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#ワンナイトラブ
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その時だった。
「──き、貴様ぁぁぁ!! ひよりんに、なんて破廉恥なことをぉぉぉ!!」
ドアが勢いよく開けられ、仁王立ちした大五郎さんが現れた。彼は、娘が乱れた格好の僕と一緒にいるのを見て、頭に血が上りきっていた。
「お前みたいな男との結婚は、断じて認めん! 今すぐ叩き出してやる!」
絶体絶命だ。だが、それを制したのは静香さんの凛とした声だった。
「静かになさい。私は、この方のこと、大いに気に入ったわ」
「な、何だと、静香!? 裏切るのか!」
「あら、裏切るも何も。……見て、この子の表情。モデルとしての素質が想像以上なのよ。ひより、あなた、本当にいい子を捕まえてきたわね♡」
静香さんは、描き上げたばかりのスケッチを夫に見せつけた。そこには、墨の濃淡で描かれた、「どこか見覚えのある」ポーズをとった男の姿があった。
「……っ!? こ、この構図は……」
大五郎さんの顔が、怒りから驚愕、そして……深い「羞恥」へと変わっていく。
「ふふ、思い出した? 懐かしいわよね? ……春川さんはね、ひよりのデビュー作のモデルなんですって。私の三十年前の艶絵デビュー作、『北の海、紅き情欲』のモデルも……若い頃のお父さんだったから、血は争えないのかしらね♡」
「…………ッ!!」
大五郎さんは絶句し、崩れ落ちるようにその場に膝をついた。彼は思い出したのだ。若き日、愛する静香のために「モデルになってほしい」と頼まれ、照れながらも様々なポーズ――口にするのも憚られるような破廉恥なポーズの数々を強要されていた、あの「地獄の甘い日々」を。