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杏たちの話が終わると、今度はレイが私に尋ねた。



『ミオ、どうする?』



『えっと、私もハンバーガーセットで、飲み物は……』



『麦茶?』



彼がそう尋ねたのは、私が普段麦茶ばかり飲んでいるからだろう。



『……そんなのここにはないよ。アイスティーでお願いします』



『OK』



レイは柔らかな微笑みを置いて、佐藤くんとカウンターに向かった。



(もう……麦茶以外だって飲むってば)



けど私もレイはコーラを頼むと思ってるから、似たようなものかもしれない。



ふたりの背中を見つめながら、レイが佐藤くんになにかしないかとひやひやしていると、杏が「ねぇ!」と私の肩をつついた。



「ちょっと澪……!


 ふたりの関係はどうなってるの!?

 レイさん、見ててドキドキするくらい、澪に甘いんだけど!」






「えっ……。


 ど、どうもないよ、レイはだれにでもあんな感じだし」



「えーっ 本当に? 怪しいなぁー」



「怪しくない、本当だって!」



私は全力で否定した。



そりゃ今日のレイはやりすぎだし、疑う気持ちはわかるけど、勘弁してほしい。



「けどさぁ、まさか澪が外国人連れてくるなんて思わなかったよー」



「……うん、だよね」



「英語しゃべれない!どうしよーって焦ったけど、見てたらレイさんめっちゃいい人じゃんね!


 それにあんなかっこいい人、見たことないよー!!」



「そうだね、見た目と愛想はいいよね……」



愛想がいいのも、普段なら「私以外に」だ。



私は困った顔で、興奮する杏を見返す。



それからもう一度レジカウンターを見やれば、レイと佐藤くんがなにか話をしていた。



(なに話してるんだろ)



佐藤くんは弱ったふうに笑っているから、心配で思わず腰を浮かせそうになった。



その時、杏が声色を変えて尋ねた。



「……ねー。 澪はレイさんのこと好きじゃないの?」



「はっ?」



思わず視線を戻せば、杏はとってつけたような笑いを浮かべる。







「いやー……そうなればいいなって思っただけ!


 ……あっ、ふたりが戻ってきたよ!」



杏が指さしたほうを辿れば、ふたりがトレーを手にこちらに戻ってくる。



(杏……)



やっぱり杏も、まだ複雑な気持ちを抱えたままなんだろう。



そう思うと苦しくなったけど、ふたりが席についたことで話は途切れた。



「ありがとう」



レイたちにお礼を言ってお金を払おうとした時、「広瀬」と佐藤くんが弱った声で私を呼んだ。



「レイさんが、みんなのぶん奢ってくれたんだけど、いいのかな」



「えっ」



思わずレイを見上げる。



『レイ、お金……』



『いいよ。 みんなまだ高校生なんだし』







穏やかに微笑んで、レイは私のとなりに座る。



その目に嘘はなく、どうやら本心のようだった。



「お金はいいんだって」



迷いつつ佐藤くんたちに伝えれば、ふたりは顔を見合わせて「Thank you」と頭を下げる。



『どういたしまして』



笑顔で言い、レイは『ミオ』と私にアイスティーを手渡す。



『ありがとう』



受け取って前を向くと、杏と佐藤くんはまじまじと私たちを見ていた。



(なんだか……)



ふたりの目が、私たちをカップル認定しているように思えるのは気のせいだろうか。



(……いや、気のせい、気のせい)



そう自分に言い聞かせて視線を落とせば、レイの飲み物は思った通りコーラで、私は慌てて目を逸らした。








食事を終えると、レイはトレーを手に席を立つ。



『あ、返すのは私がやるよ』



買ってきてくれたんだから、せめて返しに行こうと、私は慌てて立ち上がった。



『いいよ。


 このまま手洗いに行ってくるから、ミオは座ってて』



レイはやんわり私を制して、返却口へと向かう。



それを見た佐藤くんも、「俺も返してくる」とテーブルの上を片付け始めた。



「あ、今度は私が行くよ!」



トレーを掴んだ杏がレイの後を追い、途端にテーブルがしんとした。



気まずい沈黙の中、佐藤くんが口を開く。



「……なぁ、広瀬。


 なんというかさ……。もしかしてレイさんと付き合ってる?」



「え……」



「あ、いや……。


 まだ違うのかもしれないけど、そんな雰囲気だからさ」



弱ったように笑う彼を前に、私は複雑な気持ちになる。



















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