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ももは
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虚無の波動
【ORVAS前線作戦区域 ― 夜】
崩壊した戦闘区域。
砕けたビル群の中央に、一人の男が立っていた。
漆黒の剣。
黒紫の波動。
そのオーラは空間そのものを歪ませ、地面に触れるだけで大気を裂いていく。
漆原隼人。
かつてORVASに所属していた男は、冷たい銀の瞳で畑中を見据えていた。
「畑中……」
「もう、お前には分からない」
低い声が響く。
「世界は変わる」
「正義も、秩序も……全部、壊れるべきなんだ」
次の瞬間。
隼人の剣から黒い波動が解き放たれた。
轟音。
空気が裂け、周囲の壁面が削り取られていく。
存在そのものを侵食するような力。
それが、“虚無”。
【A班 ― 前衛偵察】
瓦礫の陰。
ユリが小型スキャンユニットを飛ばしながら叫ぶ。
「ダメ! 波動中心から15メートル以内、“感覚遮断領域”になってる!」
「近づけば視覚も聴覚も持っていかれる!」
葛城が舌打ちする。
「けど、隊長が中にいる……!」
二人は敵工作員を排除しながら、必死に戦況を分析していた。
【B班 ― 後方支援】
後方車両。
中原がモニターを見て息を呑む。
「反応速度が異常すぎる……!」
「あれ、本当に隼人さんなのかよ……!」
坂口が即座に指示を飛ばす。
「エネルギー遮断弾、準備!」
「虚無波動の中断を狙うぞ!」
支援砲撃が夜空を切り裂く。
わずか数秒。
その隙を作るためだけの攻撃だった。
【C班 ― 畑中直属】
最前線。
真木が叫ぶ。
「畑中さんの動きが鈍った!」
「後ろは俺たちが支える!」
直嶋が両手を広げる。
「吸収フィールド展開!」
歪んだ空間がわずかに安定する。
だが、それでも虚無の侵食は止まらない。
畑中は前を見たまま、小さく頷いた。
しかしその胸には、迷いが残っていた。
かつての仲間。
救えなかった男。
その現実が、拳を鈍らせる。
【主戦闘 ― 畑中 vs 隼人】
隼人が剣を構える。
黒紫の波動が膨れ上がった。
「俺はもう、何も信じていない」
「だが、“壊す”ことだけは本物だ」
「お前の正義も、希望も――全部なァ!!」
轟ッ!!
虚無が炸裂する。
地面がねじれ、重力が狂う。
それでも畑中は踏み込んだ。
(吉岡を救えなかった)
(隼人も止められなかった)
(だが――)
(今度こそ)
畑中の視線が鋭くなる。
足裏の感覚。
空気の流れ。
敵の重心。
すべてを読む。
「虚無だろうと……見切る!!」
隼人の剣が振り下ろされる。
その瞬間。
畑中は逆に踏み込んだ。
鋭い回し蹴り。
狙いは腹部。
しかし――
黒い波動が逆流する。
ズバッ!!
畑中の腕が裂け、鮮血が舞った。
隼人の瞳が揺れる。
「空っぽだった俺に残ったのは、憎しみだけだった」
「アビスは、それを肯定してくれた」
畑中が叫ぶ。
「それは正義じゃない!!」
「ただの逃避だ、隼人!!」
虚無の衝撃波が放たれる。
畑中の身体が吹き飛びかけた、その時――
「隊長!!」
霧島が飛び込む。
転送型シールド展開。
黒い波動が弾かれ、空間に火花が散った。
膝をつく畑中。
荒い呼吸。
それでも、彼は立ち上がる。
視線だけは、一度も逸らさなかった。
(隼人……)
(お前を止める)
(虚無から引き戻す)
(それが俺の償いだ)
隼人がゆっくり剣を構える。
黒紫のオーラが荒れ狂った。
「止めたいなら――」
「超えてみろ」
「“虚無”をなァ!!」
次の瞬間。
戦場は再び、黒き波動に呑み込まれた。
― 激突は、さらに加速する
かつて背中を預け合った二人。
今、その拳と刃は互いへ向けられる。
救済か。
決別か。
その答えは、まだ誰にも分からない。