コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
私の人生はとても素晴らしかったわ!本当に幸せだった。今までありがとうね、お父様、お母さま。お兄様……さようなら。私はもうすぐここからいなくなるけど、どうか元気でいてちょうだいね。
私はこれから生まれ変わるの。新しい命になるんだ。
ねぇ、みんな聞いてくれるかしら? あのね、私が今から言うことをよく覚えていてほしいの。きっといつかまた会えるはずだから。だからその時まで待っていてください。約束ですよ? えっと、どこから話せばいいかなぁ。そうだなー、じゃあまず私の名前を教えておくね。私の名前は―――。
【序章】
『お前はこの家の娘だ』
物心ついた頃から、私には両親と呼べる存在はいなかった。彼らはただの他人で、血の繋がりなど一切なかったのだ。しかし、そんなことは私にとっては些細な問題に過ぎなかった。何故なら、家族というものが何なのか知らなかったし、知りたいとも思わなかったからだ。それに、私の周りには常に大勢の大人がいたので寂しいと感じたことも特に無かった。
そんな生活が続いていたある日のこと、いつものように屋敷の中を歩いていた時のことだった。ふと視線を向けた先に見たことのない部屋があったので、興味本位で中に入ってみた。そこには大きなベッドがあり、その上に一人の女の子が横たわっていた。顔色は悪く生気を感じられない。生きているとは思えない様子だった。しかしその少女の顔を見た瞬間、なぜか胸が激しく高鳴ってしまったのだ。
どうしてなのかわからないけど、その子のことをとてもかわいいと思ってしまった。こんな気持ちになったのは生まれて初めてだ。今までどんな女にも心を揺さぶられたことはなかったのに……。
いや違う。本当はわかっているんだ。なぜ自分が今こうしてドキドキしているのかということを。だけどそれは認めたくないことだった。だから俺はその考えを打ち消すように首を横に振った。
「きっと疲れているせいだろうな」
最近はずっと働きづめだったし。それに今日だって朝早くから夜遅くまでダンジョンに入っていたわけだし。その疲労のせいで変なことを考えるようになってしまったに違いない。うん、そうだ。そういうことにしておこう。
「よし! それじゃあ早く帰ろう!」
俺はそう自分に言い聞かせると、足早にその場を去った。それからしばらくして自分の家に着くと、そのまま真っ直ぐ寝室へと向かった。そして着ていた服を脱ぎ捨て全裸になると、そのままベッドの上に倒れ込んだ。そしてふかふかのお布団に包まれながら眠りについたのであった。
「うぅん……もう食べられないよぉ~」
翌朝目を覚ますと外はすっかり明るくなっていた。時計を見ると時刻はすでに昼過ぎを指し示している。随分と長い時間眠ってしまっていたようだ。しかし、それ程までに疲労していたということだろう。昨晩の出来事を思い返しながらベッドの上で天井を見上げる。
(結局何も思い出せなかった……)
あの後俺は気を失うようにして眠りについてしまったらしい。目が覚めると同時に記憶の一部が失われていたのだ。まるで夢遊病のように自分が何をしてきたのか全く覚えていなかった。ただ一つだけはっきりしていることがあるとすればそれは俺の中に得体の知れない何かが存在していると言うことだ。それが一体なんなのかはまだわからない。だが、このまま放っておくわけにもいかないし、なんとかして解決しなければならない問題であることだけは間違いなかった。
そんなことを考えているうちに部屋の扉が開かれ、誰かが入ってきたようだった。視線を向けるとそこには一人の少女の姿があった。見慣れた制服に身を包んだ彼女はこちらを見るなり、驚いたような表情を浮かべると慌てて駆け寄ってきた。
「もう起き上がって大丈夫なんですか?」
「はい!おかげさまで!」
「あの……、本当に申し訳ございませんでした……。」
「え?何を謝っているんですか?先生は何も悪いことしていらっしゃらないじゃないですか。」
「しかし……」
「それに、まだ私は諦めていません。いつか必ず、治して見せます!!」
「そんなことが……。」
「そうなんですよ!!だからこれからもよろしくお願いいたしますね!!!」
「こちらこそ、宜しくお願い致します。」
「あ、あとこれ差し入れです。良かったら食べてください。」
「ありがとうございます。美味しそうなお弁当ですね。」
「えへへー、ちょっと気合いいれちゃいました。じゃあそろそろ失礼しますね。また来ます!」
「ありがとうございました。」
「こんにちはー、あれ、今日はお客さん少ないですね。」
「ああ、君かい。最近患者が増えてきたみたいで、忙しいんだよ。」
「それは大変ですね。何か出来ることがあったら言ってくださいね!」
「そうだねえ。とりあえず、そこのお皿を下げてくれるかな。」
「了解しました!」
「いつも元気だねぇ。」
「元気だけが取り柄だもんねー!」
「いやあ、ホント助かるわ~」
「ねえ、これ終わったら一緒に飲み行かない?」
「うん! 行こうぜ行こうぜ!」
「……」
「……」
「……ごめんなさい。もう無理みたい」
「え!? ちょっと待って!! そんな急に!!」
「うぅん……。本当にダメだったみたい……」