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深瀬視点
「そういえば高音はどうなったの?」
「んえ?」
それは何気なくしたつもりの会話だった。
最近はギターコードの勉強で楽屋を訪ねてくるばかりで、
声出しを何故か俺の前でしなくなった。
ボーカルの練習は必要ないのかどうかを聞いただけなのに、
彼に何ともいえない表情をされた。
「あー⋯⋯はは、
そう、
ですねぇ」
怪しい。
あからさまなほど急に歯切れが悪くなった。
まるで何かを誤魔化すみたいに言葉を濁す様子を見て、
優里さんほどはっきり分からずとも、
何かを隠していることはわかった。
まさかとは思うが、
リハビリをサボっているのはではないよな?と一瞬疑うが、
彼は音楽に対して人一倍真面目だったためそれはないだろう。
そうだとしたら一体何を隠しているのか。
こう言う時に優里さんがいないと困る。
彼のことに関して優里さんほど知っている人がいないからだ。
彼の隠し事を何で判断しているのか、
優里さんはいつも一瞬で見抜いていた。
「たっくん⋯⋯もしかしてリハビリどころか、
帰国してから病院に一度も行ってないとかは流石にないよね?」
⋯⋯⋯⋯⋯⋯何故か返事がない。
え?
一つの可能性を思いつきで口にしてみたが、
この反応はまさか本当にそうなのか?
嘘だろ。
あ、
そういえば⋯音楽は真面目だが、
大の病院嫌いだったなと思い出す。
全くもって手の焼ける後輩だ。
「僕がついていってあげるから、
一緒に病院に行こう?」
「は⋯い」
どうにか説得して病院の前まで来たが、
やはり尻込みしてしまうのか、
彼は一歩も動けなくなってしまう。
自分を落ち着かせるためか、
彼が深呼吸を繰り返す。
その表情は不安げに揺れて強張ったままだ。
すると僕の手に彼はそっと、
遠慮がちに指先だけ触れた。
「手を握っててほしい。
だめですか?」
縋るような目で訴える。
そんな顔をされて断れる奴がどこにいるのだ。
僕が笑顔で返すとようやく安心したように、
少しだけ表情が和らいだ。
俺は解けてしまわないように、
彼の手を少しだけ強めに握った。
「結論から申し上げればあまり芳しくはありませんね」
そう深刻そうに彼の主治医が告げる。
リハビリを全くしていないのだから、
当然の結果なのだが、
検査結果を聞くのが怖かったのだろう。
俺の手を握る返すその手は震えていた。
今後はどういったサポートが必要になるのか?など、
リハビリ治療以外で、
俺ができる限りのことを聞き出して、
その日の診察は終わった。
「ああぁっ〜⋯⋯緊張した」
「不自然なくらいガチガチだったもんね」
「優里さんに頼もうかと思ってたら、
今ツアー中だったなって⋯⋯⋯でも、
一人じゃ多分ムリかもって思ってたから助かりました」
彼が人を頼るときはいつだって最初は優里さん、
その優里さんがつかまらなかったら、
俺といった感じで頼ってはくれるが、
あくまでも『優里さんの代わり』だ。
そういう所でもやっぱり、
彼は優里さんしか見ていないということがよく分かった。
まあ無理のない話だ。
彼が以前「関係は年数だけではない」と話したこともあったが、
過ごした時間の長さはやはり大きい。
優里さんとは7年の関係があり、
俺とは僅か3年だ。
その4年差が恨めしく思えてしまう。
ねえ、
優里さんじゃなくて俺だけを頼ってと、
もし伝えられたら何て答えてくれる?
(そんなこと怖くて聞けないよな)
雫騎の雑談コーナー
はい!
リハビリの描写が全くありませんが?
ええそうですとも。
またポカしておりましたから。
だから言い訳と称してそもそも通院して無かったことにして、
当初よりは設定を大幅に変更してお届けしております。
あとね昨日は金曜日で魔の週末ということもあり、
屍化しておりまして、
1話しか公開できておりません。
申し訳ないです。
これからは定期的に2〜3話を目標にしますので、
どうかかご勘弁を🙇
そんじゃ本編ね〜
そもそもリハビリすらしていなかった星崎を、
優しく説得して付き添う深瀬さんと言った、
ほのぼのストーリーですな。
俺ねこれめっちゃ分かるんですよ。
「病院が好きな人はいますか!?」
って話じゃないですか。
注射は痛い、
院内は変に薬品臭くて気持ち悪い、
検査はたらい回しが基本、
診察自体はものの数分なのに謎に長い待ち時間、
好きになれる要素ないわ!!
という心の叫びでございました。
ではでは〜