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花月夜れん
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#異世界転生
しめさば
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森の北に着いたレンザンは、リーダー格のエルフの元に駆け寄った。
「状況はどうだ? 敵の数は?」
「レンザン先生、来てくれたんですね! 敵は天使種族だったものが3体と、他は狼獣人だったものが中心なのですが……人数は不明です。最低でも、20体はいるようです」
「ヒルの方は、どうだ?」
「ここまでで、3匹見つけて全て殺しています!」
「上出来だ。そいつらの方が、面倒くさいからな」
レンザンは魔法で転移した面々に、天使種族以外の殲滅を命じた。一緒に来たのは150人を超えているので、数では有利に見えるかもしれないが――敵があとどれくらい控えているのか、今はまだ分からない。
「我の訓練を受けた者も多いだろう。その成果を見せるとき――……皆、行くぞッ!!」
レンザンの言葉に、全員が大きく応じた。樹々は震え、ネブラたちは思わず怯んでしまう。そしてそのまま、勢いに任せてネブラを追い詰めていく。
宙に浮かぶ天使種族のネブラには、エルフたちが弓矢で応戦した。夜空に矢が飛び交い、エルフも何人か傷を負ったものの、天使種族は残り1体になる。
しかし、その天使種族のネブラは身体を膨れ上がらせ、身体から数匹のヒルを生み出した。サイズは少し小さいが、ヒルの魔物たちは地面に解き放たれ――
「――させんよ。……桜花――弧月」
レンザンの刀が紅色の半円を描くと、一瞬にしてヒルの魔物は宙で燃え尽きた。桜の花弁のような炎を散らせ、余韻と共に消えていく。
「すごい、一瞬で……! さすが、レンザン先生!!」
誰かの言葉と共に、歓声が巻き起こる。地面では多くの――狼獣人のネブラが倒れており、大勢は決したかのように見える。しかし、森の向こうからは未だに多くの気配が漂ってくる。
「油断はするなッ!! 続きが来るぞッ!!」
「「「「おおおおぉーッ!!!!」」」」
再び樹々が揺さぶられ、戦闘が再開される。オルトゥスの面々の士気は高く、それはまるで、無敵の軍団のようでもあった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
オルトゥスの中央には、簡単な指令所のようなものが作られていた。最初はリディアやヴェルガもいたが、今はアルマがひとりだけ――
「わたしひとりでは、さすがに不安……」
そんな言葉が口から零れる。北の森でも戦いが始まっているようで、時折、大きな声が微かに聞こえてくる。……敵は、自分たちに寄生してくる生物。何ともおぞましく、何とも嫌らしい――
「――ッ!?」
嫌な気配を感じて、アルマは咄嗟に身をかわした。先ほどまでアルマがいた場所には、ヒルの魔物が矢のように飛んできており――おそらく、彼女は奇襲を受けていた。
「こんなところまで……!? 森からここまで、かなり離れているのに――」
アルマはメイド服のスカートの中から、短剣を2本取り出した。それを両手に構え、ヒルの魔物に対峙する。ジリジリと距離を詰めて、一気に短剣で薙ぎ払う。
しかしヒルの魔物はそれをかわし、間を取るようにアルマのまわりを動いていく。そうこうしている内に、建物の影から2匹目のヒルの魔物が現れた。
「まさか、侵入経路が他にもあるの……?」
このままでは、さらに増えてしまうかもしれない。一旦どこかに逃げる――という選択肢もあるにはあるが、後から再び見つけるのにも時間が掛かる。その間に他の住人が攻撃を受けるかもしれないし――
「……確実に、1匹ずつ殺すッ!!」
アルマは一気に詰め寄り、ヒルの魔物を1匹、綺麗に両断した。そして近くにあった油を撒いて、即座に火を点ける。気色の悪い音を立てながら、魔物は炎の中で息絶えた。
「もう1匹は……どこに行った?」
目を光らせているつもりではあったが、見失ってしまった。必ず見つけ出して、殲滅しなくては――……そう思った矢先、建物の影からキングが現れた。
「ぼよんぼよんッ」
「……え? キング、あなた――」
キングの巨体は乳白色の綺麗な色だ。しかし、少し透けているその身体の中に……何かどす黒いものが浮いている。
「……もしかして、寄生されたの?」
「ぼよぼよ、ぼよん!」
「え? 逆に、倒したの? ……確かに、もう動いてないけど……」
「ぼよんぼよん」
「でも、そんなのを消化したら……リディア様に嫌われるよ?」
「ッ!! ……ぺっ」
