テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
177
機械音痴な人間
1,135
ばななぁ
保健室は今日も静かだった。
窓の外では、各国の生徒たちが騒いでいる。
どこかで爆発音もしたが、スイスは気にしなかった。
いつものことだ。
スイスは湯気の立つハーブティーを机に置き、カルテを整理する。
すると、保健室のベッドに寝転がっていたスウェーデンが深いため息をついた。
「……もう疲れた」
「今日は誰です?」
スイスは落ち着いた声で聞く。
「アメリカ」
「ああ」
即答だった。
スウェーデンは天井を見ながらぶつぶつ言う。
「なんであいつ、毎回“自由のためだ!”で全部押し通すんだ……。しかも今日、“これ最新兵器!”とか言って廊下で爆発させた」
「被害は?」
「廊下半壊」
「軽傷ですね」
「軽傷なのか……?」
スイスが慣れた手つきで書類を書いていると、
――バァン!!!
保健室の扉が勢いよく開いた。
「納得いきません!!!!」
日本だった。
ネクタイは曲がり、肩で息をしている。
スイスは驚きもせず椅子を引いた。
「まず座ってください」
「でも!!」
「座ってください」
「……はい」
日本はしぶしぶ座った。
スウェーデンが小声で言う。
「また生徒会?」
日本は机を叩いた。
「そうです!! なんで私は入れないんですか!?」
その瞬間。
「その話なら聞いたアル」
保健室のドアから、静かな声がした。
中国が立っていた。
空気が少しだけ重くなる。
スイスはいつも通りだった。
「どうしました?」
中国は腕を組む。
「こいつ、生徒会入りを申請したアル」
生徒会。
学校の実権を握る組織。
メンバーは、
・アメリカ
・中国
・イギリス
・フランス
・ ロシア
世界を動かす連中だ。
日本は拳を握った。
「みんな賛成してくれたんですよ!? なのに中国さんだけ拒否したじゃないですか!」
中国は冷たい目で見た。
「拒否権アル」
「横暴です!!」
「お前の旧国のせいネ」
「またあのクソおやじかぁぁぁぁ!!」
スウェーデンが起き上がる。
「何したの」
中国は遠い目をした。
「……思い出したくもないアル」
スイスが静かに紅茶を差し出す。
「どうぞ」
中国は一口飲み、ぽつりと言った。
「昔、アメリカが犬を連れてきたアル」
「犬?」
「わんわんネ」
日本が嫌な顔をする。
「……あっ」
中国は続けた。
-–
当時。
まだ若かった旧国日本。
軍服姿で廊下を歩いていた。
そこへアメリカが現れる。
「見ろよ日本! 新しい犬だ!」
白くて大きな犬だった。
わふっ。
すると旧国日本の目が輝く。
「……………………犬」
アメリカが笑う。
「触るか?」
次の瞬間。
「うおおおおおおおおお!!!!」
旧国日本、床スライディング。
「かわいいのおおおおお!!!」
わしゃわしゃわしゃわしゃ。
犬を抱きしめる。
撫でる。
顔をうずめる。
「毛並みが最高じゃあああ!!!」
犬も嬉しそう。
わふー。
アメリカは爆笑。
「お前めっちゃ犬好きじゃん!」
「犬は正義じゃろうが!!」
その様子を見ていた各国。
イギリス:
「……」
フランス:
「……引くわ」
ロシア:
「怖いな」
中国:
「変態アル……」
しかもその後。
旧国日本は犬を撫でながらアメリカに言った。
『アメリカ殿ぉ〜〜〜♡』
中国:
「キモかったアル」
現在。
日本は頭を抱えていた。
「なんでそれが今も残ってるんですか!?」
中国は真顔。
「インパクト強すぎたアル」
スウェーデンが真面目な顔で言う。
「いやでも、それだけで拒否はどうなんだ」
中国は指を立てた。
「ちなみに当時から日本は犬好き国家だったアル」
日本は視線を逸らした。
「……今、人口よりペット多いですし」
「事実アルな」
スイスが静かにメモを書く。
“原因:先祖”。
日本は叫んだ。
「クソおやじいいいいいいいい!!!!」
-–
――そのころ。
山奥の畑。
鍬を持った旧国日本がのんびり畑を耕していた。
隣には、今はもう存在しない空軍の隊員たち。
みんな農作業中。
旧国日本は空を見上げた。
「……なんか誰かに怒られてる気がするのぉ」
空軍が汗をぬぐう。
「そうっすね先輩」
「気のせいじゃろ」
「多分違うっす」
のどかな風が吹いた。
おしまい
-–
『スイスの解説コーナー』
「さてっと…」
「今回の元ネタを簡単に説明します」
黒板を出した。
「まず、生徒会は国際連合安全保障理事会の常任理事国が元ネタです」
黒板に五人の名前を書く。
「そして中国の“拒否権”は、安全保障理事会で実際に存在する制度ですね」
日本が後ろでまだ騒いでいる。
「あと、日本の犬好きネタですが、現代日本はかなりペット文化が強い国です」
後ろで日本:
「だからって先祖が犬に顔うずめるな!!」
「それと旧国日本は、 “過去の国家人格”という設定です。現在の日本とは別存在として扱っています」
最後にスイスは少し困ったように笑った。
「……ちなみに私は本当に中立なので、誰の味方でもありません」
保健室の外でまた爆発音がした。
スイスはため息をついた。
「多分アメリカですね」
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!