テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#探偵
橘靖竜
6,116
#聖女
桜井正宗@オートスキル1巻発売
7,332
こはる
1,437
上野文
8,147
第53話
痛い。苦しい。泣きたい。怖い。
僕は何を見ていたのか自分でも分からないけど、それを感じていた。
ハッとして目を開けたら、治癒騎士と僕より大きくなったソフィーがいた。
「え? ソフィーっ……」
起き上がろうとしたら、いつもより重力か強くなったように感じた。というか、肩から手首まで全く動かなくて、全身が痛む。
「動いちゃ駄目だよ。ここに運ばれてから一週間、ピクリとも動かなかったんだから……」
そこまで言うとソフィーが泣いて抱きついた。
「現実だよねっ……生きてて良かった……」
「それはこっちの台詞。だって、十七年近くも……心配させないでよ」
「ねぇっ……私は、ロルフか、お兄ちゃん。どっちで呼んだらいいの?」
え? 別にどちらでも……だけど、今まで通りがいいかな……
でも、僕の意見か……
「今まで通りでいいよ。ソフィーのお兄ちゃんってのはいつまで経っても同じだし」
「うん。それでなんだけど、お兄ちゃんは私の事を許してくれる? あんな置き手紙だけして、喋りかけて……」
ん? 忘れてたけど、ここ、王城だよね。ソフィー……は?
「その前に、何でここにいるの?」
「え? だって侍女として働いてるから」
「見かけなかったけど?」
「姿変えの指輪を着けてからだよ」
え……ちょっと待って。理解が追いつかない。
一週間近く寝てたんでしょ? そこからまず分からん。
それから、十七年前からずっと探してた妹が、姿を変えて侍女として働いていた。うん。訳わからん。
というか、怪我こんなにしてたっけ?
服は着替えさせられたんだろうけど……え?
「まぁ、良かった。お兄ちゃんと話せて。私は変装してるから、勤務中は話しかけないでね」
僕が唖然としていると、ソフィーは退室した。
✡
ロルフさんは一体誰……
あれから一週間後。
私は部屋で一人悩んでいた。
ロルフさんは会った事がある気がする。それも、日記に似たような人の事が書かれていた。
昔の私は、その人の事が好きって……彼としか書かれていないけれど、華奢な体つきで、剣を振るうのが美術作品みたい。
でも、一つだけ違う。
『一つ年上』という情報。
その他は全部一致するのに、年上では無い……と思ってたけど……
私は薬で、私がこうやって動いていた時間の分の体に戻されたのだ。否、十三歳の時の体に戻されたのだ。
しかも研究員が私のために開発したらしい。というか、時空魔法を強力にできる薬らしいけど。
はぁ〜……これじゃあ、ロルフさんと同い年……
そういえば、ソフィーさんだっけ? 私と一緒に封印してくれてた子。
その子は、私より、二年早く封印を始めたそう。
今は、侍女をやっている。つまり、侍女兼光の子をやっている事になる。
顔も、名前も、思い出せない護衛騎士と兄妹だったような気がする。
でも、その人が妹のソフィーのために、プレゼントでネックレスを贈ったのは覚えている。
それと、その護衛騎士が自分の事を『兵器だ』って言った低くて硬い声。
心なしかロルフさんと似てる気がする。
だから、もし、私の勘が当たってたら、初恋してたのは、ロルフさ―――
やめておこう。相手はそう思ってくれていないのだろうし……
どちらにしても、私はロルフさんに恋をしているのは……そうだ。してる。
でも、あんな若いのに、三十代目前とか無いと思うし。二十八歳の一つ上……絶対無い。というか、未成年にも見える。
そんな、魔法をずっとかけられるわけがないし、この薬は最近開発されたものだし。
私がそんな事を考えながら日記を読み返していると扉がノックされた。
私が扉を開けるとソフィーさんでは無い侍女が「勇者様がお目覚めになりました」と報告をしにきた。
私は「ありがとう」と言って軽く解釈すると、医務室へ向かった。
彼は布団をかぶって窓の中から外をぼーっと見つめていた。
多分、私にも気づいてない。
「ロルフさん。私の所為で……」
「姫様! それは、僕の鍛錬不足でした。今回も、この前も姫様を危険な目に合わせてしまいました」
「それは、私がロルフさんを危険な目に合わせているんです。結局は、私の事を狙っているのでしょう。私につかなければロルフさんは傷付かないのに……」
私はハッとしてロルフさんを見ると、何か思い詰めたように唇を噛んで俯いていた。
手は震えていて、青い瞳も光が宿ってないように見えた。
彼は迷いながら口を開いて「……不愉快でしたよね……」と外をまた見つめた。
「僕は、何も守れない人間なんです。なのに、護衛騎士とか……自惚れていましたね。『強ければ何でも守れる』って……」
「違うんです。私の所為で、ロルフさんが無理をされているのでは無いのかなと……私は、何だか、誰かが傷つくのを目の前で見るのは、怖くて……何か失くしそうなんです……」
私は、何を言ってるの?
「すみません。つい、勢いで……」
私はそこまで言ったらふと、何年も前に大通りで拘束された時の記憶を思い出した。
コメント
1件
こはるさん、第54話読みました……。 兄妹の再会シーン、本当にじんわりきちゃった。ソフィーが「お兄ちゃんって呼んでいい?」って聞くところ、17年分の想いが詰まってて泣きそうになったよ。それでいて、お姫様の視点でロルフさんへの恋心がちらっと見えるのも、すごく切なくて胸がぎゅってなる。 ロルフさんの「何も守れない」って自虐、重すぎるけど、それだけ本気でお姫様を守りたいんだろうな……。お互いを思いやってすれ違う感じが、読んでて苦しいけど、その苦さがこの作品の良さだと思う。 次、2人がちゃんと向き合えるといいな。更新、ゆっくり待ってるね🌙