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「なんで、助けたの…?」
柊磨が目を見開く。私が言ったことの意味がわからないのだろう。私も分からなかった。なんでこんな言葉が出たのか、頭が混乱していた。
「とりあえず帰ろう。これから夕立が降る」
手を引っ張られて帰る。何故か少し抵抗してしまった。初めて会った時と同じ感覚に陥る。なんで私に優しくするの。なんで私を助けようとするの。なんでなんでなんで。そんな疑問ばかり浮いてしまう。
「悠磨、帰ったぞ」
「魁ちゃん!ありがとう柊磨、本当に、無事でよかった」
抱きしめられる。なんで。私はあのままあの人に身を委ねようとしていた。それが私への罰だから。勝手な思考を持つ私の罰だと思っていたのに。
「魁ちゃん…?どうしたの、やっぱり怖くて」
「俺たちはお前が大切だ。だから助けた」
「…どういうこと?」
柊磨がさっきのことを説明する。私はずっと下を向いたままだ。
「…魁ちゃん、幸せになっていいんだよ?」
「なんで、お兄ちゃんを殺したような私がお兄ちゃんに助けを求めて、そんな人が幸せになっていいはずがない」
全て言った気がする。それも断定した言い方で。
「…不安になっちゃったんだね」
「…え?」
悠磨の言葉に顔を上げる。
「きっと、自分の心が揺らいでるんだよね。大丈夫、人はそういう時期があるよ。魁ちゃんみたいな年の子は」
「違う!そんなのじゃない!」
「なぁ、兄貴に助け求めて何がいけねぇんだよ」
急に柊磨が割り込む。腕を組み、真っ直ぐと私のことを見ていた。
「だって、私はお兄ちゃんを」
「殺してねぇって何回教えればわかるようになんだよ」
「ちょっと柊磨…!」
悠磨が柊磨に口を出そうとする。その前に柊磨は続けた。
「俺もな、ガキの頃悠磨とクソ喧嘩した。其れこそ死ねなんて言った。でもな、ちょっと経って俺が年上のヤツらにボコられてた時、悠磨が助けてくれたんだよ」
「そんな事もあったっけね」
「…それがなに?ただの兄弟愛じゃん」
「あぁそうだ。なんで兄貴は暴言吐いた弟助けたのか?それは兄弟愛があるからだよ。下の奴は兄貴姉貴頼って当然なんだよ。そこにどんな経緯があったとしてもな」
上の子は下の子を守るのが当然。下の子は上の子を頼って当然。そんな、時代に合わない理屈を何度も口ずさむ。
「兄に頼ったらいけない妹なんて、存在するわけねぇだろ」
「…ごめん、助けに来てくれたのに。ありがとう 」
柊磨も悠磨も、私のことをずっと支えてくれる。何度も落ちそうな私を引っ張りあげてくれる。そんな2人が大好きで、申し訳なくて、幸せだ。