運命の赤い糸ってなんで赤いんだろう。そんな俺の問に赤葦はくすっと笑ってこう答えた。
〜俺と赤葦が何回も出会い、そして別れる話〜
輪廻転生、1回目
赤葦は花魁だった。そんな中、当たり前のように俺達はお互いに恋に落ちた。
しかし、俺は一般市民で赤葦は花魁。身分の差は激しい。俺たちが結ばれるのは難しい事だった。初めて会ってから1ヶ月、花魁道中でしか会えなかったけど、俺たちは護衛の人の隙を着いて俺と手紙の交換をしていた。しかし、花魁というものは大変で、好きでもない他の男と性行為をしたり、媚びを売らなければいけない。いやでも、借金があるから逃げられない。赤葦は持ち前の美貌と実力により、みるみるうちに階級をあげてきたけどやっぱり花魁の借金は減ることを知らなかった。赤葦の手紙には毎回「死にたい」「もう嫌だ」「こんな事したくない」「助けて」と、辛くて暗い感情で埋め尽くされている。だから俺は、ついに「夜逃げをしよう」と提案した。赤葦は次の手紙で「はい」とだけ書いてくれた。そして1週間後、俺たちはついに今日。この街から姿を消す……はずだった。
赤葦と俺は無事に逃げられ、遠くの村に行った。そこで匿ってくれた村のおじいさんに裏切られ、俺たちはあっけなく捕まった。
花魁を殺す時は足を斬るらしい。赤葦は十字架に吊るされたあと、右足首を斬られじわじわと苦しんで死んで行った。俺も花魁をさらった罪で首を斬られて死んだ。
俺と赤葦はもう出会えないと思っていた。
輪廻転生、2回目
なんと、俺は生まれ変わり、前世の記憶もある中、俺と赤葦は再び出会った。場所は国民学校だった。世界戦争が始まり、学徒出陣された俺たち。そこの訓練所で俺は赤葦を見つけた。俺も赤葦もお互いの事を覚えていたみたいで、俺たちは抱き合って再会を喜んだ。そこで沢山の訓練を受け、俺たちは戦場に出された。そこで赤葦は右目の失明、俺は右腕と左脚の切断。それでも俺たちは生き延びた。なのに、別れはすぐに来た。俺は特別攻撃隊に選ばれてしまった。もう戦場に出ることの出来ないほどの大怪我をした俺に出された最後の国からの指示。特別攻撃隊、略して特攻隊。簡単に説明すると、自殺しろって言われたようなもんだ。赤葦は大反対。俺も行きたくなかった。死にに行かないと行かない。もう赤葦に会えない。赤葦は理系。俺は文系。この時代、理系は化学兵器を作れるからという理由で特攻隊には選ばれない。その分、悪く言えば使えない文系はどんどん特攻隊として使い捨てのコマになる。どんだけもがいても、「お国のために死ねるならありがたい」という綺麗事を言われた。赤葦だけはずっと反発してくれたけど、抵抗虚しく俺は特攻機に乗った。
「あーぁ、これでもう会えないのか」
あとから聞いた話、赤葦は俺が旅立ったその日に、用意していた毒を飲んで自殺したらしい。
輪廻転生、3回目
俺がまた意識がはっきりした時も、戦争は終わっていなかった。俺は前世の記憶があったため、優秀な兵隊となった。そして、また戦場に戻ってきてしまった。しかし、2度目は上手く動けた。ほぼ無傷で戦場で戦って、近くの木の裏に身を隠した時、お腹から血が出ていて弱っている赤葦を見つけた。赤葦は、出会ってすぐ俺に抱きついてきた。
ボソッと聞こえた。
「次も…待ってます」
俺は何か答えなきゃって思ったけど、そう思った時には赤葦は息を引き取っていた。
その後の俺は、冷たくなった赤葦を抱えて基地に戻った。そしたら、相手側の兵士を連れてきたことで追い出され、彷徨ううちに俺は空腹で餓死した。その時にはもう、赤葦の身体にはうじが湧いていた。
輪廻転生、4回目
赤葦は耳が聞こえなかった。俺が祖母の病気で病院に行った時、耳の聞こえない赤葦と出会った。赤葦は生まれた時からずっと入院していたらしい。そこから沢山手話を学んだり、赤葦も紙にペンで書いたりして会話をした。でもある日、俺があげた絵が病院のいじめっ子に病室の外に投げられてしまったのをきっかけに、赤葦は動きづらい体を懸命に動かして絵を追った。暗くて何も見えない中、たった1人で…
耳も聞こえないし、初めて1人で出た外の世界。
赤葦が無事に帰って来れるはずなかった。暗い夜道を彷徨い、気がつけば電車に惹かれていた。耳が聞こえないせいで踏切の音も聞こえなかったそうだ。俺はまた、赤葦を失った。
輪廻転生5回目
