《クイーン•ギャンビット》
【回想】
時は1日前、ナイト•クラウンに女王ロカに
二通の手紙を渡された時間に遡る。
『国家転覆の兆しあり、首謀者はギャンビット』
その手紙をビリビリと破り捨て、
女王ロカは思案した。
動機は十分にあった。
それは女王ロカが いたずらに民を殺していること。
国を愛し、国土を愛し、国民を愛する
《シトラス王国の心臓》が、『悪政のロカ』を 討ち滅ぼそうと考えても何ら不思議ではなかった。
そして、女王ロカはおよそ6年間に渡り
容疑者達の弱点を観察し、観察し、観察終えていた。ロカはすでに 《シドニア国の
心臓》の弱点を正確に捉えていた。
ふわりとあくびをしながら、ロカは
右腕をギャンビットのいる方へ差し出し、
「征け。」
とギャンビットを捉えるために用意した駒達に命令した。
ギャンビットを捉えるために用意した駒は
王国が誇る屈強な騎士達などではなかった。
むしろその逆
「助けてください!!!」「死にたくない!!死にたくない!!」「帰して!!帰してよぉ!!」
「婚約者がいるんです!!!しにたくない!!!」
裸に剥かれ捉えられていた40人の少女達
は一斉にギャンビットに向かっていった。
その姿はさながら、大きなオオスズメバチに
襲いかかる大量のミツバチの群れのようで
あった。
「待て!!!女王陛下!!!話を聞いてくれ!!!!」
「話なら後で尋問しながらたっぷり聞いてあげるわ。」
そう言って、『悪政のロカ』はふわりとあくびをした。
ギャンビットは自らが持つ大剣に手をかけた。
襲いかかる数万の敵の群れにも
『シトラス王国の心臓』たるギャンビットは
勇敢に立ち向かっただろう。
ギャンビットは躊躇った。
例え女だったとしても、向かってくる敵国の兵ならば容赦なく 切り伏せただろう。
だが相手は、シトラス王国の、無辜之民、
しかも助けを求める無辜之民だった。
「……..くッ……..。」
こうしてギャンビットは40人の少女達に
覆い被さるように取り押さえられた。
『悪逆のロカ』の魔の手は『シトラス王国の心臓』 をしっかりと握りしめていた。
『シトラス王国の心臓』は動きを止めたか
のように思われた。
だが『シトラス王国の心臓』は再び脈動した。
『クゥイイイイイイインッ!!!!!!!!!!!!
ッギャンビットォォォォォォ!!!!!!!!!!!!』
王宮内全体に響き渡る馬鹿でかい声で
ギャンビットは叫んだ。
それは、ギャンビットに万が一のことがあった 場合の、緊急号令だった。
この号令は 女王すら知らない軍のトップシークレット中のトップシークレット、女王ロカはわずかに焦りの表情を浮かべた。
だが女王ロカはギャンビットの号令を聞いてもなお 称賛があった。
衛兵達の調査により 女王ロカの王宮内に抱える衛兵はおよそ4500人、ギャンビットの抱える軍はおよそ1500人であることをロカは知っていた。
これはギャンビットが軍のほとんどを 敵国への防衛に割いていたためにできた 三倍近くもの戦力の差であった。
お互いの抱える衛兵達はどれも女王ロカの
処刑を免れた精鋭揃い、となればあとは単純に 数の差がものをいう。
しかし相手は戦の天才にして《シトラス王国の心臓》ギャンビット、これ以上何かされる前に早めに潰すに限る。
そして『悪政のロカ』はふわりとあくびし、
悪辣に笑う。
あぁ、この計画犯をどのようにして
処刑しようかと。