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5話
𝒈𝒐⤵︎ ︎
『染井吉野の呪いを持つ者を見つけ出し、心を開いてもらう』
その言葉を胸に、うりは神社を後にした。
しかし、彼の顔は晴れやかではなかった。神主は言った。
『墨染桜の呪いは、周りの人間からそなたの存在を忘れさせてしまう力も持っている』と。
たっつんの体調不良は、その呪いが既に始まっている証拠だった。
このまま他のメンバーに触れれば、彼らもまた、同じように苦しんでしまう。
そして、その先には、皆から自分の存在が消えてしまうという、恐ろしい未来が待っていた。
もう、誰かを傷つけるわけにはいかない。
うりは、一人で呪いと戦うことを決意した。
メンバーに気づかれないように。絶対に、彼らに触れないように。
そして、自分が消えてしまう前に、染井吉野の呪いを持つ者を見つけ出さなければならない。
シェアハウスに戻ると、ちょうどリビングでもふとなおきりが動画の編集をしていた。
うりは普段通りに「ただいまー!」と明るく声をかけ、しかし、彼らから一定の距離を保ったまま、そのまま自室へ向かった。
その日以降、うりの行動は変わった。
メンバーとのハイタッチを避けるようになった。
話し声が聞こえると、わざと別の部屋へ移動した。
もふが「うり、今日の動画のサムネ案、一緒に考えよ」と誘ってきても、「ごめん、ちょっと寝てなかったから、先に寝るわ!」と嘘をついて断った。
大好き なメンバーたちに、自分から壁を作っていく。
それは、うりにとって、何よりも辛いことだった。
それでも彼は耐えた。
みんなが寂しそうな顔で自分を見つめていることに、うりは気づいていた。
彼らが「最近、うりさ、よそよそしくない?」とひそひそ話している声も、耳に入っていた。
それでも、うりは自分を奮い立たせる。
これは、みんなを守るためだ。
そうやって、一人で孤独に耐えながら、うりは黒い桜が広がる左肩を、ただじっと見つめる日々を過ごしていた。
リビングでの談笑を避け、自室へと向かおうとしたその時だった。
「うり」
背後からかけられた声に、うりの足はぴたりと止まった。
その声には、いつもの明るさの中に、どこか心配そうな響きが含まれていた。
振り返ると、そこにはじゃぱぱが立っていた。
「……じゃぱさんじゃん。どうしたの?」
うりは努めていつも通りに振る舞う。
しかし、じゃぱぱはうりの表情から、その無理な笑顔を読み取っていた。
じゃぱぱは一歩、また一歩と、うりに近づいてくる。
うりは、反射的に一歩、また一歩と後ずさり、距離を取ろうとした。
「…ちょ、じゃぱさん。どうしたの?」
うりの声に、焦りがにじむ。
もし、じゃぱぱに触れてしまったら?
たっつんのように、彼も体調を崩してしまうかもしれない。
その恐怖が、うりの心を支配していた。
しかし、じゃぱぱは臆することなく、うりのすぐ目の前までやってきた。
そして、まっすぐうりの目を見つめ、静かに問いかける。
「…どうしたの、って聞きたいのは俺の方だよ。最近、みんなのこと避けてない?」
うりの口から、言葉が出てこない。じゃぱぱの目は、すべてを見透かしているかのようだった。
「なんか、あったんでしょ。一人で抱え込んでるんでしょ」
「そんなこと、ないって…!」
うりがそう言いかけた時、じゃぱぱは、ためらいなく、うりの左肩に手を置いた。
「あ゛っ…!」
うりの全身に、ズキリとした鋭い痛みが走った。しかし、それ以上に、心の奥底が悲鳴を上げていた。
「…!じゃぱさん、ダメだよ…!」
うりは、悲痛な声で叫び、じゃぱぱの手を振り払った。
じゃぱぱは驚き、うりの顔を凝視した。
「うり…?」
うりは、何も言えず、ただただ震えるばかりだった。
次の話少しじゃぱぱさん可哀想になるかも
🌸𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