もう、辛い戦争の中に立たされることはないみたいだった。時代が大きく進歩したから。でも、俺が再び赤葦を見た時と、今にも死にそうなぐらいふらふらしながら必死にごみ箱を漁っている赤葦が居た。俺はすぐに保護した。そしてすぐに家に連れて帰り、親の居ない中、必死に介護した。数週間経つと、赤葦は無事に元気になり、俺たちは恋人同士になった。赤葦とやっとゆっくり話せる…そう思っていたのに、いきなり警察が来て、「犯罪者の子供だから」という理由で連れていかれた。この短い時間で話せたのは3つ、
1、俺たちは記憶を持ったまま生まれ変わる。
2、どちらかが死ぬ時、必ず血が零れる。
3、必ず俺たちは出会う。
冷静な赤葦が言うんだから間違いじゃない。その後、俺が赤葦と会うのは許されなかった。俺は今までで1番長生きした。赤葦はどうか分からないけど、俺は今年で98になる。もうすぐ寿命だな、血は今回流れなかったな…と思っていたら若者の飲酒運転していた車に跳ねられてあっけなく死んだ。
輪廻転生??回目
俺たちは何度も出会い、そして何度も死んできた。ある時は幼稚園で出会い、2人同時に事故死。ある時は高校生で出会い、夜道を帰る途中に通り魔に刺され死んだ。何回も何回も出会っては死に、出会っては死に…記憶が鮮明に残る分、赤葦と出会うのもつらくなっていった。
今回出会ったのは、ごく普通の家庭で生まれ、ごく普通に育った赤葦だった。出会った場所は梟谷学園の体育館。俺はバレーをしていた。2年生の時だった。
「宮沢中学校から来ました。赤葦京治です。セッターです」
と、会いたいけど会いたくない。聞きたいけど聞きたくない声が体育館に響いた。その瞬間、俺と赤葦の目線はぱっちりと合った。
そのまま部活は終了し、俺はいつものように1人で自主練をしようとしたところ
「木兎さん…俺も、一緒にやっていいです、か?」
と、赤葦から声をかけてくれた。俺は、怖かったけど、辛かったけど、その問に頷いた。
それからもう12年。俺たちは成人し、立派な大人になって、今は一緒に暮らしている。長い時間恋人として赤葦と過ごすうちに、ずっと一緒に居れる。赤葦はもう居なくならない。俺は段々とそう思えるようになってきた。
だって今までだったらもうとっくにどちらかが死んでるのに、今回は全然死なないし、危ない目にも合わなくなった。この世で同性婚を認められ、やっとこの前無事に結婚式までも終わらせたのだ。俺たちは結婚式の余韻に浸りながら、2人でのんびりテレビを見ていた。その時ちょうど見ていた音楽番組が終わり、変わりに、「運命の赤い糸が繋がってる人どこにいるんでしょうねぇ!!」とか、「赤い糸で結ばれるってロマンチックだと思いませんか?」とか、有名女優さんや、芸人さんがわちゃわちゃとそんな話題で討論してる番組になった。そこで俺は思った
「運命の赤い糸ってなんで赤いんだろう」
その問に赤葦はくすっと笑ってこう答えた。
「俺、考えたんです。なんで俺たちは何度も生まれ変わるのか、なんでこんなに辛い思いをしなきゃ行けないのかって…それで、気がついたんです。もしかしたら世の中の人みんな、同じように輪廻転生を繰り返してるんじゃないかって、でも、記憶は残らない。俺たちは特殊だったんですよ。きっと…何度も出会って、何度も血を流して死ぬ。それを繰り返してるうちに、その死んだ時の血とか悲しみが細くて、白かった糸が段々と紡いで、立派な、太くて、赤い糸になっていったんじゃないかなって」
「だから、みんな気がついていないだけで、今隣にいる大切な人は、過去にずっと愛し合っていた人で…きっと沢山の経験をしていて……世の中の人みんなそうやって結ばれてるんじゃないかなって」
だから、運命の赤い糸が赤い理由は、過去に流した涙や血が糸に紡がれているから。その糸が太いぶん、俺たちはずっと長く一緒にいられるんです。って
そう、悲しそうに笑った。
もし、またその赤い糸が切れてしまったら…俺たちはまた生まれ変われるのだろうか。赤葦のその仮説が正しかったとして、それを神様は許してくれるのだろうか。この世の原理に気づいて…知ってしまった俺たちは、排除されるのではないか……俺は、そう思ってしまった。
「じゃあそろそろご飯にしましょう!!」
俺が悩んでいたのを見た赤葦はそう言った。「う…ん」と、曖昧な返事をしてしまった俺。そんな俺の頬に優しくキスを落とし、赤葦が一言
「木兎さん、俺は今すごい幸せなんです。だから、俺が死ぬかもとか今は考えないで…死ぬかもしれないけど、また会えますから…だから、」
皆さんは「運命の赤い糸」を信じますか??
コメント
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な、涙が😢
もう涙が止まりません😭