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——二つのUSBが結びつけた真の闇とは何なのか。エリート捜査官の見た現実は、彼が信じた「法」の裏切りだった。—— 月原は、双子の姉妹の手を強く握りしめ、住宅地の生垣の影を縫うように走った。背後から聞こえる黒いセダンのエンジンの唸りが、彼の13年前の記憶を激しく揺さぶる。双子を再び恐怖にさらしてしまった罪悪感が、エリート捜査官の仮面を剥がし、ただの傷ついた大人に戻していた。
曲がり角を曲がった瞬間、陽動班の齋藤と五十嵐が黒いセダンを誘い込む。月原は即座に双子を河口と内宇利の待つ緊急隠匿ルートへと押し込んだ。
「頼む、必ず安全な場所に」
河口が双子を抱えて闇に消えるのを見届けた月原は、深く息を吐いた。「逃げるだけじゃ、贖罪にはならない」――彼の心は既に、二つのUSBを託した分析室へ向かっていた。
彼はインカムに手を当て、水科へ向けて冷静な声を送る。「水科。状況はどうだ?俺が渡した二つのUSB、複合解析の結果を報告しろ」本部で待機していた水科の声が、緊張を帯びて返ってきた。「了解です、主任。指示通り複合解析を開始しています。両USBの基本構造は酷似。単体で開けばデータは瞬時に消滅するトラップを確認済みです」
月原は、本部へ向かうため大通りに出た。その時、スクランブル交差点で立ち止まってしまった杖をついたおばあちゃんを見つける。周囲の車が動き出す間一髪のタイミングで、月原は交差点に飛び込み、おばあちゃんを抱きかかえて歩道へ転がり込んだ。
直後、彼らの脇を轟音とともに黒いワゴン車が猛スピードで通り過ぎる。
月原はおばあちゃんの肩を支え、膝をついた。
「おばあちゃん、お怪我はありませんか?」
おばあちゃんは青い顔で、月原の制服を見上げた。「あんた…!誰かを失った人の顔をしとるね。わしのために、無茶をしてくれて、ありがとうね…」
月原は、言葉を失いながらも、すぐに気持ちを切り替えた。「大丈夫です。すぐに別のタクシーを呼びますから」
月原は、すぐにおばあちゃんを通りかかったタクシーに乗せてやる。そして、自分もすぐに別のタクシーを捕まえた。
「警視庁本部へ急いでくれ」
月原は運転手に告げると、急いでシートベルトを締めた。金属のバックルの音が、彼の意識を任務へと引き戻す。
彼はインカムを口元に寄せた。「水科。俺は今、本部に向かっている。解析状況を口頭で聞くわけにはいかない。本部に帰ってから、続きを報告してくれ」
「了解です、主任。無事ですか?」水科の声に、明確な安堵の色が混じる。
「問題ない。……データ解析を急げ」月原は返答を簡潔に切り上げ、目の前の任務に意識を集中させた。月原が本部に帰還すると、制服の乱れも直さずに分析室へ直行。彼は水科の隣に立ち、モニターの画面を睨みつける。
「水科、解析状況を続けろ。我々は真の闇を見る」
「解析には数分を要します」水科は冷や汗を拭った。その時、近隣の事情聴取を続けていた五十嵐から緊迫したインカムが入る。
「主任!周辺住民への聞き込みで不審な情報を確認しました。話によると、性別と年齢不明で、顔ははっきり見えなかったとのこと!」
月原は目を見開いた。性別すら判別できない影。それは今回の殺人犯か、それとも警察内部の、より根深い存在なのか。その曖昧な情報が、月原の警戒心を極限まで高めた。「解析終了!共通鍵を発見しました!」
水科の叫びが、月原の意識を現実へ引き戻す。
モニターには復元された一つのファイル。そのファイル名を見て、月原の顔色が変わった。それは、彼が法曹界に身を置いていた頃に聞いたことのある、国家の最高機密に関わる『過ち』を示すプロジェクト名だった。
ファイルが展開され、無数の法的な文書、財務記録、そして数人の人物写真が画面に並ぶ。その写真の中に、月原は警視総監の顔を見つけた。
「……警視総監」
月原は固唾を飲んだ。彼の信じてきた「法と正義」の象徴が、最重要機密に関わっていたという事実に、頭が真っ白になる。両親も漆盪夫妻も、警視総監(当時の管理官)と共に、この『国家の過ち』を探っていた。そして、その調査の途中で彼らは殺害された。しかし、次の瞬間、月原のプロファイラーの直感が警鐘を鳴らした。
(思考)「この最高機密プロジェクトの情報。両親を殺した者たちが命を懸けて奪おうとしたものが、なぜこんなに簡単に手に入る?このデータに書かれた『責任者』たちは、真の黒幕が用意した囮なのか、あるいは、我々を罠にかけるための誘導なのか?」
月原は、復元された機密ファイルのデータを静かに保存し、水科に命じた。
「水科。この解析結果を、絶対に外部に漏らすな。この部屋から出る情報は、全て俺の許可を経る。真の黒幕の正体は、まだ深すぎる闇の中だ。」
彼の目は、モニターから離れ、冷たく光った。
「フードの人物の目撃情報は、真の敵が仕掛けた内側の罠の可能性がある。水科、奴の正体は追うな。我々が今、最も先に断ち切るべき影は、このデータが示す、殺人犯たちの次の行動だ」
月原は、自分の命運と、法では守れない無念を晴らすための孤独な執行者の道を選んだ。彼らが真実を追い求める道のりは、ゼロの執行 VS 殺人組織との、出口の見えない戦いとなる。
捕まえられるか奪われるかの戦いで、警視総監と月原夫妻、漆盪夫妻、そしてUSBメモリーはなんの関係があるのか、その理由を求めだしてゆく。