岩影中心
岩影 及国
細かいことは気にしない!
※本作品とお名前をお借りしている作品との関係は一切ございません。
岩泉side
お前の好きな人はあいつで、あいつの好きな人はお前だと。
そんなことは既にわかっているはずなのに、考えるだけで胸が苦しくなるのはなぜだろう。
『俺、トビオのこと好きになっちゃったかも…』
最初は及川徹に。
『岩泉さん…実は、俺及川さんのこと……』
2回目は影山飛雄に。
もう散々だと思ったのに、繰り返した。
及川と影山がお似合いなことぐらい、そして2人がお互いを好いていることぐらい、誰が見てもわかったし、俺もそれは分かっていた。
…そう、わかっていたのに。
及川には、いつだって勝てないことぐらいわかっていた。
それでも、彼は決して、彼は天才ではなかったが。
それは、バレーボールやそれ以外のスポーツでも、恋でも、顔面偏差値でも、コミュ力でも、…性格の悪さでも、どんなことでも。
それでも、俺は隣に居続けようと思った。
それぐらい…癪には障るが、大事な友だと思った。
思ったからこそ、彼らの恋を応援しようと思った。
あいつらがくっついた方が幸せになる人も多いだろう、って確信していたこともあるし。
…また、俺は今実感している。
“運命は変えられないんだ”と。
恋とは怖いものだ。
色々なことを乗り越えてきてできた、がっちりと固められた友情という名の壁でさえ、一瞬にして壊してしまうのだから。
俺は、及川にも影山にも、はたまた他の誰かにも、この事を伝えるつもりはない。
伝えてしまえば、この運命とやらの思い通りに俺たちの友情は砕け散る。
そうすればあいつらとは、バレーもなにもできなくなる。それだけは嫌だった。
なのに。なのに…
「岩泉さん、俺、岩泉さんのことが好きです」
「え、」
なんで俺が影山に告られてんだよ、
「急なのはわかってます、!」
「あと、岩泉さんが及川さんのこと好きなのも…!だけど、岩泉さんもう少しで卒業だし、この気持ちを伝えておかなきゃって…思って、それで…」
あわあわしている影山になんて返せばいいのかわからず、こちらも同じような心境になっていた。
ん?ちょっとまて、岩泉さんが及川さんのこと好きなのも…!って言ったか?
…は?え?
「影山、お前勘違いしてるみてぇだけど、俺は別に及川のことなんて好きじゃねぇよ、あれは恋愛対象外だ。ただの幼馴染」
「……え、そうだったんスね」
そう言って、キョトンとした顔になる影山。
くそっ、かわいい。
「だいたいなんであいつに惚れなきゃいけねぇんだよ……てか、俺は、あいつのことを好きなのは影山の方だと思ってた」
「いや、それはないです」
思っていたことを話してみるも、それは間違いだったらしい。
否定されてしまった。気まずい。
「ないん、だな…」
…なぁ及川。
「…で、俺と……」
お前がどれだけ他の人に先越されて、そのプライドを傷つけられたか、そんなの数えられないほどあるよな。
俺は、ずっとそれを見てきたし、感じてきた。
「つ、つき…あって…くださ、い」
お前がどれだけつらかったか。いつも、お前の相談にのってたのは俺だ。
「…影山」
だから。
「はい」
「俺は、影山のことが好きだ」
だからさ。
「は、い」
「でも…ごめん、お前のことが好きだからこそ、お前とは付き合えねぇんだ、」
俺たちは、ずっと友達だろ?お前にも影山にも、幸せになってほしいんだ。
「…はい」
「ごめんな」
最後に、君には悲しみの込めた笑顔を。
「…は、い!大丈夫です!」
そんな顔、しないでほしかったのに。させるためにこんなことしたわけじゃないのに。なんで、
「じゃあ、失礼します」
「…おう」
影山は、1度背を向けて走り出そうとしたが、すぐにやめてこちらを向いた。
その顔を見るには少し気まずさがあったが、見ないと時間が進まないような気がして、視線を床から彼の顔へと移動させた。
「なぁ、じゃあ俺に、及川が好きって言ったのはなんだったんだよ」
「…?」
聞いてみるも、はてなを浮かべられる。
「……」
もしかして、ただ俺が話聞いてなかっただけなのか…?
「…岩泉さん。」
「あなたはこれからも、優しくて強くて大好きな、憧れの先輩です」
その顔は、笑顔だった。
あぁ、こんなに素敵な後輩を持ったんだなと、このとき改めて実感した。
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