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ももは
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【南西第七エリア ― 霧の荒野】
重い沈黙が、霧の中を満たしていた。
畑中は静かに口を開く。
「……話してくれ」
「なぜ、お前がアビスにいる」
隼人は俯いたまま、小さく笑った。
その笑みには、怒りと諦めが滲んでいた。
「全部……お前のせいだ、畑中」
空気が張り詰める。
畑中の目が揺れた。
「吉岡が死んだ、あの日」
「俺たちが投入された作戦……あれは“事故”なんかじゃなかった」
隼人の声が低く響く。
「敵の数も、配置も……本当は分かってたんだろ?」
「……!」
「けど、お前は従った。上の命令に」
「俺たちは駒だった」
隼人の拳が震える。
「吉岡は最後まで皆を守ろうとして……死んだ」
畑中は何も言えなかった。
隼人はゆっくりと顔を上げる。
「吉岡が死んだ後、俺は空っぽになった」
「怒りも、悲しみも……何も感じなかった」
「……」
「そんな俺に手を差し伸べたのが、“虚無”だった」
黒紫のオーラが静かに揺れる。
畑中が低く問う。
「お前が信じてた正義は、どこへ行った」
隼人の瞳が鋭く光った。
「それを壊したのは、お前だ」
沈黙。
風だけが吹き抜ける。
隼人は苦しそうに目を伏せた。
「俺は……お前に憧れてた」
「誰より現場を見て、部下を守って……強かった」
「だから信じてた」
その声が、少しだけ震える。
「でも吉岡の時、お前は黙ってた」
「何もしなかった」
畑中は静かに目を閉じる。
「……ああ」
「俺の判断は間違っていた」
隼人の目が揺れた。
「今でも夢を見るんだよ」
「吉岡が笑ってて……お前がくだらねぇ話してる夢を」
「目が覚めるたび……吐き気がする」
霧の中、二人は静かに睨み合う。
かつて同じ未来を見ていた男たち。
だが今、その道は完全に分かたれていた。
【ネオ・コード訓練場】
空間に浮かぶ無数のリング。
重力が歪み、空気が軋む。
その中心で、公太が膝をついていた。
「くそっ……!」
「また制御できねぇ……!」
汗が床へ落ちる。
炎が不安定に揺れていた。
唯我は静かに目を閉じ、集中する。
だがリングが激しく震え、衝撃が走る。
一祟も荒い息を漏らした。
「“意識と肉体の同調”って……簡単に言わないでくださいよ……!」
三人は限界だった。
その瞬間――
公太の炎が暴走する。
熱が腕を焼き始めた。
「お前はまだ、自分を信じてねぇ!!」
烈堂の怒声が響く。
公太は息を止める。
そして、静かに呟いた。
「……怖かったんだ」
「炎じゃねぇ」
「誰かを守るって覚悟が」
炎が変わる。
荒れ狂っていた熱が、一点へ収束していく。
「信じる」
「この灼熱を――!」
烈堂が頷いた。
次の瞬間。
公太の拳から、灼熱が一直線に放たれる。
――《灼獄》。
その力が、ついに完成した。
【唯我の修行場】
唯我は静かに剣を構える。
朧が低く告げる。
「剣に振られるな」
「お前が導け」
唯我は目を閉じた。
呼吸。
集中。
余計な感情をすべて切り捨てる。
「あぁ」
静かな返答。
次の瞬間。
剣が振るわれた。
音もなく空気が裂ける。
その一閃には、迷いがなかった。
――《龍焉刀》。
漆黒の刃が、本来の力を解放する。
【一祟の修行場】
風音の前で、一祟は静かに拳を握る。
「僕が怖かったのは……」
「自分の迷いだったんですね」
風音が微笑む。
「ようやく気づいたのね」
風が吹く。
まるで背中を押すように。
一祟はゆっくり構えた。
「もう迷いません」
その瞬間。
風が一点へ集束する。
拳が放たれる。
轟音。
空気そのものを切り裂く衝撃。
――《神威撃》。
ついに完成。
【そして――】
三人は、それぞれ答えへ辿り着いた。
ネオ・コードの本質。
それは――
己の恐れと向き合うこと。
迷いを越えること。
そして、自分自身を信じること。
力は完成した。
だが、本当の戦いは――
まだ始まったばかりだった。
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