【ねろ視点】
七海母「な、七海……?」
先生「お母さん、説明をお願いします」
めーやさんたちの相手をしている場合じゃないと思ったのか、先生がソファーに座り直し、宵崎の母親にも座るよう促す。
俺も泣きじゃくる宵崎の隣で、彼女の背中をさする。そのまわりにめーやさんやプテ、アベたちも集まってきた。
宵崎に全部言われて、反論できる余地はなかったのか、座って下を向いたまま口が開かれない。
先生「娘さんの言ったこと、間違いないんですか?」
七海「し、椎名先輩?」
あの後、宵崎の母親は何も言わず、先生はそれを肯定と判断した。
プテの、「責任、取ってもらいますよ」という一言から、教育委員会との話し合いが行われた。極道もんが言うから殺されるんかと思ったわ。宵崎は児童施設に預けられる話が出たが、それを聞き付けた俺の母親が宵崎を引き取るとかいう提案をしたおかげで、今俺の家に宵崎がいる。
ねろ「ん?」
七海「こんなに食べれないですけど……」
ねろ「頑張れ〜」
七海「えっ?!」
宵崎と暮らすようになって気づいたことが1つある。宵崎はオドオドした性格でもないし、猫みたいでもない。猫と言うより、もっと小さい小動物。
少なくとも、初めてあった日の宵崎や、その後の宵崎は、あの両親がいたからこその怯えだったということは確か。
これは俺にとってチャンスでしかない。この状況で宵崎を捕まえることが出来たら逃げられないでしょ?
ねろ母「2人とも遅刻するわよ〜」
七海「あっ!やばっ!椎名先輩行かないんですか?」
ねろ「ん?行くか〜」
ここからは全力で行かせてもらうよ。
【七海視点】
中庭で阿部くんと一緒にお弁当の蓋を開ける。寧々さんの話では椎名先輩はお弁当を毎日作るわけじゃなかったらしい。でも今は毎日私のために作ってくれていると。
アベ「日に日にお弁当の量増えてない?w」
七海「やっぱり増えてるよね……」
私から話しかけに行くことはゼロと言っていいほどないけど、お昼ご飯は毎回阿部くんに捕まる。
美波「阿部〜!ななみんを離しなさぁい!今日は私と食べるの〜!」
アベ「もう遅いでーす!」
七海「美波ちゃん一緒に食べよ〜」
アベ「うっそでしょ?!」
私が休んでいる間、勘違いとはいえ私を守ってくれた美波ちゃんとは今では誰より仲のいい”友達”になった。
1年の廊下に悲鳴が鳴り響いた。あ、もしかして……
ねろ「なに?殺人でも起こった?」
七海「絶対椎名先輩が来たからですよ」
美波「人気者ですね、先輩」
七海「いや、怖がられてるだけですよ」
ねろ「ひどすぎ」
椎名先輩とは、一緒に住むようになって程なくしてから恋人になった。阿部くんや宇経先輩達にはとんでもなく冷やかされて、美波ちゃんにはとんでもなく心配された。
でもこうやってたまに会って話して、椎名先輩が悪い人じゃないことはわかったらしく、冗談を言い合うくらいには気を許してくれたらしい。
私の前の家は解体工事が進んでいて、お母さんとお父さんはどこか引っ越したらしい。あの二人ならきっと、邪魔な私がいなくなって幸せに暮らしているんだろうな。
拝啓私のお母さん
あなたのおかげで幸せです。
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