそんな事をされて大人しくしている宗一郎でもなかった
竜馬が止めるも虚しく、ゴロつきの顎に宗一郎が床から伸びてきたようなアッパーカットを一発お見舞いした、すかさずゴロつきの石のように固い拳が宗一郎の右頬に命中した
「だからやめろってば!」
そこに竜馬はじめ、喧嘩を止めに入って来た従業員達もエキサイトして団子状態になり、誰かれ構わず、みんながみんなを殴った
竜馬も左頬を殴られて、頭にきて誰だかわからないが、殴りかかった、誰も決してひかず、誰もが誰かを殴り合う死闘に変わった頃、いきなり工業用のものすごい水圧の水をかぶせられた
「そこまでだ!やめろ!お前ら!」
ビームスと、小麦粉が盗まれないように雇っている用心棒達がやってきて、竜馬達は一人ひとり、いとも簡単に喧嘩の団子からひっぱりはがされ、びしょびしょのまま地面に放り投げられた、竜馬に助け起こされた宗一郎は口から血を流して叫んだ
「ちくしょー!東洋人だと思って舐めやがって!」
「宗一郎ってば!」
まだ殴りにかかろうとしている血の気の多い宗一郎を必死で止める
「お前ら!後で事務所に来い!」
ビームスの怒鳴り声が工場に響いた
「あいつらハッパをやってるから、まともに相手にするなよ!」
竜馬は事務所へ向かう階段を上りながら宗一郎に言った、宗一郎はブンブン首を振った
「なんか俺、後頭部たんこぶ出来てね?」
全然悪びれもせず意外と喧嘩っぱやい宗一郎に竜馬は呆れた、ジャスティンなら無駄な喧嘩はまずしないし、そもそもあんな奴らは殺し屋(ヒットマン)ジャスティンのひと睨みで震え上がって、近寄りもしなかった
竜馬は、時々荒れる宗一郎を、どう扱ってやればいいかわからなかった
. .。 .:・.。.
「職場は学校じゃないんだぞっ!みんな色んなヤツが、色んな事情で金を稼ぎに来てるんだ、気に入らないからっていちいち殴ってたら体がもたないだろう」
ビームスは、事務所の黒のソファーに大人しく座る二人に鋭い視線を向けた、竜馬は喧嘩後の神経が高ぶり、体内を流れる血の勢いでずっとくらくらしていた、ビームスの表情をそっと見てみると明らかに怒っている
―どうしよう・・・もしクビになったら・・・本当に宗一郎のバカ!―
「もし今度やったらわかってるな?」
ビームスの声色には竜馬達を安心させるような響きがほとんど無く、それどころかやんわりと脅しが込められていた、ビームスは同じところを行ったり来たりしながらため息をついた
「しかし・・・実際、あの連中には俺も手を焼いているんだ・・・問題しか起こさないからな・・・」
「そ・・それじゃビームスさん、宗一郎だけが悪いんじゃないのわかってもらえますか?」
「そうだな~お前らをアイツらと同じ工場にしている、俺も悪かったかったかもなぁ~」
ビームスが顎を人差し指と親指で挟んで思案気に言う
「なぁ!お前ら、別の仕事しないか?少しハードだけど、とても実入りが良い仕事があるんだ」
「本当ですか?」
二人は驚いてビームスの顔を見た
「ああ、俺の知り合いで、牧場のフェンスを何百メートルも張る仕事なんだけど、ちょうど今までやっていたヤツが体を壊してやれなくなってね、他に探しているっていうんだよ、どうだ?やってみないか?時給じゃなく報酬制だから今よりぐんといいぞ!!」
竜馬と宗一郎はお互い顔を見合わせて、当然とばかりに同時に言った
「やります!」
「やります!」
コメント
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うわー、今回のエピソード、めっちゃ面白かった!宗一郎の「睨んでないけど目つきが悪い」連発に笑ったし、ホントはめちゃくちゃ竜馬のこと気にしてるのが伝わってきてニヤニヤしちゃう。石鹸をくっつける節約術とか生活感あふれるツッコミもいいね。ジャスティンとの対比で「寛容さ」を懐かしむ竜馬の気持ちも分かるけど、この騒がしい同居関係も悪くないよ!続きが気になる〜!