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3 - 第3話 白塩化の世界

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2025年08月14日

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夢を見た。最初は夢だと分からなかった。目が覚めると僕はいつものベッドで寝ていた。見慣れた景色に見慣れた空間が広がっていた。

日の光を部屋に入れるためカーテンを開けると信じられない光景が目に入った。窓を開けて温度を確かめようとしたが体が何かを拒んでいる感覚を訴える。

テレビをつけるとニュースがやっていた。

「赤い竜と白い破片が落ち謎の感染症が流行って三ヶ月が経過。白塩化人数は一万人以上を観測しています。未だ治療法は見つかってはおらず政府からは不要な外出は控えるよう外出制限が発令。」

赤い竜?白い破片?。白塩化?どうやま僕はまた嫌な夢に迷い混んだようだ。夢の世界の主人公ならちょっと外に出ても大丈夫のはず。なんて根拠のない事を考え扉を開ける。感染症にかかる人ってこういう人が多いのかもしれない。

外に出るとさっき窓で見た時よりも白いもやが広がっていた。それにこの匂いは塩だろうか?。これは無理そうだと判断した僕は家へと引き返した。

しかし家にいてもすることがない。仕方ないのでテレビを見ることにした。とは言うもののどのチャンネルをつけてもニュースばかりで面白そうな番組はやっていなかった。まあ当然ではあるけど。しかしばらくニュースを見ているとある光景が目に止まった。

白い何かが町で暴れ回り辺りはめちゃくちゃ。さらに町中は白く染まった人の遺体が横たわっている。これが白塩化状態なのか?。

ピンポーン

こんな時に誰だろう。僕は防犯カメラで確認すると軍隊らしき人がたっていた。僕は恐る恐る鍵を開けノブに手をかけたとたん、向こうからものすごい力で扉をおしてきた。

「お前の家の食料と水をよこせ。」

どうやら軍隊に変装した略奪者のようだ。相手の力は強く押し負けそうになった時だった。

「お前、そこで何をしている?。大人しくしていれば国から食料と水は支給される。」

扉の除き穴から様子を見るとガスマクスをした本物の軍隊が軍隊の変装をした偽物を取り押さえていた。

「ちっ分かったよ。」

男はぶつくさ言いながら去っていった。あの白い空間の中無事に帰れるのだろうか?。

「大丈夫か?。最近こういうやからが増えている。お前も気を。」

男の声がピタッと止まる。僕は心配になり扉を開けた。この先では男が胸を押さえていた。僕はあわてて男に駆け寄ろうとすると。

「さわるな。どうやら俺も観戦してしまったらしいこのガスマスクと専用のゴーグルをやる。避難所はこの家の後ろにある学校だ。」

男は必死に何かを押さえつけている様子。僕はもらったガスマスクとゴーグルをつけ学校を目指した。僕の家の前では男が雄叫びをあげていた。

学校が見えると緊急避難所と書かれた看板が見えた。や学校の玄関の扉を開けると数人の軍隊が武器を構え立っていた。

「どうやら完成はしていなさそうだ。よくここまできた。もう大丈夫だ。」

軍隊の人は温かく僕を歓迎してくれた。避難所の様子はテレビで見た光景のままの風景だった。僕は空いている場所に腰をかけようとした時、となりの女性に抱かれた赤ちゃんが僕を見て泣き出した。

「ごめんなさいね。大丈夫だからねえ。よしよし。」

お母さんは大事そうに赤ちゃんを抱いている。やっとまともな光景を見られた気がする。白塩化だの急に暴れまわる人だの今いるこの世界はまともとは思えない。だけどやっと出会えたまともな光景は神秘的にも見える。

「貴方もレギオンの驚異から逃げてきたの?。」

レギオん?。さっきの凶暴化した人間の事だろうか?。

「白塩化には二つのパターンがあるみたい。一つはレギオンとなり暴れまわる。もう一つは塩のかたまりになってしまうタイプ。」

中々恐ろしい症状だ。しかしなぜその白塩化が流行りだしたのだろうか?。もっと詳しく話を聴こうと想った時だった。

「キャー。」

叫び声のする方を見ると女性が白いかたまりになっていた。これが白塩化か。

「うわー。止めてくれ。」

おいうちをかけるように事態は動き出す。一人の男が一人の男に噛みついていた。僕は男を助けようとしたその時。

「どりゃぁぁ。」

一人の男が凶暴化した男に向かって鉄パイプを振りかぶる。

「おい、しっかりしろ。」」

男は噛みつかれた男を起こそうとする。その男はさっき僕の家に来て扉をこじ開けようとした人だった。

「あっ、お前はさっきの。」

男が僕を見たその瞬間さっき噛みつかれた男がシャトーという声を出しながら男に噛みついた。

「何をするんだ。止めろ。」

男は噛みつく男を突き飛ばすと傷を押さえながら叫んだ。

みんな今すぐ逃げろ。噛みつかれるとしゃれにならないぞ。くそ。」

避難所はまるでドラマのワンシーンにありそうなパニック状態。

「そこの軍人さんよ。俺が正気を失う前に今すぐ俺を殺せ。」

僕の家であんな事をしたのに僕の想っている以上に男はまともだった。いや、むしろ逆だ。自分から殺せと言う人をまともだと想っていいのだろうか?。

「オギャー。」

赤ちゃんの泣き声のする方を見るとさっきの女性の抱いている赤ちゃんが泣いていた。女性はあやすように赤ちゃんを揺らすと赤ちゃんは女性の顔に噛みつく。

「キャー。そんな。うちの子まで。」

事態はどんどん悪い方向へ進んでいく。噛みつかれた女性は赤ちゃんを抱きながら暴れだす。

「ああ。私の可愛いまゆちゃん。ママが守ってあげまちゅからね。」

女性の目は赤色へと変わる。あれがレギオン?。女性は赤ちゃんを抱き笑いながら暴れまわる。そして僕を見つけると鋭い歯を向けて走ってくる。あれに噛みつかれたらまずい。僕は避難所の出口を目指して走った。女性は人間とは思えない速さで走ってくる。

出口はもうすぐというところで僕は女性に捕まってしまった。

「まゆちゃん。そろそろご飯のお時間でちゅね。たくさん食べて大きくなりましょうね。」

女性の歯が僕に向かう。もうだめだと想った時だった。

「どりゃぁぁ。」

僕の家の扉を開けようとした男が女性に向かって体当たりをする。

「何をしている。早く行け。」

男の目は赤い。既にレギオン化している。それなのにどうして自我を保っていられるのか?。

「俺に構うな。こんな化け物になっちまって俺はお前とは行けない。だからとっとと行け。」

僕は出口に向かって走る。女性は起き上がり私を捕まえようとするが男は行かせまいと立ちふさがる。僕が出口にたどり着くのを確認すると大きい声で叫んだ。

「へへへ。これでかりは返したぜ。俺の分まで生きろよ。」

扉の向こうではレギオンたちが暴れまわり、扉の外ではすすり泣く人たち。僕の目からも涙が溢れていた。恐怖の涙と悲しみの涙。男が僕を助けさえしなければ男を嫌いなままでいられたはずなのに。涙で景色が歪んで前も後ろも分からない。


目が覚めふと僕はいつものベッドで眠っていた。ずいぶんと恐ろしい夢を見た。フィクションとはいえもう見たくないと思った。

だけどあの夢を通して人の可能性を感じた気がする。あんな狂った世界でも人の優しさを感じられた。だから僕は絶望に押し潰されずいられたのかもしれない。

お腹も空いたし考えるのは止めた。窓の外はいつもの町の景色が広がっていた。

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