「永遠に眠れ。火炎を起こした極悪人よ」
考える時間もないほどに、そこで私の人生の幕は閉ざされたのだと。
そう思った時だった。
銃口が空へ発砲した。背後にいた仲間が、彼の銃を逸らした。
「お前、何をするんだ!」
仲間は問いに答えることはなく、彼の身体を羽交い締めにする。その時、私の足に何かが当たった。それは、彼が手にしていた拳銃だった。私は彼らを見た。同じ姿の二人組が仲間割れか、お互いの身体を拘束しあっている。これは戦略なのだろうか。私は、彼らに銃を突き付けるべきなのか。はたまた、逃げるように立ち去るべきか。けれど、そのどちらの選択肢もなぜかとる気持ちになれなかった。
仲間の男性が腕を下ろした時、彼は力無く倒れ込んだ。まるで操り人形の糸が解けてしまったかのようだ。私は生き残った仲間を見つめた。目に表情はない。屍のような彼は、私を視界にとらえる。しかし、私たちはお互いに沈黙を守った。
私は警戒しながらも、どこか落ち着いていた。なぜか、彼は私に危害を加えてこない気がしていた。襲撃者、暗殺者。彼を役職に当てはめることは出来ても疑問は尽きなかった。足元に倒れている彼と同じ服装をしている。本当に仲間なのではないのだろうか。
そんな私とはうらはらに、目の前の彼は去っていこうとする。
「あ、待ってください…」
私は無意識に呼び止めてしまった。彼は振り返りはしないが、足を止めている。
「えっと…どうして私を、助けてくれたのかな」
本来であれば、私はここで命を裁かれるはずだった。冤罪とは言いきれない、不確かなものに、私は打たれるはずだった。
「私は正直、よく分からないのです。でも、打たれるに相応の罪はきっと、私がしたのだろうと思います」
手にしていた写真に意識を戻す。そこには、見間違いなどなく、私だけが写っている。松明の明かりに照らされながら、心を失った奴隷のような姿で。
私は彼にさばいて欲しかったのかもしれない。
「なぜ、貴方は私を見殺しにしなかったのですか…?」
彼が答えることはなかった。ただ、一度だけ私の方を振り返る。その表情は、彼に似ていたと思う。私の見間違いでなければ、完全に彼はあの人だった。あまりの一瞬のことで、それが確信づく前に彼は逃げるように、森の闇へ姿を消していた。私は彼の名を呟いていた。
「ドル…なのか…?」
消え去った彼の残像が私の頭の中で離れないでいた。
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