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Eliminator~エリミネ-タ-

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109 - 第109話 七の罪状 ~前編26 創始者

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2025年06月14日

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************



――結局は霸屡の『全ては会ってから』とはぐらかされ、全員は納得いかないまま、ある場所へと案内されていた。



「花修院社長、御苦労様です」



受付ロビーにて、霸屡の姿を確認した女性が深々と御辞儀する。



「何処へ行くかと思ってたら、お前のとこかよ……」



ぼやく時雨。つまりは霸屡が代表である、クレイテル本社へと赴いていたのだ。



かなりの高層ビル。大規模な事業。そしてこの中の一部が狂座関係者、もしかしたら全員がかもしれない。



案内されたのは社長室が在る二十七階――ではなく、その下の更に下。地下の方だ。



“何故地下に?”



疑問に思うも、ここは無言の霸屡に先導して着いていくしかない。



※B2F



地下二階。此所が終着点のようだ。これ以上、下の階は記されていない。



「――さて、ここからは専用エレベーターで下に降りて貰います」



突き当たりの壁の前で立ち止まった霸屡は、ようやく無言から言葉を発した。まだ下の階が在ったのだ。



「専用エレベーターって……何も無ぇじゃねぇか!?」



時雨の疑問は当然。この先に在るのは只の壁、行き止まり。



「まあ、そう慌てずに」



そう霸屡が壁に手を当てると、壁に擬装でもしていたのか、エレベーターの窓口が顕となっていく。



「随分と用意周到な事で……」



ここまでして隠すもの。一体下に何が待ち受けているのか。



まるで地獄の底にでも案内するかのように、入口の扉はそっと開いていた。



「どうしたお嬢?」



いざ乗り込もうとしたその際、一人だけ動こうとしなかった悠莉に、腕に居たジュウベエが声を掛けた。



「悠莉?」



全員が振り返る。明らかに悠莉はエレベーターに乗る事を躊躇している。



「よく分かんないけど……何かこの下、良くない気がする」



それは警戒か警告か。まるで来た事があるかのような口振り。



「何だ、来た事あんのか?」



「ううん、そんな事は無いけど、何かね……。出来れば行きたくないなぁ~」



と思われたが、悠莉はそれを否定。ただ何か本能的に躊躇しているみたいだ。



“気付きましたか……。本能が覚えているのですね”



他を余所に一人思う霸屡。なら勘違いでもなく、悠莉はこの下に在るものを、覚えてなくとも本能が知っているという事。



「大丈夫よ悠莉。何かあったら私が守るから」



「う、うん」



だが何時までも立ち止まっている訳にもいかない。特に琉月の説得が効いたのか、悠莉は彼女にしがみつくように行く事で了承。



勿論、悠莉以外の皆がこの先を信用している訳ではない。ここにきて隠されていた事実に、霸屡の事を信用しかねていたから。



だが今は立ち止まれない。



各々の思惑と共に、全員を乗せたエレベーターは下へと降りていった。



************



「――それにしてもこんな穴蔵に隠居してんだから、狂座の創始者ってのは、よぼよぼのじいさんだったりしてな? はははっ――はは……」



下に降りてすぐ、場の雰囲気を解す為か天然か、時雨がそうおどけてみせたが――益々白けた感が。皆からの白々しい視線が、彼へと突き刺さる。



「んだよ……もっと景気よく行こうぜ。只でさえ暗いんだからよ、特にお前ら二人は」



居たたまれないのか、そう薊と幸人の二人へ指差す時雨。彼なりの張り詰めた空気への配慮なのだ。



「相変わらずだな……」



「全くだ……」



御互い腕組みしながら背もたれる薊と幸人は、ぼやき合いながらも場が少し軽くなった気もしていた。相変わらず悠莉は琉月に、無言のまま引っ付きっきりだが。



「時雨……。向こうではくれぐれも粗相の無いようお願いしますよ」



「見た事も聞いた事も、会った事も無い奴に粗相も糞もなぁ……って、おい一体何時まで掛かんだよ下まで。このエレベーター壊れてんじゃねぇのか?」



そう。此所に乗り込んでから実に、五分以上が経過していた。未だに着く気配が見えない事に、時雨が故障と思うのも当然。



「いや……まだ降りている」



たが故障では無い。薊が窓辺からエレベーターは未だに下がっていくのを確認。



「はぁ!? てか何でそんな下に? どんだけよ」



これはどういう事だろうか。地下と云っても限度を越えていた。地下三階へ――と云った次元では無く。



「まあ、しばらく時間が掛かります」



その疑問を氷解すべく、霸屡が何気無く説明に入った。




「終着点は――深度二万メートル下ですので」



「……はぁぁ!?」



霸屡の言葉の意味に、やはりというか一番驚愕の声を上げたのは時雨だ。



「マリアナ海溝より深いじゃねぇか……」



それはこの地球上で最も深い海溝、そして最も高い山であるエベレストを足して尚、余りある距離。



「何故またそんな下に?」



幾ら何でも有り得ないし、そこまで下になる必要性の是非を問う琉月。やはり何処か信用出来ないでいる。不明瞭過ぎるのだ、何もかもが。知らされていない事が多過ぎる。



「機密保持……の為ですかね。本来人類が到達する筈の無い場所という、意味合いも兼ねて……ね」



霸屡はそれ以上は語らなかった。そもそも深度二万メートル下の地層ともなると、現在の科学力では人が適応出来る環境では無い。



エレベーターは普通に下へと降りていくが、重力の有る地上から下に行けば行く程に気圧は上がり、それこそ呼吸も困難になり、この気密内では空気の中で溺れてしまうだろう。



だが狂座――その人智を超えた科学力。その頭脳の核とも云える霸屡という人物なら、どんな理解を超えた事象すらも可能と、それは誰もが知る所。何の変哲も無いエレベーターだが、通常の状態と何一つ変わらず下っていく所を見ると、これも狂座の技術力の一つなのだろう。



そしてこの下に居るとされる、狂座の創始者なる人物。



一体どんな人物なのか。



「…………」



心無しか悠莉の不安が下に行くにつれ、大きくなっていくようにも見えた。

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