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「……いや…」
かつての怯えた思いが湧き上がり、首を左右に振りたくると、
「……しっ」と、私の唇に彼の指があてがわれた。
「私に、全てを預けなさい」
迫り寄る端正な顔に、抗うこともできない一方で、
唇に触れた指先に以前とは違う労りが感じ取れて、目を離せないでいると、
目の前に迫った彼の薄い唇から、ふぅーっと吐息が吹きかけられて、まるで眠りに誘われるかのように目蓋が下りた。
「……口づけが、ほしいですか?」
耳元へ、低く声が誘いかける。
「……あ…ぅん…」
喘ぐような声しか出せない私の唇に、ちゅっと音を立てて吸い付いて、
「ちゃんと言ってみなさい」
長くしなやかな指先で、くっと顎を持ち上げる。
「して……キスして、ほしい……」
「……よく、言えましたね」
私の答えに、彼は口角を薄く引き上げ満ち足りた笑みを浮かべると、啄むようなキスを幾度となくくり返し落とした。