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#魔法
こはる
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植まどか
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こはる
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第86話
「俺もか?」
「えぇ。私の目が間違ってなければ……というか、さっきは無かった」
は……?
「取り敢えず、カトリーナさんも戻ったから、診てもらいましょう」
カトリーナ――俺の妻だ。
聖女と呼ばれる、『全ての魔法属性がある』という特殊体質。百人に一人くらいだから……二つの村に一人くらいいるはず。
でも、近年は、聖女率が高くなっていて、五十人に一人とも言われている。
でも、カトリーナは魔法の使い方が巧みで、繊細だ。魔力量こそは平均より少ないものの、威力は普通の人の何十倍だろう。
「そうだな」
俺は、急ぐグレーテの背中を走って追った。
❂
「お前の所為だろ! 母さんが死んだのも、俺が父さんに捨てられたのも!」
お兄様が、俺に怒鳴りつけた。
お母様が、冷たくなって入っている棺の側で、叩かれた。痛い。
頭もまだぼんやりして、気持ち悪い。
「獣人だから、簡単に死なないよな」
お兄様は俺の後頭部を殴って……いや、蹴ったのかもしれない。どっちだか、分からないけど、俺の意識は遠のいた。
「おい! 獣人!」
痛いよっ……何?
「ノア。ごめんね……」
え? どこ?
そう思った瞬間、生首が俺の腕の中に入った。綺麗なオーロラのような黒髪の女の子。
俺の初恋の人。
何と引き換えても、守らないといけない人。
泣かせてはいけない人。
笑顔でいてほしい人。
無理をしてほしくない人。
俺の痛みを知ってほしくない人。
そんな、大切な人が、俺の腕の中で生首になっている。
駄目だ……もう……
❂
俺は、飛び起きた。汗で全身ぐっしょり。
隣を見ると、リナの髪色が戻っていた。
え? いつの間に……?
「ノア。大丈夫か?」
ラルフさんだった。赤い髪は濡れていて、外は雨の音がする。
「ノアも大分回復したみたいだな。リナはあの術を使ったんだろ? でも、ちゃんと生きてる。最悪の自体にならなければ、このまま目を覚ますだろう」
そっか……まだ安心はできないんだ……
『もしもの事があったら……お願い。私の事、殺して』
こ、ろす……できない。俺には……
「ノア。一人じゃないだろ。皆、隣にいなくても、近くにいる。誰も、お前だけに背負わせたり何かしない」
「はい」
俺は、喉を震わせて、ラルフさんの方を向いた。ちゃんと、はっきりとした声で。
「限界は信じるな。でも、仲間の優しさは信じろ。リナは、それが言いたかったんじゃないか?」
『限界は信じるな』
俺は心の中で言葉を転がした。
「大丈夫だ。ノアは、優しくて忠実だろ。それに、リナは勿論、他の仲間も支えてくれる」
「そうですね。とても、恵まれてますね」
「あぁ。まぁ、覚悟が大き過ぎたりする人がいるけどな」
『リナとか、ニルスとか、ライナーさんとか……』と言わんばかりに苦笑しながらマリンブルーの瞳が揺れている。
「そういう、ラルフさんも覚悟は十分過ぎるほどありますよ。とても、頼れる人です」
そう言って俺は、上半身だけ起き上がらせた。
でも、視界が狭くなってくる。否、酸欠だ。
「無理は駄目だよ」
リナの声が過った気がして俺は、隣のベットを見た。
でも、リナは穏やかに、寝息をたてている。
あれ? 気の所為だったかな?
頭がガンガンしてきて、目の前が真っ暗になった。でも、意識はあるし、目だって開いてる。
「これ以上は、身体に響く。辞めておけ」
半強制的に、寝かされた。
むぅ…………まぁ、危なかったのは、事実かな……
しばらくすると、リナが飛び起きたような魔力の動きが見えた。半分寝かけていたから目を開けるのに少し時間がかかった。
ラルフさんは、椅子の上で爆睡中。動け無いから、移動してあげる事も出来なかったけど……緊張の糸がプチンって耐えられずに切れたんだろうな……
「生きてる……」
ポツリと四音。どこにでも行けそうな……そんな希望がある声だった。
「死んでるとでも思ってたのか?」
「ノア! ……てっきり、ね。私ってこの術使ったら五分の四死んでたから……良かったっ……」
リナは泣き始めた。
良かった……それは、こっちの台詞。
俺は、立ち上がってリナのベットの直ぐ隣にある椅子に座った。
親指でリナの頬をなぞりながら「俺が、リナの事を死なせるわけない」と微笑んだ。
「無理はしないでね。私も、ノアの事、死なせないから」
リナは『へへっ』と無邪気に笑ってから俺の頬を撫でた。
柔らくて、華奢な指先は、タコが沢山できている。道具と剣のタコはマメになって偶に潰れていたりする。
「それに、私は、まだノアに守られる程、弱くない」
まだ? どういう事?
「きっと、抜かされるのよ。『青は藍から出でて藍より青し』ってあるくらいだから」
青は藍から出でて藍より青し……俺は青って言いたいのか?
「良かった。また会えた」
そう言ってリナは、俺に抱きついた。
コメント
1件
うわ、今回もめっちゃ重めの展開だったね…。ノアの悪夢、リナの生首が腕の中に飛び込んでくるシーン、ゾッとした。あの初恋の人のイメージがフラッシュバックする感じ、めっちゃ刺さったわ。 でもラルフさんの「限界は信じるな。仲間の優しさは信じろ」って台詞、めちゃ良い。リナが泣きながら「生きてる…」って言うところも、もうダメだ、こっちも泣きそうになった。青は藍より青し、ってリナの自信、かっこよかった。続き楽しみにしてます!🔥