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160 - 第160話 アナザーエンド ~もう一つの結末②

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2025年06月25日

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※冷凍保存――人体冷凍保存。



SF映画等で一度は聞いた事があるだろうそれは、極論云うと未来の医療技術で蘇生出来る事を期待して、人の遺体を約『-196℃』の液体窒素下で冷凍保存する事。



現在の医療技術では治療不可能な病気や怪我でも、それが可能になった頃に蘇生させ、治療しようという考え方である。



だが実際には、人体に含まれる水分が冷凍される事で膨張し、細胞膜等を破壊してしまう等の問題がある為、単に遺体を冷凍しただけでは、解凍したとしてもその人体を蘇生させる事は困難である。



解凍後にナノテクノロジーの応用で、細胞膜を修復する未来の技術があるが、当然現在の技術では到底不可能である為、この考えは夢物語にも等しい。



――だが、幸人の特異能の力は、常識さえも覆す。そもそも、特異能を応用したのが未来の技術なのだから。



特異能『無氷』技能力の一つ、『コールド・スリープ・オールド・ゼロ』――本来この力は、対象者へと施す医療技力。対象者を冷凍保存する事により仮死状態にし、時そのものを止める。世紀を跨いで生存させる事も可能。



基本、人体冷凍保存と用途、応用は変わらないが、この力に於ける最大の特徴は、時を止めた仮死状態であっても、細胞は衰える事無く自己修復を可能とし、時間さえ掛ければ解凍後には修復完了状態も可能な事。逆に云うと、既に遺体状態には効果が無い。



――そして、もう一つの相違点。冷凍中は無防備と思われがちだが、この技を施された対象者は、二重に覆う外面の絶対零度の超伝導流体により、それはあらゆるものから対象者を保護する絶対防御膜の役割を果たしている。



幸人は自ら、その力を自身とジュウベエに施したのだ。何時か必ず帰る事を胸に秘めて――。



************



「――まあ、ノクティスから受けた傷を復元するのに、十年以上も掛かってしまったがな……」



幸人は思い返し、溜め息を吐いた。



本人の時間は止まったままとしても、世の中の時間は止まらない。十年以上の歳月は、世も人も変わるには充分過ぎる時間。



「…………」



幸人はもっと早く戻って来たかったのだろう。項垂れているのは、余りに長く待たせ過ぎたから。



「まあ……いいんじゃね? 結果的に帰ってきた訳だし。それに正直、お前の帰りを信じて疑わなかったのは、あの子だけだったしな」



だが、確かに帰ってきた事実。それは間違いない。



「ふん……」



経過はどうであれ、結果が全て。



二人は煙草に火を点け、其々の想いに煙を燻らせる。



「という事で、勝負は俺の勝ちだな」



「あ?」



燻らせる最中、不意に時人から洩れる、勝ち誇った声。幸人は何を言ってるんだと怪訝そうに。



「何忘れた気でいやがる。言ったろうが? 先に結婚するのは俺。事実、琉月ちゃんとの間に四人の子も出来たし、どう考えても俺の勝ち、お前の負けだろ?」



「なっ……」



――そうだった。確かに以前、その事でこの男と争った事もあった。



だがそれで二人の宿命の勝敗を決する等と、幸人は呆れてものも言えない。



「そうだな……。悔しいが認めるしかないな。この勝負、お前の勝ちだ」



――が、幸人は微笑を浮かべながらも、時人の勝利を認めた。



今更闘い合うつもり等、両者には微塵も無い。だが決着はつけねばならない。



ならば両者に残された道は当然――



「おっ? まあ流石にいくらお前でも、この現実はどうしようもねぇよなぁ~」



時人は笑いながら勝ち誇った。だがそこに嫌味は感じられない。



「まあ、幸せならそれでいいよな」



「そうだな……」



決着どうこうは、最早どうでもいい。各々の信じた道を歩む。それこそが何よりも重要だと。



「さて、そろそろ戻るか。お前の醜態、たっぷり見届けてやんよ」



時人は煙草を消しながら、踵を返した。



「相変わらず変わってないな、お前は……」



見送りながら幸人も、嫌味の一つを。



両者の関係は、これからもこの調子だろう。



「ああそうそう、今度家に来いや。お前のバイク、もう腐って動かんだろ? 小さい個人経営だが、俺は今バイク屋をやってるんだ。特別価格で見てやんよ」



立ち去る間際時人は、ふと思い出したかのように伝えた。



――時人は琉月と結婚後、都内でバイク屋を営んでいた。



極端な話、裏で得てきた莫大な金額の前では、働く必要は無い――が、もう裏は関係無い。表として生きていく為の、表の姿として時人が選んだのがそれだった。



趣味も兼ねてなので、それなりに上手くやっていた。



「伺わせて貰おう。その時は、宜しく頼む」



幸人はその申し出を、素直に受け入れた。



別段、どうしてもバイクが必要という訳でも無い。



両者のこれは、一つの理由付け。ある意味、照れ隠し――



「おう。直らん時は、新車買わせてやるよ。それじゃ、また後でな」



時人は背を向けたまま手を振り、戻って行った。

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