テラーノベル
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💛 「……よし」
朝の自室。
吉田仁人は、机の上に置かれた黒い学ランを見下ろしていた。
きれいに洗濯して、皺が残らないように丁寧に畳んだもの。
東明高校の制服。
本来なら、敵校の人間から借りたものなんて、さっさと返して終わりにすればいい。
それだけの話だった。
なのに。
💛 「…………」
💛 「なんで俺、こんな丁寧に畳んでんだよ」
自分で自分に腹が立つ。
あの日、雨の路地裏で助けられた。
知らない相手だった。
敵校のトップだと知っていた相手だった。
それなのに、あいつは何も聞かずに傷の手当てをして、温かい飲み物まで買ってきた。
しかも、学ランまで貸した。
💛 「……借りたもん返すだけだろ」
そう。
借りたものを返す。
それだけ。
💛 「別に、会いに行くわけじゃねえし」
自分に言い聞かせるように呟き、仁人は学ランを鞄に入れた。
その瞬間。
❤️ 「おっはよーございまーす!!」
💛 「うるさ!!」
❤️ 「朝から!? 俺まだ何もしてないんだけど!?」
💛 「声がでかい!」
❤️ 「えー、いつものことやん!」
舜太は仁人の机に肘をつき、ふと鞄を見た。
❤️ 「……ん? なにそれ」
💛 「何が」
❤️ 「鞄、いつもより膨らんでるやん?」
💛 「気のせい…」
❤️ 「えー、なに? 教科書? お菓子? まさかラブレター!?」
舜太が犬みたいに目をキラキラさせて覗き込む。
💛 「…お前の頭ん中、年中春かよ」
ここは絶対にバレたらいけない。
❤️ 「ひどっ!」
舜太は大げさに胸を押さえたあと、ふいに何かを思いついたような顔をした。
❤️ 「……あっ。もしかして、あの東明の佐野関係?」
💛 「…………」
❤️ 「えっ、図星!?」
💛 「違う」
❤️ 「今の間は何!?」
💛 「違うっつってんだろ!!」
❤️ 「はいはい。わかったわかった」
全然わかっていない顔で、舜太はにやにやした。
❤️ 「いってらっしゃーい」
💛 「どこにだよ!」
❤️ 「東明高校♡」
💛 「ぶっ飛ばすぞ!!」
❤️「言い慣れてない仁ちゃん可愛いなぁ〜」
そう言い残して教室を後にする。
朝から最悪だ。
……いや。
本当に最悪なのは、否定した瞬間に、佐野の顔が頭に浮かんだことだった。
❤️「……でも、不安やなぁ」
佐野の噂を聞く限り、いい噂は聞いたことがない。
❤️「もし仁ちゃんに何かあったら…俺が絶対許さへんから」
🩵 「……なあ、勇斗」
🩷 「ん?」
🩵 「お前、さっきから何回時計見てん?」
🩷 「見てねえよ」
🤍 「今ので六回目」
山中柔太朗が冷静にツッコむ
🩷 「数えんなよ」
🤍 「いや、気になるじゃん。授業中も見てたし」
🩵 「もしかして、誰か待ってるん?」
🩷 「待ってねえ」
🤍 「じゃあ、なんで昨日からずっと機嫌いいの?」
🩷 「俺、いつも機嫌いいだろ」
🤍 「いや、いつもはもうちょっと人間に興味なさそう」
🩵 「わかるわぁ」
🩷 「お前ら、俺のことなんだと思ってんの?」
🤍 「人の学ランを敵校のトップに貸す男」
🩵 「しかも、手当てまでしてあげる男」
🤍 「ついでに温かい飲み物まで買う男」
🩷 「……困ってたからだろ」
なんでこいつらここまで知ってんだ…、?
🤍 「へえ」
🩵 「優しいなぁ」
🩷 「うっせ」
勇斗は頬杖をついた。
別に、あの吉田仁人がどうなろうと知ったことではない。
……いや、無事に学校に着いたのかくらいは気になった。
傷は悪化していないだろうか。
あの性格だ。誰かに心配されても、どうせ「余計なお世話だ」とか言って突っぱねるのだろう。
🩷 「…………」
🤍 「また考えてる」
🩷 「考えてねえ」
🩵 「ねえ勇斗。もしその吉田が、学ラン返しに来たらどうする?」
🩷 「……は?」
🤍 「いや、借りたもの返すのは普通じゃん」
🩷 「…………来るわけねえだろ」
そう言った直後。
校門の方から、ざわざわと声が聞こえた。
「え、あれ西陵の……」
「吉田仁人じゃね?」
勇斗が顔を上げる。
そして。
校門の向こうに立っていたのは。
💛 「…………」
黒い鞄を片手に、ものすごく不機嫌そうな顔をした吉田仁人だった。
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コメント
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続きもますます気になります!
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