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第54話
私は宿屋に向かって歩いてて、王女って事がバレて……
「ロルフ! この人たちっ!……」
それから記憶が無い。
それと、今まで思い出した記憶の中にあった、ロルフさんの表情とロザンナとマルコとシルビオの勇者や、お父様とお母様を思い出した。
皆、優しくて、私の
やっぱり、私なんだ……
いや、分からないとずっと疑っちゃったから……でも、ロルフさんの優しさと忠誠心は本物なのは分かる……
「あ、あの……ロルフは、何で嘘を……合った事あるよね」
私は思わず口調が崩れてしまった。というか、これからロルフに敬語を使えないかもしれない。
ロルフさんはその言葉を聞いた瞬間、目を見張った。
「そこまで、分かったら言わせなくても良いんじゃないですか……」
そっぽを向きながら呟いた。
え? 何か私が……
「昔、合った事があるのは、夢、では無いよね」
そう聞くと無言で頷いた。
「私、どこかの街中で、王族だとバレた男に捕まった事を思い出したんだよね。その時にロルフの名前を呼んだ時の記憶が急に……」
そこまで言うとロルフさんはハッとして私の方に向いた。
涙目で、色んな意味で苦しそうだった。
「すみません……こんなザマ見られたくありませんでした」
「今の貴方も昔の貴方も、苦しそう。その他にも私の護衛騎士……つまり、ロルフと一緒に歩いていた時とか、表情とか、色々と思い出した」
「そんな事、思い出さなくても……もっと、僕以外の方がずっと、姫様にとってはいいと思います……」
ロルフはそう言って俯いた。
確かに、楽しい物ではない。けれど、これから、楽しい物を作りたいきっかけになってくれる架け橋になる。
「僕も、もうそろそろ潮時ですかね……」
潮時? なぜ?
どういう……?
でも、また行ってみたい。
「あの。出来ればでいいんだけど、巡りたい。ホルムの大地を」
「分かりました。じゃあ、僕が復帰、っ……」
そう言ってロルフさんはお腹を抑えて痛み出した。
一週間前から治療をしてでも、あんな事されたら、痛いだろう。
「大丈夫?」
「少し痛んだだけです……鎖骨から肋骨まで全折れだったので……本当、情けないばかりです」
ちょっと、待って。全折れって、骨折……
「……その他には、どこが折れてるの? 怪我のスケールが大き過ぎて、私は何といえばいいのか……」
「……両肘の粉砕骨折。さっきも言ったように、鎖骨と肋骨の完全骨折と、その他、色々とヒビが……」
「貴方のご家族にどんな風に顔を合わせたらいいのか……しばらく動けないし、生活にも支障が……」
私が色々と呟いていると「僕の事は気にせず大丈夫です。騎士をするのにこのくらいの覚悟はできてますから」とロルフは心を斬り殺して微笑んだ。
ロルフ……何か……?
う〜ん……何も思い出せ無い……
一人で辛い思いをさせるなんて、絶対に自分を斬り殺して、仮面をかぶって……
何か、気が利く言葉……分からない。
こんなに傷ついている人に間違った言葉をぶつけたら、崩れ落ちるかもしれない……
「ロルフ。貴方は前から何から何まで背負い過ぎて、無いように見せて、無理をして……私は何もできなくて、後悔したのをね思い出したの。だから、今からでも、頼って。お願い。また、笑い合いたい」
……私、何言ってるの?
確かに、後悔はしてた。内容はぼんやりとだけど思い出した。
でも、私たちは、騎士と姫の関係。それ以上に近づいては駄目なのは分かってる。
でも、傷ついてるのに……無才で、無力なんて、認めたくない。
「ありがとうございます。でも、姫様がそれよりも、辛い光景を思い出したら、僕は立つ事にするって決めたんです」
ロルフは全ての感情を殺している表情をしている。
辛い光景……何だろう……
「すみません。でも、ちゃんと全て話します。今は……恥ずかしながら、心が保ちそうに無いです」
「お願いだから、もう、無理はしないで。私は、この後予定があるからここら辺にしておくね」
私はそう言って部屋を出た。
本当は、予定なんて無い。私は嘘を吐いた。
ため息を吐きながら廊下を歩いていると、騎士団長が少し緊張しながら反対側から急ぎ足で来た。
「姫様……顔色が優れないようですが、大丈夫ですか?」
「あ、違うんです……ロルフを傷つけてしまって……」
「う〜ん……そしたら、エルドの長を尋ねると何か手がかりが見つかるかもしれませんな。ロルフって! 記憶が……」
あ、バレた。
「ほんの少しだけです。でも、ロルフに敬語を使うなんて……きっと、彼だって、私に失望してる……」
「ロルフはそんな薄情ではありませんよ。でも、それを一番知っているのは、姫様。貴女です」
そう言って騎士団長は軽く敬礼をしてロルフがいる部屋に向かった。
コメント
1件
ロルフの「心を斬り♡♡♡て微笑んだ」ところ、すごく胸に刺さりました。ああ、この人は本当に全部を背負い込んで無理してきたんだなって。主人公が「頼って」って言えたのも、記憶が戻ってきて彼の痛みに気づいたからこそですよね。お互いに傷つきながらも、一歩ずつ前に進もうとする空気がとても丁寧に描かれていて、じんわりと温かくなりました。続きがすごく気になります。