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ああ、その真っ赤な炎が。
夕日のように強く輝くお前の命の光が。
とても、愛おしい。
「おれが技出すところなんて別に貴重でも何でもねェだろ?なんでそんな見つめてくんだよ」
「……いや、羨ましいなと思っただけだ」
「?」
「オレの能力は死神の力を借りてる。だからお前みたいに、熱く、紅く、生を知らしめることなんて出来ねェからな」
オレの食べた悪魔の実はヒトヒトの実だった。
ただのヒトヒトの実ならまだしも、幻獣種で尚且つあのギリシア神話に名高い死神『タナトス』の能力を手に入れてしまったのだ。
いつの間にかオレの周りから人は去っていった。
死神を宿したやつと一緒にいるなんざ、いくつ命があったとて命を取られまいと逃げ出すだろう。
オレも初めはそう思っていたし、正直今でも思っている。
そんなオレを拾ってくれたのが、おやっさんだった。
おやっさんはこんな忌み嫌われたオレを、否定することも突き放すこともせず
『行く宛がねェんなら、俺の船に乗れ』
なんて大それた事を言うもんだから、初めて出会ったときは流石に度肝を抜かれた。
でも今ではとても感謝している。
「でもよ、おれはお前のその能力カッコよくて好きだぜ?」
「……ありがとうな」
そう呟いてエースの頭をワシャワシャと撫でてやると犬のように手に頭をグリグリと押し付けてきてもっともっとと強請ってくる。
「悪ィ、夕飯になったら呼んでくれねェか?
多分ずっと部屋にいるからよ」
「お?おう……」
じゃあまた後でと言い残して自室に戻る。
毎日毎日自室に篭っては、掃除をするでも何か読書をするでもなくベッドの上で脱力する。
オレは知っている。
この世界は四十九人の人間が庇っても、
残りの五十一人が糾弾したならば、それは悪になり得ると。
だから誰も信じられない。信じたくない。
どうせ裏切られるなら、最初から期待などしなければいい。
そうやって、自分の心を護ってきた。
だけれどここはとても居心地が良くて、つい甘えてしまう自分がいるのもまた事実なのだ。
「……だから家族ごっこは嫌いなんだ」
自分に言い聞かせるように小さく言葉を吐き捨てて、ベッドに身体を沈めた。