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「保科」
書類仕事中、いきなり亜白が話題を切り出した。
「…なんでしょう」
「最近、第1との合同訓練が少ないとは思わんか」
「…?」
そういえば少なくはなっている。
それはそうとして、それを亜白が言い出すのは違和感だった。
「なんでですか?」
亜白は重要書類に印を押す手を止めた。
「書類仕事よりもそっちのほうが楽かなぁ…と」
「…はい、疲れてますね。休んだらどうですか」
「そんな速攻心配しなくても」
積み上がった書類をなぎ倒したい欲に駆られつつ、はんこをケースに収める。
パチン、と音がやけに大きく部屋に響いた。
「で、どう思う」
保科はしばし考え込んだ後。
「まぁ悪くないんちゃいます?息抜きにもなりますし…隊長に書類なぎ倒されたら困りますしねぇ」
「…」
亜白がすっ…と目をそらす。
バレてた。
さすが保科。
「せっかくだし…射撃訓練でもやるか」
嬉々として書類を片付ける亜白。
保科は割と笑えないと言った様子で答える。
「なに第1に死人出す気ですか?」
「死…人…?」
「あかんこの人自覚がない」
保科が模擬刀でも(何をとは言わないが)普通に叩き切れるのと同じように、亜白も訓練用の銃でも威力は十分に出る。
人に向けたらなんらかの法で裁かれる程度の威力は。
「お前だってこの間模擬刀で人形切るチャレンジして無事成功してたじゃないか」
「それとこれとは話がちゃいます」
巧みに話をずらす保科。
「ずらしたな」
あっさりと保科の技を見抜きながら亜白はすでに電話を手に取っていた。
ワンコール。
ツーコール。
スリーコール。
保科の表情が呆れたものに変わっていき、ついに、おおよそ見当のついた電話の向こうの相手に塵を見るような目を向け始めた時。
やっと電話がつながった。
「…なんだ」
低くざらつく不機嫌そうな声。
言わずもがなの鳴海だった。
「ボクは今忙しいんだ」
現在進行系で電話の奥から聞こえるゲーム機の音。
「どうせゲームでもしているんだろう」
亜白が火力高めの一撃を平然と繰り出す。
「うるさいな。ボクがどう過ごそうがボクの勝手だろ。…で、何の用だ」
とにかく機嫌の悪い鳴海。
「あぁ。最近、第1とこっちの交流が少なくなった気がしてな。久しぶりに合同訓練といこうじゃないか」
電話の向こうがしばし沈黙した。
ゲームの音が消える。
保科はあれ〜珍しい。鳴海隊長がゲームの電源落としたぁ…と内心とても驚いていた。
「珍しいな、お前がこっちを優先するなんて」
亜白が全く同じ感想を述べる。
「まぁな。ボクだってそういう時もある。何より、面白そうな話に乗らん手はない」
面白そう…?
亜白の頭上にはてなマークが浮かぶ。
「本当に珍しい。あの鳴海でも積極的に第三と関わろうとするんだな」
「あ?どの鳴海だよ、どの」
「亜白隊長…そこまでにしときましょう…」
保科が制止に入る。
あの人を煽るとろくなことがない。
ましてや、亜白には煽ってる自覚すらなさそうだった。
「…そうか。切るぞ」
「は!?まて亜白…」
言い切らせずに電話を切る。
こういうとこも面白いんよなぁと見物する保科。
約束だけは取り付けたもののそこから進展のなかったこの話は、後日保科と長谷川の裏方組の手によって詳細を詰められ、もともと多忙な隊長達にさらに追い込みがかかったのであった。
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#鳴海弦
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