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「ドル…なのか…?」

消え去った彼の残像が私の頭の中で離れないでいた。


「あっ、いた!リエン、探したのよ」

背後から聞き馴染みのある声が聞こえた。振り返ると、森の暗闇を潜り抜けて来たのか、ティニが立っていた。

「ティニじゃないか。どうしてこんなところに」

彼女は一人だった。こんな深い森に私がいるとなぜ分かったのか。それにチタニーはどうしたのだろうか。

「それはこっちのセリフよ。彼女がリエン一人だと危ないって言うんだもの」

ティニは私の腕を掴むと強引に引っ張っていく。

「どうして強く掴むんだい?」

ティニは私の言葉など聞いていないのか、そのまま足早に進んでいく。来た道を戻ろうとしているのだろうけど、彼女はいつになく機嫌が悪そうだった。

「私は怒ってるのよ」

腕に込められている怒りの矛先は私なのだろうか。一体、私が何かしたのだろうか。

ティニは足を止めると、私を睨みつけながらに言う。

「リエンのその自己犠牲精神とチタニーの神様気取りの態度に…ムカついてるのよ」

私は意味が分からなかった。ティニはそんな私を少しも気にかける様子もなく、進んでいった。彼女の背はまるで今は話しかけるなとでも言っているようだった。

私とティニが教会へ戻ると、チタニーは深刻な面持ちで待っていた。

「呼んできたわよ、チタニー」

ティニは私を彼女の方へ物を投げるように、押し出す。私は彼女にぶつかる寸前で足を止めた。危うくその小さな身体に衝突するところだった。

「ちょっとティニ。そんな乱暴にしないでくれないかな。さっきから君の怒っている理由がよく分からないんだけど」

ティニは私の言葉など聞いていない様子だった。ただ黙って、チタニーの言葉を待っているようだ。

「ティニール、コリエンヌから写真を取って」

チタニーは私の手を指さした。そこには、黒服の男性から受け取った写真がある。彼女には何もかも見通す怖さがあることを忘れていた。途端、手の内から写真がすり抜ける。

「おい、何するんだティニ」

ティニに奪われたと気付く頃には、既に中身を見られてしまっていた。

「これは…なんのつもり?」

彼女はそれを見て一層不機嫌な顔をする。見られてしまった時点で、ティニが私に追求をしてくるのは分かっていた。

「これは何の真似なのか、教えてくれないかな」

私はティニを他所に、チタニーに答えを求めた。彼女が写真の存在を明かしたのはなぜなのか。ティニを不安にさせるのは、彼女だって不本意なはず。

「どうしてこんなことをするのかな」

チタニーは感情が欠落した人形のようだった。私の言葉に反応する瞳に、人らしい情のようなものを感じなかった。

「これリエンだよね。私の知らないうちにこんな事をしてたの」

ティニは明らかに動揺していた。

「ねえ、これ。撮られたんでしょ。なんでリエンが持ってるの」

彼女は私の言葉を待たず、写真を突きつける。

「ちょっと待って…どうしてこれをすぐに信じるんだ」

聞く気がないのか、ティニは私の襟首を掴む。視界が彼女に釘付けになる。

「ちゃんと答えてよ。これ、誰から貰ったの。これはどういうことなの」

彼女は急かすように、逃げられないように言葉を重ねてくる。言いたいことは沢山ある。でもここで、黒服集団の一部と出くわした事を話せば、彼女の不安を煽ることになるのは目に見えていた。いらない心配はかけたくなかった。

「はっ…しらを切るつもり?いいわよ、全部チタニーが教えてくれるから」

ティニは私の嫌な予感を的中させてくる。

「待って、それはどういう事かな。チタニーを使うって。君は自分の言っていることが分かっているのか?」

私は焦っていた。チタニーにはなぜか、全てお見通しな気がしていたからだ。それを全てさらけ出されてしまうのは違う気がする。

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