キングはヒルの魔物を吐き出した。アルマはすぐに、油を掛けて燃やしていく。
「うん、よくできました。偉い偉い♪」
「ぼよんぼよん」
「――さて、わたしたちも少し動こうか。街に入った魔物がいたら、全部倒しておかないとね」
「ぼよよよんっ」
アルマとキングは中央に待機しながら、敵を探していくことにした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
南の森では、ドワーフたちが中心になって戦っていた。元が人間のネブラが7割、獣人のネブラが3割……といった具合だ。
「儂がドワーフの英雄、ザザである!! おらぁ、こっちに来やがれ!!」
「ザザ兄さん、いつの間に英雄になったんだ!?」
「あまり無茶はしないでくれよ!? 防具はただの保険なんだからッ!!」
ザザの斧が一閃した。ネブラが寄生すると、宿主の身体能力は上がり、加えて身体も硬くなる――それはリディアから聞いていた。しかしそれはそれとして、ザザの斧は敵を斬りまくる。
「ワシの手入れ油が、よく効いとるなぁ~」
「ワッチィの自爆装置、出番まだァ~?」
「ゾゾぉ!! 絶対に使わねぇからなッ!!」
どこか能天気ではあるが、ザザは強かった。技術は荒い。しかし、単純な戦闘力であればレンザンに次ぐかもしれない。
「ねぇ~。アタシの工房、ヒルみたいのが来たんだけど……」
「おう、ベロニカ! お前も立派な足があるんだから、ちったぁ手伝え!!」
「はぁ? いくらなんでも、あんなヒルを踏むのは嫌よッ!!」
魔物を踏んだときの感触を想像して、ベロニカの背筋には寒気が走った。ズズはそんなベロニカを手招きで呼び、そのまま戦線から離れていく。そしてふたりが戻ってくると、ベロニカの8本の足にはそれぞれ……金属製の靴、のようなものが着けられていた。
「……何だ、それ?」
「何だとは酷いな、ザザ兄さん! ベロニカによく似合ってるじゃないか!!」
そう言うベロニカは、何故か照れている。
「お……。ズズ、ついにか……!」
「ズズ兄さん……、漢だぜッ!!」
「……ああん?」
ジジとゼゼの言葉に、ザザは何も理解できない。
「やだなぁ、ザザ兄さん。ラブだよ! ラブ&ピースだよ!!」
「あんたら、うるさいっ!! これはただの武器! アタシ用の武器なだけよッ!!」
そう言うとベロニカは、ネブラたちに突進していった。突進の際、激しく動かした8本の足に――ネブラたちは巻き込まれ、転倒させられ、身体を貫かれていく。
「ああ……。ベロニカ、素敵だ……」
「ズズも、やかましぃーッ!!」
――そんな彼らを見ながら、ヘルミナはデュランと一緒に戦っていた。
「何か……素敵ですね?」
「ドワーフとアラクネが、ねぇ……。こんな光景、オルトゥス以外じゃ見られねぇぞ?」
「あはは、確かに♪ でも、このまま……最後まで、戦えるでしょうか」
「西にはリディアが、北にはレンザン先生がいるから大丈夫だろ。心配をするくらいなら、俺たちは南をしっかり守らないとな」
転移魔法で西から来た戦力も多く、ひとりひとりは弱いながら、何とか持ちこたえている。傷を負った者もいるが、シャロンが治癒魔法を使い、フェルネを始めとしたドライアードが救護に当たっている。緊急時に備えて、ヴェルガも上空で旋回を続けている。
「はい、そうですね――……ひゃうんッ!?」
「どうした? 急に色っぽい声なんか出して」
「い、色っぽくなんてないですよぉ!?」
ヘルミナは突然の寒気を感じた。その元となる方向を見ると――西の森の方角だった。そこにはリディアとシオンと……あとは20人程が、いるはずだ。
「……リディアさん、大丈夫でしょうか」
「大丈夫だって言ってるだろ。リディアなんだから」
あっけらかんとしたデュランに、ヘルミナも笑ってしまう。
「そうですね……。何と言っても――本当に、強い人だから」
……だから、きっと勝つ。自分たちも、ここで勝つ。
祝勝会のご馳走は何かなぁ――……ヘルミナは、ついついそんなことを考えてしまった。
コメント
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成瀬りんさん、第29話読了です!今回はオルトゥスの面々が総力戦でネブラに立ち向かう姿が熱かったですね。特にレンザンの「桜花・弧月」が一瞬でヒルを焼き尽くす描写、刀の軌跡が桜の花弁のように散る情景が美しくて痺れました。一方で指令所に残ったアルマがキングと連携してヒルを処理する場面は、戦闘の緊張感の中にほっこりする温かさがあって好対照。ドワーフたちの賑やかな会話も相変わらずで、シリアスになりすぎない絶妙なバランスが心地よかったです。次回、西の森のリディアたちの戦いがどう描かれるのか、とても楽しみにしています!